【イベントレポート】急拡大を遂げる組織 LINE Fukuokaの人材戦略

【イベントレポート】急拡大を遂げる組織 LINE Fukuokaの人材戦略

2022年3月10日、株式会社ビズリーチは「急拡大を遂げる組織 LINE Fukuokaの人材戦略」と題したWebセミナーを開催しました。

LINE Fukuoka株式会社 代表取締役社長CEOの鈴木優輔様にご登壇いただき、人材採用、人材育成の具体的なメソッドをお話しいただきました。モデレーターは、株式会社ビズリーチ取締役副社長の酒井哲也が務めました。

鈴木 優輔氏

登壇者プロフィール鈴木 優輔氏

LINE Fukuoka株式会社
代表取締役社長CEO

福岡県生まれ。九州大学経済学部卒業。1999年に日本電気(NEC)に入社、2003年 リクルートメディアコミュニケーションズ入社(現リクルート)。2014年7月にLINE株式会社入社、同年10月にLINE Fukuoka株式会社入社。2017年4月に取締役就任。2019年2月に取締役COO就任。2021年10月に代表取締役社長CEO就任(現職)。
酒井 哲也氏

モデレータープロフィール酒井 哲也氏

株式会社ビズリーチ 代表取締役社長 ビズリーチ事業部 事業部長

2003年、慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社日本スポーツビジョンに入社。その後、株式会社リクルートキャリアで営業、事業開発を経て、中途採用領域の営業部門長などを務める。2015年11月、株式会社ビズリーチに入社し、ビズリーチ事業本部長、リクルーティングプラットフォーム統括本部長などを歴任。2020年2月、現職に就任。

※所属・役職等は制作時点のものとなります

LINE Fukuokaだからこそできる魅力的な仕事創造

LINE Fukuokaは、LINE株式会社の福岡支店ではなく、LINE Fukuokaという一つの会社として2013年11月に誕生しました。

サービス運営、技術、デザイン、企画・マーケティング、コーポレートの機能を有し、設立当初、180人だった社員数は、9年目で1,322人と約7倍に成長。54%がU・Iターン、外国籍社員比率は10%で世界24カ国から集結しており、非常に多様性あふれる環境です。

LINE Fukuokaが創業以来目指してきたのは、九州に根付き、地元の皆さんに愛され認められる拠点になることです。

そこで、立ち上げたのが「LINE SMART CITY FOR FUKUOKA」プロジェクトです。

LINE SMART CITY FOR FUKUOKA

「LINEはみんなが使っているから」ではなく、「LINEがないと困る」「LINEがあって助かる」という社会づくり、ユーザーとの距離が近いLINE Fukuokaだからこそできる魅力的な仕事を生み出そうと、さまざまな取り組みを進めてきました。

その一つが、福岡市との共働による福岡市LINE公式アカウントです。

市民と行政が密に、スピーディーにコミュニケーションが取れるようにと生まれたアカウントは、約180万人が登録(2022年2月時点)。全国の自治体のLINE公式アカウントの中でも、圧倒的な登録者数を誇ります。学校給食やごみの収集日のような生活情報の選択受信、現在地情報による最寄りの避難所検索などがLINE上で便利にできると、多くの市民の方から好評をいただいています。

福岡市LINE公式アカウント

2021年2月には、西日本鉄道株式会社とLINEを活用したDX推進に関する連携協定を結び、民間企業とのやりとりも加速させています。

福岡という、地元ネットワークの距離の近さを生かした施策の数々に、LINE Fukuokaへのポジティブな印象が広がっているのではないかと感じています。

急拡大する組織における人材採用

魅力的な仕事をつくるためには、人材採用が必要です。

人材採用において、私が大切にしているのは「誰をバスに乗せるか」という視点。「ビジョナリー・カンパニー 2 飛躍の法則」(ジム・コリンズ著)の有名な言葉として、「バスに乗せる人を決めればその人たちが目的地を決めてくれるだろう」があります。今のように変化の激しい状況ではとくに、バスに乗せる人選びが重要だと改めて感じています。

では、どう採用していくのか。

採用では、成長フェーズに合わせたコミュニケーションで、伝える内容・伝え方を変えることが大事だと考えています。

社員数が500人に満たなかった2013~15年ごろの初期では、多くの人に、会社の「存在」を伝えようと、「1,000人」に向けてCMを作成したり交通広告を出したりしました。会社という1人の話者が、多くの人に対してコミュニケーションを取っていたということです。

