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2022年4月21日、株式会社ビズリーチは「人事・採用の基本をマスター」と題したWebセミナーを開催しました。
株式会社人材研究所 代表取締役社長・曽和利光氏にご登壇いただき、採用活動の基礎・基本となるテーマを、全6回のWebセミナーで伝えていきます。第3回目は採用体制の作り方編として、採用チームを作る目的や採用担当者の要件、チーム作りの注意点などを解説します。
この連続セミナーのレポート記事一覧は下記のリンクからどうぞ。

登壇者プロフィール曽和 利光氏
株式会社人材研究所 代表取締役社長
著書等:「人と組織のマネジメントバイアス」、「コミュ障のための面接戦略」、「人事と採用のセオリー」、「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか? 人事のプロによる逆説のマネジメント」、「「ネットワーク採用」とは何か」、「知名度ゼロでも『この会社で働きたい』と思われる社長の採用ルール48」、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」
【組織の目的】採用チームは何のためにあるのか
そもそも、採用チームは何のためにあるのか。大前提から整理していきましょう。
採用の仕事とは、「理念や事業という目的を実現する組織や文化を作ること」だと考えています。
事業を支えているのが、組織構造(Structure)、制度・ルール(System)、人材(Staffing)の3つのS。それらが文化(Culture)に影響を与えています。
採用は、最終的には「良い企業文化に寄与するもの」ですが、文化は潜在的で直接触れることができません。3つのSを使って間接的に文化を作っていくことが、人事・採用の役割だと思っています。

では、なぜ文化を作るのが大事なのでしょう。
ラリー・E・グレイナーという学者による「5段階企業成長モデル(グレイナーモデル)」からも、「文化によるマネジメント」を実現することが組織にとって究極的な目標になると考えられます。

手取り足取り、聞かれたことに柔軟に答えていく「背中でマネジメント」の段階から、メンバーが増えていくと「行動でマネジメント」するフェーズに入ります。行動をマニュアル化して指示を出す段階です。
すると、自分の頭で考えなくなるリスクが生じるため、次に「結果でマネジメント」を行います。ゴールを決め、インセンティブを与え、やり方は任せるスタンスにより、個人の能力を発揮しやすくなります。
ただ、個人最適ばかり追い求め組織全体の協調が損なわれる可能性があるので、次は「計画でマネジメント」をしていきます。事前の計画を提出してもらい、組織内リソースの調整や配分を考えて動かしていきます。
こうしたステップを経て、最終段階となるのが「文化でマネジメント」を行うフェーズです。自律的で成熟した組織では、価値観や方向性、理念を共有することで全体最適を伝え、一人一人の持つ知性や創造性、自律性を発揮できるようになります。文化での方向づけができるようになることが、もっとも計画的なマネジメントになっていく。グレイナーモデルではそう示されています。
こうした組織づくりに向けて、文化を醸成することが採用の究極的な目標なのではないかと考えています。
また、ビジョン・ミッション・バリューについても改めて確認していきましょう。
ビジョンは、社会・市場・顧客が「こうなって欲しい」という「絵姿」です。
ミッションは、ビジョンを実現するための、自社の「使命」「役割」のこと。事業内容ともいえます。
バリューは、ミッション遂行するにあたり、大事にする「規範」「価値観」のことです。例えば、私がいたリクルートでは、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」がバリューとして知られています。

ビジョン・ミッション・バリューはそれぞれ独立しており、ビジョンやミッションが近しい企業でもバリューが全く異なるケースは多くあります。
私は、バリューが「組織文化」に近いものであり、文化が企業の競争優位性を作ると考えています。ビジネスモデルはまねできますが、組織風土はまねできないものですし、従業員は入れ替わる可能性がありますが、組織風土は残り続けるからです。
ただ、大事なポイントは、採用した人材が事業を作る側面もあるということです。
やりたいことがあるから、それに沿った人材を採用するのが一つの考え方ですが、「この人がいるからこんな事業ができる!」というケースもあるでしょう。
IT業界のエンジニア採用が分かりやすいかと思いますが、一人の天才的なエンジニアを採用したことで、新たなプロダクトが生まれることは往々にしてあります。
つまり、採用活動が事業開発に近づいているということ。採用が、企業にとって極めて重要な仕事であることがわかると思います。

【採用担当者の要件】どんな人で構成すればいいか
では、その重要な役割を持つ採用担当者には、どんな要件が必要なのでしょう。
大事なコアスキルとして、「見立てる力」は欠かせないと考えています。

