【イベントレポート】これからの時代に向けた強い組織の「新」人事戦略とは

2021年2月19日、株式会社ビズリーチは「2社のキーパーソンが語る 強い組織の『新』人事戦略」と題したWebセミナーを開催しました。

ゲストに、株式会社サイバーエージェント専務執行役員・石田裕子様とスマートニュース株式会社人事部長・成田均様をお迎えし、株式会社ビズリーチ代表取締役社長・多田洋祐の進行のもと行われた本セミナーの様子をお届けします。

石田 裕子氏

登壇者プロフィール石田 裕子氏

株式会社サイバーエージェント 専務執行役員

2004年、新卒でサイバーエージェントに入社。広告事業部門で営業局長・営業統括に就任後、Amebaプロデューサーを経て、2013年および2014年に完全子会社2社の代表取締役社長に就任。2016年より執行役員、2020年10月より専務執行役員に就任。人事管轄採用戦略本部長兼任。
成田 均氏

登壇者プロフィール成田 均氏

スマートニュース株式会社 人事部長

東洋大学卒業後、日本の電機メーカーで人事キャリアをスタート。アドビシステムズ(現:アドビ)を経て、2000年にトレンドマイクロ入社。日本イーライリリーを経て、2009年にトレンドマイクロに再入社し、2011年より人事部門トップを務める。2019年にスマートニュースに入社して現職。
多田 洋祐氏

モデレータープロフィール多田 洋祐氏

株式会社ビズリーチ 代表取締役社長

2006年、中央大学法学部卒業後、エグゼクティブ層に特化したヘッドハンティングファームを創業。2012年、株式会社ビズリーチに参画し、その後ビズリーチ事業部長を務める。2015年より取締役として、人事本部長、スタンバイ事業本部長、HR Techカンパニー長等を歴任。2020年2月、現職に就任。

※株式会社ビズリーチ 代表取締役社長 多田 洋祐は、2022年7月2日に逝去し、同日をもって代表取締役社長を退任いたしました。生前のご厚誼に深く感謝いたしますとともに、謹んでお知らせいたします。

リモート勤務によって効率性の見直しや、現場発の工夫が生まれた

ビズリーチ・多田(以下、多田):本日はよろしくお願いいたします。まず第1部のテーマは、2020年における「働き方」の変化についてです。まずは、1度目の緊急事態宣言時(2020年4~5月)において、どのような対応をされましたか?

サイバーエージェント・石田様(以下、石田):1度目の緊急事態宣言中は、全社的にリモートワークをメインとした働き方に切り替えました。緊急事態宣言が明けてからは、感染対策を行いつつ、サイバーエージェントが大切にしてきた「一体感」「チームワーク」などのカルチャーを生かし、業績を上げていくためにはどのような働き方がベストなのか試行錯誤を続けています。結果として「出社も大切にすること」「週2回はリモートワーク推奨デーとする」などの方針が生まれています。

スマートニュース・成田様(以下、成田):スマートニュースでは、代表の鈴木健が「両手を回したときに隣の人に当たるくらいで話せる環境でこそ、イノベーションが生まれる」と考えていることから、もともとオフィスで働くことを重視しています。そのため、新型コロナウイルス感染症による影響に対しては当初「ゲームチェンジを強いられている」と重く受け止めました。

対応としては、1度目の緊急事態宣言下における働き方の指針として「個人の判断で、在宅勤務かオフィス勤務か選択する」という形を取っていました。2度目の緊急事態宣言下(2021年1月〜)(※)では在宅勤務を推奨しています。

多田:リモートワーク・在宅勤務が進んだことで、良い変化はありましたか?

石田:生産性に直結しないものや、紙を用いた業務フローなどを見直す・捨てるきっかけになったのは良い変化でしたね。これまでよりもさらに、効率的な働き方を実現できるようになっています。

成田:スマートニュースでは先に述べた文化もあり、当初は苦戦したことが記憶に残っています。たとえば「プロダクトへの新機能追加についてのディスカッション」などは、ホワイトボードを用いて膝を突き合わせながら行っていたもの。それがオンラインではできなくなってしまいました。ただ、現在では「オンラインホワイトボード」のツールを使ってオンラインでディスカッションを行うなど、新しい方法に挑戦しています。現場発でツールの導入などを含めた働き方の工夫が出てきていますね。

