2021年7月29日、株式会社ビズリーチは「メルカリCHROが語る 急成長企業を支える文化づくり」と題したWebセミナーを開催しました。
株式会社メルカリ執行役員CHROの木下達夫様にご登壇いただき、メルカリの企業文化の考え方、浸透に向けた取り組みについてお話しいただきました。
モデレーターは、株式会社ビズリーチ取締役副社長で、ビズリーチ事業部事業部長の酒井哲也が務めました。

登壇者プロフィール木下 達夫氏
株式会社メルカリ 執行役員CHRO

モデレータープロフィール酒井 哲也氏
株式会社ビズリーチ 代表取締役社長 ビズリーチ事業部 事業部長
※所属・役職等は制作時点のものとなります
第1部:企業戦略と企業文化の関係性
企業文化を考えるうえで重要なのは、「出発点は企業戦略にある」ということです。
組織として達成したいことがあり、その実現のために必要となるのが組織能力です。その組織能力の一つとして企業文化があると考えています。
企業文化は、自然発生で起きるものではなく、経営陣が意図的に仕掛け、構築するものです。構築できれば、企業戦略の実現にかなり近づけることができる。それが企業文化だととらえています。
メルカリでは、創業間もない2014年にミッション・バリューを策定。企業文化もここから構築されています。
- ミッション:
新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る
- バリュー:
Go Bold(大胆にやろう)
All for One(全ては成功のために)
Be a Pro(プロフェッショナルであれ)
事業戦略を考える際の土台となったのが、この3つのバリューであり、さまざまな事業立ち上げやマーケット投資も「Go Bold」に基づいています。

企業文化の浸透への取り組み
企業文化の浸透は、今も試行錯誤しながら取り組んでいるテーマです。
従業員数が数百人のときは、事業上の意思決定をどんな価値観や考えですべきか、経営陣にすぐに聞くことができました。しかし、1,000人を超えてからは、経営陣との物理的な距離も生まれ、創業から大事にしてきた価値観の自然な浸透は難しくなっています。
現在の従業員数は1,700人以上。人材の多様化も進み、エンジニア職種においては外国籍社員が半数以上です。日本語圏での文化、価値観の伝承はさらに難度が高くなっており、英語でどう表現するときちんと意図が伝わるか、ディスカッションを重ねています。
例えば、メルカリでは性善説に基づき社員を信頼しており、ルールを極端に作らないことを大切にしてきました。ルールで縛るカルチャーにはしない、という経営陣の思いをどう伝えるか。検証を重ねた結果、「Trust & Openness(トラスト&オープンネス)」と言い換えています。組織規模がどんなに大きくなっても、情報共有度を高め、お互いを信頼してオープンにすべての情報を開示し合う。そのカルチャーを説明したフレーズとして、グローバルなメンバーからも理解が得られています。
新しく入ったメンバーには、ミッション・バリューを伝えるオリエンテーションを組んでいます。伝えているのは、「3カ月後にはメルカリのバリューを自分の言葉で語れるようになってください」ということ。HR領域や法務部門など、Go Boldを体現しにくいような部門においても、自分にとってGo Boldとはどういうことなのかを自分の頭で考えてもらいます。
例えば法務部で、新規事業立ち上げにより新たな法整備や解釈が必要になるのなら、先回りしてリスクを回避し、新規事業の成功に向けて動く。その取り組みも、組織規模が大きくなるなかでの重要なGo Boldの姿勢ともいえます。バリューの解釈をディテールまで落とし込むことが重要だと考えています。
バリュー浸透において大事なのは「対話」です。「自分にとって、これがGo Boldだと思うけれど、どうだろう?」と周りとディスカッションを重ね、チームでオープンに話せる環境が大切です。
第2部:企業文化は「誰」のために存在し、どのような役割を持つのか

カルチャーのオーナーはメンバー全員であり、カルチャーは一人一人の行動の集合体です。誰もがカルチャーを作る担い手として、主体性を持って取り組む姿勢が、メルカリの出発点にあります。
そして、企業文化はミッション達成のためにあります。
なぜメルカリにいるのかといえば、「循環型社会をつくる」という社会的インパクトを生み出す事業に携わり、同じ価値観を共有して一緒にやっていくため。
ミッション・バリューはどのステークホルダーにも大事な価値観として伝えていますが、メルカリで働くメンバーは文化を作る主体であり、受け身ではありません。
HRをはじめ経営陣は、そのナビゲーターの役割を担い、組織にとっていい方向に進めるよう、議論の機会を大切にしています。
カルチャー浸透が進んでいる背景には、3つのバリューのわかりやすさがあるでしょう。入社者へのオンボーディング、入社後のエンプロイーエクスペリエンスでもバリューに基づいた期待値を伝えています。評価面談は半年に1回、バリューの発揮度に関するフィードバックの機会は3カ月に1回あります。
社内表彰制度でも「Go Bold賞」などのようにバリューが反映されており、日々の行動から3つのバリューを意識する仕組みができています。メンバー間の会話のなかにも、「あの仕事はGo Boldだったね」などのように頻繁に登場しており、浸透度は非常に高いと思います。
評価軸にバリューをどう入れるかは、この1年で整理を続けてきました。具体的には、グレードごとに、バリューの行動を言語化し、1つのバリューにつき2つの要素に落とし込んでいます。共通言語ができたことで、メンバー自身もどこまで発揮できているか振り返ることができますし、マネージャーも判断しやすくなっています。
第3部:メルカリが取り組んだ企業文化を浸透させるためのステップ

これまでの話にもあったように、企業文化の浸透には「言語化」が欠かせません。
大事なのは、いかに暗黙知から形式知に移行できるか、ハイコンテクストからローコンテクストに移行できるか。グローバルコンテクストでロジカルに言語化し、日本語話者以外のメンバーにも理解できることが重要です。

暗黙知が重要ではないということではありません。コロナ禍以前のメルカリでは、原則出社にしてチームランチや夜ご飯の時間でコミュニケーションをとるなど、チームビルディングも大事にしてきました。ただ、暗黙知だけではスケールしないというのも事実であり、とくに人材の多様化が進むなかでは具体的な共通言語が必要です。
そこで、「形式知」化の取り組みの一環として作ったのが「カルチャードック」(※)です。
※「ドキュメンテーション/Documentation」の省略表現「Doc」を、ここでは日本語で「ドック」と表現。

これは、メルカリが大事にしている価値観をドキュメンテーション化したもの。採用、入社後のオンボーディング、育成、職場環境の改善などさまざまなフェーズで、バリューに基づいて組織運営に落とし込むために、2019年に作成しました。
カルチャードックを作る過程で、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」に対するメルカリとしての方針を社内外に提示できたのは大きな収穫でした。D&Iについては、当時経営陣のなかでも意見がまとまっておらず、経営陣が議論を重ねる機会になりました。
英語を話す社員が増えていき、言語に対してどう向き合うのかについても、「メルカリにとって英語はツールである」とステートメントのなかで明確にしました。ミッション達成のためには、国内外の優秀なエンジニアを採用し続けることが必要であり、そのために英語力は求められます。英語を必要とする業務は拡大していくので、英語に積極的に取り組めば仕事の機会は増えていく。その方針も、明確に示すことができました。
質疑応答
セミナー後半には、視聴者から寄せられた質問にお答えいただきました。
なぜ、桃太郎はきびだんご1つでお供を増やせたのか?

人々が出会い、関わり合う社会のなかで「どのように仲間を集めるか」を、桃太郎が本資料で解説。
いつもと視点を変えて、昔話「桃太郎」から、採用力強化につながる「仲間集めの極意」を学んでみましょう。