1000人に対して会社の「存在」を伝える

社員が1,000人弱まで増えてきた2016年以降は、会社の「中身」を説明できる社員を巻き込んで、「100人」と少ない人数に対して具体的な中身を伝えていきました。

100人に対して会社の「中身」を伝える

さらに社員が1,000人を超えた2020年からは、10人に対して会社の「志」を伝えようと、オンライン採用イベントを開催。プロジェクトの裏側を公開するようなトークセッションを企画し、そこに社員を投入していきました。

10人に対して会社の「志」を伝える

社員が1,322人(2022年2月時点)まで増えた今、最終的には1人に対して、自分の「本当」を伝えることが大切だと思っています。

1人に対して自分の「本当」を伝える

当社は1対1000の構図でしたが、会社を語ることのできる社員の数が増えるほど、1対1に限りなく近づいていくと考えています。

広報部門のみで発信を行うのではなく、部門ごとにアンバサダーを選定。部署内フィールドライターのポジションを設け、公式ブログ執筆にチャレンジするなど、社員も自分の仕事を語れるようになる取り組みを進めています。

みんなのLFK Pressフィールドライター企画
LINE Fukuoka Press

人材採用の成功のためには、自社のことを語ることのできる社員を増やすことが大切。

そしてそのために、人材育成や文化醸成が必要なのです。

新しい価値を創造し続けるための人材育成

急拡大する会社ではどんな問題が起こるのか。LINE Fukuokaで感じたのは4つの課題でした。

現地現物を見て、感じた課題

各部署がバラバラに動き、見えるものに手を付けようと同じ業務が発生して無駄が増えていました。「急成長」ではなく「急拡大」している状態だったのです。

このループの起点となっている課題は何か。とくに重大だと思ったのが「どんな仕事が大事なのかわからない」というものでした。

自分の仕事が大事だと思えなければ、人に教えようという気持ちは生まれず、組織はバラバラになってしまいます。

そこで策定したのが、LINE Fukuokaの価値基準「LION」でした。

LINE Fukuokaの価値基準「LION」

しかし、軸を作っただけでは浸透しません。私たちの価値や、成長とは何かを規定する表彰制度「LFK Value Award」を作り、Impact・Ownership・Nextの観点から見た「いい仕事」を審査し、表彰し、共有するようにしました。

LINE VALUE AWARD

人が育つときに大切なのは、オーナーシップを持っているかどうかです。「自分のことだ!」と思えば人は自ら動こうとする。やらされている状態では成長につながりません。

オーナーシップを持ってもらうためには、こうしたアワードにも、最初はとにかく参加してもらうことが大事だと考え、進めていきました。

また、同じ観点から、経営層と各部門リーダーがコミュニケーションを取る場として、LINE Fukuoka全社リーダー会という場を設けています。

組織の急拡大に伴い、管理者が100人に達した2018年からスタートしており、現在では双方向のコミュニケーションの促進を目指しリーダー発信型コンテンツを実施中です。「自部署の活性化に生かしていきたい」「ぜひ連携したい」といった活発なリーダーの声が続々届いています。

表彰制度やリーダー会を通じて、社員が会社づくりにEngage(参加)することで、社員のOwnership(当事者意識)が醸成され、一人一人が自律的に育っていく。それが、急拡大を遂げるLINE Fukuokaの人材戦略を支えています。

急拡大を遂げる組織LINE Fukuokaの人材戦略

3本の柱が各方向に行き来し、相互依存、相互作用の関係にあることが重要です。

魅力的な仕事がなければ魅力的な人はきませんし、人材採用するには仕事を作らないといけない。でも、人がいなければ仕事は作れません。3要素をどう採用していけるか、組み合わせて前に進んでいけるかを、これからも考えて続けていきたいです。

質疑応答

セミナー後半には視聴者から多くの質問をいただきました。抜粋してお答えします。

Q
社長自らセミナーにご登壇していらっしゃいます。事業責任者として、人材採用の位置づけをどう捉えていますか。
A

私がこうした場に出て語っていること自体が一つの姿勢になっていると思いますが、人材育成も採用も、トップが直接コミットして行うことが大切です。すべては人が起点となるので、私自身の仕事として取り組んできました。