石田:「朝会・夕会の開催」や「雑談の時間を意識的に作る」などの工夫が現場から出てきました。人事側が最初から「こういう制度にします」とか「このツールを使いましょう」と提示するより、現場が自発的にその部署・チームに適した方法を見いだしたほうが、より有効な策になると感じています。

成田:同感です。いいものは残って組織内に浸透するし、イマイチなものは選別されていく。現状では、使用ツールが複数出てきており試行錯誤を続けていますが、人事は状況に合わせて整理し、良いものを組織に浸透させていく役割だと認識しています。

社員のタレント(才能)を発掘し、経営戦略と結びつける

多田:続いて、第2部のテーマ「『経営・事業』と『人・組織』の関係性とは」について、お話ししていきたいと思います。サイバーエージェント様は、経営戦略と人事戦略をどのように関連づけていますか?

石田:創業以来、若手を重要ポジションに積極的に抜てきする「抜てき文化」など、経営戦略と人事戦略は、ひと続きになっています。役員会議でも、人や組織の話は特に時間をかけていますね。たとえば「この事業戦略においては、こういう人をこんな形で抜てきすると活躍させられるし、事業も伸びるのではないか」などと考えるイメージです。

会社の規模が大きくなりお客様から求められるレベルも高まっているため、若手が抜てきされる比率は多少下がっていますが、何らかのファクトを持って事業戦略と人事戦略をセットで話に挙げることを意識しています。また、社員のタレント(才能)を発掘して、経営戦略と結びつけていくことも強く意識していますね。

多田:タレント(才能)を発掘し、経営に生かすために、工夫されていることはありますか?

石田:社員一人一人のコンディションや今後やりたいこと、強みや得意なことなどをデータベース化(ツール利用)しています。人事やマネージャーによるヒアリングだけでデータ化するのではなく、全社員が自身で入力をする形を取っています。このデータベースがあることで「今この事業に、こういう人材が必要」といった際に、適した人材をすぐに提案することができるんです。

多田:スマートニュース様では、経営戦略と人事戦略をどのように関連づけていますか?

成田:グローバルの人事戦略を担当するChief Strategy Officer(CSO:最高戦略責任者)が存在し、経営目線からの、人事戦略・組織戦略の立案を担っています。私は2019年にスマートニュースに入社し、以来CSOの任宜とともに働いていますが、彼はかなりの時間を人事戦略・組織戦略の策定に割いていますね。

また、スマートニュースは一つのプロダクト・単一の事業なので、組織は「プロダクト」「マーケティング」「セールス」といった「機能(職種)」ごとに編成されているのが特徴です。ただ、これに加えて「新規ユーザーへの施策」「リテンション施策」「広告施策」などを行う、事業目的ごとの組織も存在します。機能組織に属しながら、事業組織でもそれぞれのミッションを推進する、マトリクス組織なのです。「機能組織」と「事業組織」がうまく連携して機能することが、重要なポイントと考えています。

多田:マトリクス組織においては、どちらをメインにするのかなど、いろいろ考えなくてはいけないものがあると思うのですが、たとえば人事評価はどのように行っているのでしょうか?

成田:人事評価は機能組織をメインとして行っていますが、評価の前に事業組織の評価者からフィードバックをもらい、それを踏まえて評価しています。

評価軸は、インパクト評価(組織の成果にどれだけ貢献したか)とコンピテンシー評価(成果には結びつかなくてもチャレンジした部分)の大きく2つ。特にコンピテンシー評価をいかにアップさせていくかが、人材育成の観点で重要と考えています。

多田:ありがとうございます。サイバーエージェント様では、働き方の変化によって、評価やマネジメントに影響はありましたか?

石田:リモートの働き方では、個人の業務状況の把握がしづらく、仕事をより多くこなす人と、そうでない人の二極化が進むなど、多くの企業が似たような課題を抱えていると思います。ただ、これは個人的な考えなのですが、リモートワーク下においては、「マイクロマネジメントの概念を捨てたほうがいいのではないか」と考えているんです。

新型コロナウイルス感染が拡大するなかで働き方が変わってから取り入れ始めているのは、「組織貢献軸」をより重視した評価制度。自分の仕事を全うしたうえで、部署の目標や組織全体にいかに貢献したか。そういった評価軸も重視することを伝え、制度変革を進めています。