採用チャネルの知識や、面接のインタビュースキルももちろん必要です。でもそれらはある程度トレーニングができますし、アウトソーシングも可能でしょう。
組織内の採用担当者には、「今の組織はどんな人たちで構成されていて、それは事業をやるためにうまくいっているのか」「採用した人は十分活躍できているのか」といった、判断材料となる軸を見る力、つまり人や組織の状態を見立てる力が大事なのです。
見立てる力を磨くうえで重要なのは、心理的バイアスからいかに逃れるかだと思います。
人物評価をする際に、私たちはさまざまな心理的バイアスに捉えられています。
例えば、
- 固定観念に陥りやすい確証バイアス:confirmation bias
- 直観や、面接を始めて早々に人物の評価を決めてしまう初頭効果:primacy effect
- 良いところや悪いところに、過剰に重点を置いてしまうハロー効果:halo effect
- 自分に似た人を好む傾向にある類似性効果:similarity effect
などです。
ほかにも、採用しないといけないというプレッシャーで評価を上げたり、相対的に候補者をランク付けしたりしてしまいます。
では、こうしたバイアスから逃れるために何をすべきなのでしょう。
8つのポイントを説明したいと思います。
(1)自己認知を他者からのフィードバックで高める
大事なのは「自分の知らない自分をどうやって知るか」です。周りからは見えているけど、自分は見えていないブラインドの領域の自己認知を高めることが、採用担当者には重要になります。
私が研修した、ある企業の採用チームでは、チームメンバーの適性検査結果を名前だけ隠して「これは誰でしょう」と当てるゲームを実施しました。「◯◯というのは、Aさんぽいよね」などと周りが発言することで、本人は「周りからはそう見えているのか」と認識することができます。

(2)感情労働耐性
人事・採用の仕事は感情労働耐性が必要な仕事です。
さまざまな批判にさらされる仕事なので、ネガティブなことも受け入れる力が大事になります。
受け入れる際には、「その人がこう思っている」という心理的現実を見ること。人は心理的現実で動いてしまうため、嫌なことから目を背けない強さが求められます。

なお、「カルチャー・マップ」という書籍では、ビジネスパーソンの国別の特性を8つの軸で検証しています。それによると、日本は「ハイコンテクスト×間接的なネガティブフィードバック」を好む傾向にあります。
共通の文化基盤が多く「あ・うん」の呼吸が通じやすく、直接ネガティブなことを言われるのを嫌がるということです。嫌なことを指摘されるのは、多くの人にとってきついことですが、他者からのネガティブフィードバックを受けない限りは自己認知を高めることはできません。人事・採用担当者はその壁を乗り越えていく必要があるといえるでしょう。

(3)「事実」ベースで考える(極的判断留保)
3つ目は、拙速に何でも判断しすぎず、事実ベースで考える姿勢が大事だということです。
事実を示す「行動」にフォーカスするのは面接の基本でもあります。相手から言われた意見にすぐに左右されると、判断を誤る可能性があります。事実かどうか裏が取れていない情報には、積極的判断を留保することが大切です。

(4)「人を表現する言葉」の正確さ
人事・採用担当者は多義的な言葉に注意を払い、人に関して、一義的に表現できる語彙力や概念を学ぶ必要があります。
これまで、経団連がとっていたアンケート調査「選考時に重視する要素」では、上位5項目に「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」「協調性」「誠実性」があります。しかし、それらは非常に多義的で、「コミュニケーション能力」と一言で言っても、企業によって指す能力は異なります。これでは、具体的にどんな人材が必要なのか正確に表すことはできません。
人によって解釈が多様な言葉には注意を払い、細かく表現できる力が大切です。

(5)人に対する情熱(コミットメント)
候補者に対して、「ぜひあなたに入ってほしい!」と期待する力は、採用担当者の重要な要素だと思います。抽象的な「人間」でなく、目の前の人に興味を持つことができるかどうかが肝になります。「面接が退屈」と言ってしまう人は、相手に対してレッテル貼りやタイプ分けをしがちです。少し話を聞いて「この人は○○というタイプだな」と枠に入れることなく、細かく相手を見ようとする姿勢が大切です。

(6)人に対する冷静さ(デタッチメント)
5つ目の内容と矛盾するようですが、情熱を持って相手を知ろうとしながらも、一方で、冷静に人を見る目も欠かせません。
「いい人材に出会えた!」とすぐに思い込まず、相手の言葉ではなく「行動」を見ること。すべては仮説である、と疑って見る視点も大切です。また、相手に対して直感的に感じ取ったものがあるのなら、「なぜこの人に対して○○という感情を持つのだろう」と冷静に原因を探ってみましょう。