Q
地元・福岡の求職者だけではなく、広く全国から採用していらっしゃいます。採用広報としてどういった部分に力を入れているのでしょうか。
A

仕事の創造が大事だと考えています。「福岡にいるほうが、自分がやりたい仕事に挑戦できる」と思えるコンテンツがなければ、広報に力を入れても意味がありません。「LINE SMART CITY FOR FUKUOKA」を手掛けたのもその一環で、さまざまなコンテンツを作ったうえで採用広報として見せていく。伝え方、見せ方の工夫は次の話だと思っています。

そして、担当している社員がどんなコンテンツを誰に届けたいかという想いが乗ってくれば必然的に候補者からの注目度が上がり、説明会参加者も増えます。人数などが目標値に達しなければ、どこが刺さらなかったのかなど振り返りながら進めています。

Q
54%の社員がU・Iターンとおっしゃいました。魅力をどう訴求していらっしゃいますか。
A

LINEの支社ではなく、一つの会社として動ける点が魅力ではないかと思っています。支社だと機能が絞られてしまいますが、当社では、「LINE Fukuokaとして地域に根差して貢献していこう」と独自の取り組みをおこなうことができます。そこが一番の訴求ポイントだと思います。

Q
人材育成・人材採用・仕事創造の3つのバランスのなかで、よりフォーカスされているところがあれば教えてください。
A

3つがすべて、同じくらい必要だと考えています。

育成については、今のリーダーシップのあり方がよいのか考え続けなければいけませんし、今いる人材にはない強みを持った人を採用して、ダイバーシティも広げていきたい。仕事の土壌が整っているのであれば、更に採用にもチャレンジできるのでは、と考えています。

Q
地方企業でエンジニア採用に苦戦しているのですが、どんな企業をベンチマークするとよいのか、具体的なアドバイスがあれば教えてください。
A

採用競合は国内外にたくさんあり、待遇面などハード面を言い出したらきりがないですよね。エンジニアの候補者と1対1で話す機会を作り、転職の背景を理解していくことから始めることが大切なのではないでしょうか。

競合をベンチマークと大きくとらえるのではなく、一人一人の人生やキャリアを個別に見ていく。LINE Fukuokaでは、カジュアルな面談やトークイベントなどをエンジニア自ら企画して実施しており、現場視点の取り組みも大事だと思います。

Q
Ownershipの浸透方法について取り組んでいるポイント、工夫はありますか。
A

今まさに継続して取り組んでいる最中ですが、「浸透した」というゴールはいつまでもやってこないものだと感じています。

マネジメントサイドがOwnershipを持って参画できる会や、社員の職位にとらわれず参加できる会社のイベント、仕組みを増やすことには力を入れています。オンラインの全社集会、CEOラウンドテーブルなど試しにいろいろやってみて、「これはイマイチだったね」「意外に反応がよかったね」など、アンケート結果を見ながら試行錯誤を続けています。

Q
鈴木様自身が人材採用する際にもっとも重要視している採用基準とは?
A

誠実さです。それに尽きますね。やるといった仕事をやらないなど、誠実さに欠けることが出てくると仕事の根本的な土台が崩れてしまいます。言っていることとやっていることが本当だと思える誠実さの土台は、一緒に仕事をしていくうえで重要な要素だと思います。

セミナーの最後に視聴者に向けてメッセージをいただきました。

鈴木 優輔 氏
鈴木 優輔 氏

本日は貴重な機会をありがとうございました。いただいた質問に答えながら気づいたことも多く、学びある場になりました。

立場上、組織づくりができているかのような口ぶりでお話ししてしまいましたが、まだまだできていないこと、失敗しながら継続していることもたくさんあります。皆さんと学び合い、成長し合って、それぞれがいい会社を作っていけたらいいなと思っています。

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著者プロフィール田中瑠子(たなか・るみ)

神奈川県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。株式会社リクルートで広告営業、幻冬舎ルネッサンスでの書籍編集者を経てフリーランスに。職人からアスリート、ビジネスパーソンまで多くの人物インタビューを手がける。取材・執筆業の傍ら、週末はチアダンスインストラクターとして活動している。