成田:スマートニュースでも、所属する組織への貢献度合いを評価に含めていますね。企業が最終的に何を求めているのかというと、組織や事業全体としての「成果」ですよね。目標としている成果や約束した成果をしっかり出せているか。そこを重視することで、働き方が変わったことによって「見えづらくなった業務の過程」をマイクロマネジメントする必要もなくなると考えています。

在宅と出社の良さをハイブリッド。新しい採用の可能性も模索

多田:リモートワーク下においては、ややもすればマイクロマネジメントに向かいがちですが、「組織貢献」や「成果」に目を向けて、それを回避しているのですね。2度目の緊急事態宣言も明けようとしているなか(※)、今後の働き方における方針を教えてください。

成田:多方面から検討を重ねている段階ですが、在宅勤務と出社を組み合わせた現状の方針を続けることになると考えています。やはりカルチャーとして出社をして顔を合わせる場面も重要と考えていますね。

たとえば新入社員は、まだ組織内につながりがなく、わからないことを誰に聞けば良いかわからない、聞きづらいといった不都合が発生しやすくなります。その人のタスク単体で見れば在宅でできる仕事も、メンバーとの関係性構築のためには出社したほうがいい場面もあるでしょう。新メンバーには一定期間出社して働いてもらうなど、工夫していきたいと考えています。

石田:サイバーエージェントも検討を重ねている段階です。一つ言えることは、この状況が収束したとしても「以前の働き方に戻ることはない」ということです。この1~2年で見えてきたリモートワークの良さも踏まえながら、収束状況に合わせて随時判断していく方針です。

子育て中の方やエンジニアで作業に集中したい方など、個別の事情によって、リモートワークとの相性が良い方もいます。個々の状況に合わせた働き方を受け入れつつも、出社をして一体感を持って働くことも大切にするようなハイブリッド型になると考えていますね。

多田:今後の採用面についての方針はどのように考えていますか?

成田:全社的に在宅勤務を経験したことで「オフィスがない地域の人とでも一緒に働けるのではないか」と考えるようになりました。今後は海外在住の人材を、海外在住のまま採用することを検討しているんです。もともとスマートニュースは外国人比率が高い組織ということもあり、受け入れの素地がある。法的な観点なども踏まえ、これから検討していきたいと考えています。

石田:採用面については、オンライン採用が基本になったことで、企業・候補者双方にとってミスマッチが発生しやすくなっていることが課題だと考えています。オンライン採用では候補者が人やカルチャー、事業について十分に理解できないままになってしまうこともある。それをいかに解決するかが今後の課題です。リモートでの勤務も想定されるため、よりセルフマネジメント力の高い人材を求める傾向になると考えています。

多田:人材育成の面における課題や、今後の方針はありますか?

成田:人の成長は「経験:薫陶(アドバイスやフィードバック):研修=70%:20%:10%」と言われていますが、「経験」をどう設計するかがマネージャーの腕の見せどころですし、20%や10%のところをどう設計し、経験と接続させるかも重要。そのような観点で、今後の育成方針を考えていきたいです。

石田:新しい働き方に取り組むなかで、マネジメント層への負担が大きくなっているのが実情です。部下だけでなく、上司も手探りの状況のため、今後はマネージャー層向けのトレーニングに注力しつつ、メンバー育成についても、より良い方法を探っていきたいです。

多田:では最後にお二人から、セミナー視聴者の方へメッセージをお願いします。

成田:新型コロナウイルス感染症による影響で、多くの企業が試行錯誤せざるを得ない状況です。しかし、人間は経験から学んでいくことができます。今回のセミナーのように、経験によって学習した人たち同士がお互いに「こんな経験をして、こんな学びがありました」という情報のシェアをしていくことは、最適解に近づくために重要なことだと感じました。

石田:個人・企業それぞれが「変わらなくては」という課題認識を持ちつつも、Howの部分で多くの人が試行錯誤している状況だと捉えています。今回お伝えしたことも、全て正解だとは思っていませんし、個別の人、企業に適したものはそれぞれ違うはずです。新しい制度やツールを導入したり、抜本的に状況やルールを変えたりするチャンスとしてうまく捉えていけると良いのではないでしょうか。

※Webセミナーは2021年2月19日に実施されました

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著者プロフィールBizReach withHR編集部

先進企業の人事担当者へのインタビューや登壇イベントなどを中心に執筆。企業成長に役立つ「先進企業の人事・採用関連の事例」や、 事業を加速させる「採用などの現場ですぐに活用できる具体策」など、価値ある多様なコンテンツをお届けしていきます。