(7)強さ(凝縮性)
八方美人にふるまっていては、人事は務まりません。社内で抵抗勢力があったとしても「この人材は必要です」と議論できる強さがあるかどうか。自己認知を高めたうえであれば、周りの評価を気にせずに、採用に向けて、「自己満足」を貫ける強さが大切です。

(8)優しさ(受容性)
最後のポイントは受容性です。自分の考えはいったん置いておいて、「そういう考え方もあるのだ」と多様な価値観を受け入れること。相手の気持ちを尊重する姿勢が求められます。
拙速に動かず、積極的判断を留保として、時には待つこと、間違っていたらすぐに改める柔軟性も必要です。

【チームビルディング】採用チームを実際に作る際の注意点
最後に、8つのポイントを踏まえたメンバーと、採用チームを作るときの注意点についてお話していきます。
まず、採用チームには何人くらい必要で、いくらかければよいものなのでしょう。
実際はケース・バイ・ケースなのですが、あえて言い切ると、
- スカウト型など「攻めの採用」を行うのであれば、年間採用目標20人に対して1人の採用担当(フルタイム換算)、可能であれば年間採用目標10人に対して1人
- 採用単価は「紹介フィー」を目安に、新卒は50〜100万円、中途の方は年収の35%
が目安だと思います。
また、採用を人事が主導で行う場合と現場で行う場合、それぞれのメリット・デメリットがあります。
どんな採用を進めていくか、両者の良しあしを理解したうえで決めていく必要があります。

現場に協力を仰ぐ際のポイントもさまざまです。現場が気持ちよく協力できるよう、次の5点を意識することをおすすめします。
- 依頼する際は総時間数を推定して伝える
- トレーニングコストの観点から、可能な限り人材は絞る
- ハイパフォーマーに依頼する
- インセンティブ制度などモチベーションを上げる施策を取り入れる
- 面接した人がその後どうなったのか、必ずフィードバックを行う
現場へのトレーニングでは、採用基準のインプットやインタビュースキルの底上げはもちろん欠かせません。加えて、面接担当者にも心理的バイアスを認識してもらうことが大切なので、パーソナリティーテストのフィードバックも進めていくといいでしょう。

ここまでの内容を踏まえ、改めて強い採用チームの要件をまとめると、次の4点に集約されていきます。

採用チーム自体が十分な多様性を持ち、会社の「ひな型」のような状態になっていることが理想です。強さと優しさの、ときに両立しにくい要素のバランスを持ち、豊富な語彙力、理論的な裏付けをある程度インプットしていく必要があります。そして、正しい自己認知ができるよう、お互いフィードバックができるチームを作っていけるといいと思います。
Q&A
セミナー終盤には視聴者からの質問に答えていただきました。抜粋してご紹介します。
例えば、面接評定表にかかれている言葉をすべて抜き出し、どんな言葉が頻度高く使われているかを確認してみましょう。
それを、採用チームのみんなで、どういう意味で使っているのかを議論してみては。「主体性があるというのは、どういう人のこと?」とすり合わせることで、個々人のなかにある「主体性」が指すものが明確になっていくと思います。
大事なのは、フィードバックと自己認知です。
「あなたにはこんな特性があるよね」とお互いに意見し合い、自己認知を高める文化を醸成できれば、最強の採用チームになります。そのために、適性評価をするのも一つだと思います。
現場に協力を求めるときには、社内で「組織のために役立つボランティア活動」という認識を持ってもらうことも大切です。
組織コミットメントを高めないとそのようには動かないと思うので、人事・採用担当者側が現場に対してこんなことまでやっていますと、貸し借りの関係を作ることも必要だと思います。
現場のトップが「採用できなければ事業が進まない(拡大しない)」という認識を持たなければ、なかなか動きません。ハイパフォーマーが面接にかかわることで失われる業務上の機会損失と、採用できることで実現する事業成長を可視化して、「どっちをとりますか」と意識のすり合わせをしていくのがいいのでは、と思っています。
最後に、視聴者の皆様へメッセージをいただきました。

理想論を多くお話してしまいましたが、人事はネガティブフィードバックも認めないといけない「感情労働耐性」が必要、というのは皆さんも日々の仕事で感じられているのではないでしょうか。
自己認知を高めるためのフィードバック、この重要性を少しでも伝えることができたのならうれしいです。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。
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