「年収・待遇ダウン」よりも不安なものとは? 転職者が抱く「3大不安」を解説

「年収・待遇ダウン」よりも不安なものとは? 転職者が抱く「3大不安」を解説

「高年収の人ほど〇〇軸を重視? スカウトに重要な『4つの転職軸』を解説」の記事では、転職軸別に「転職活動をする際に不安に思うこと」が異なることをご紹介しました。この不安は、年代や年収帯でも異なるのでしょうか。

今回は、ビズリーチ会員へのアンケート結果から、年代や年収帯別にみた「転職活動時の不安」を解説。採用活動時の候補者の不安払しょくや中途入社者の受け入れに生かしてみましょう。

この記事のポイント
  • 転職活動時の3大不安は、「自分の市場価値」「次の職場で、自分の経験・スキルが通用するか」「年収や待遇などが下がらないか」
  • どの年代・年収帯においても、転職活動時の不安はほぼ共通
  • 自己啓発を支援・評価する制度は現社員のためだけでなく、「企業の魅力」として、中途採用活動においても重要になるのではないか
  • 入社後の満足度を分けるのは「組織風土・人間関係」
  • 20代~40代の一番の不安は「自分の市場価値」

    ビズリーチ会員を対象に「転職活動をする際に、不安に思うこと」を選んでもらったところ、20代~40代は「転職市場において、自分の市場価値がどれほどなのか」、50代~60代は「次の職場で、自分のこれまでの経験・スキルが通用するか」が、それぞれ最も多い結果となりました。

    どの年代にも転職活動をする際の不安はほぼ似た傾向がみられましたが、【20代】では「キャリアアップできるか(52.9%)」、【60代】では「希望する業界や職種に転職できるか(43.5%)」と、年代による特徴も表れました。

    図1.転職活動をする際、不安に思うこと(全体)

    図1.転職活動をする際、不安に思うこと(全体

    Q19 あなたが転職活動をする際に、不安に思うことがあれば、あてはまるものを全てお選びください。(複数選択)

    図2.転職活動をする際、不安に思うこと(年代別)※上位3つを抜粋

    図2.転職活動をする際、不安に思うこと(年代別)

    Q19 あなたが転職活動をする際に、不安に思うことがあれば、あてはまるものを全てお選びください。(複数選択)

    年収にかかわらず共通する転職活動時の「3大不安」

    次に年収帯別にみたところ、年代別と同様、1位は「転職市場において、自分の市場価値がどれほどなのか」か「次の職場で、自分のこれまでの経験・スキルが通用するか」のどちらかになりました。さらに、【1,500万円以上】以外の年収帯では、この2項目に「年収や待遇などが下がらないか」を加えた3項目が1~3位を占有しました。
    【1,500万円以上】のみ、2位に「次の職場で、社風・人間関係に対応できるか(43.0%)」が入りました。

    また年収帯が低い方が、不安を感じている比率が高い傾向がみられました。

    図3.転職活動をする際、不安に思うこと(年収帯別)※上位3つを抜粋

    図3.転職活動をする際、不安に思うこと(年収帯別)

    Q19 あなたが転職活動をする際に、不安に思うことがあれば、あてはまるものを全てお選びください。(複数選択)

    データでわかる即戦力人材の転職意識・仕事観

    「自己啓発の支援制度・活用」ができている企業はまだ半数

    また、どの年代や年収帯においても、転職活動をする際に「次の職場で、自分のこれまでの経験・スキルが通用するか」という不安を持つ方が多い結果となりました。
    この結果からは、社会やビジネス環境の急速な変化のなかで「自身が現在持っているスキルが今後も通用するのか」という不安を抱えている方が多いことが考えられます。

    では、企業側は、社員のスキルを開発するための「社員の自己啓発サポート」にどのように取り組んでいるのでしょうか。

    内閣府の「平成30年度 年次経済財政報告」によると、社員の自己啓発の支援制度がない・活用されていない企業は半数程度存在することが、明らかになっています。(参考:図4 (2)の円グラフ)
    また、自己啓発に対する処遇についても「あまり反映されない」「ほとんど反映されない」企業も4割以上という結果になりました。(参考:図4 (1)の円グラフ)

    図4.自己啓発のサポート

    図4.平成30年度 年次経済財政報告 第2-2-14図 自己啓発のサポート

    引用:「平成30年度 年次経済財政報告『第2-2-14図 自己啓発のサポート』」
    https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/h06_hz020214.html

    資格取得や技能習得、能力向上等に前向きな人材にとっては、自己啓発を支援・評価する制度の有無は、大きな魅力の一つです。従業員満足度や社員の将来的な労働生産性を高めるだけでなく、魅力的な企業として候補者から転職先に選ばれるためにも、「自己啓発を促進する支援・評価制度」について、見直してみるのもよいでしょう。

    入社後満足度の明暗を分ける「組織風土・人間関係」

    転職先企業に入社を決めた理由を尋ね、入社後の転職満足度別にみたところ、【満足層】【不満層】どちらも「自分がキャリアアップ・成長できそうな業務内容や事業内容だった」が1位となりました。

    きっかけづくりや動機形成を高めるコツとして「期待することやスカウト理由を明確にするアプローチ」は重要ですが、最終的な入社判断にあたっては「キャリアアップ・成長できそうな業務内容や事業内容であるか」がカギになるといえる結果でしょう。

    そして次に注目したいのが【満足層】【不満層】との差です。最も差が表れたのは「組織の風土や雰囲気の良さが伝わった(自分に合いそうだった)」となり、【満足層】では24.3%だったのに対し、【不満層】では9.2%でした。

    図5.転職先として入社を決めた理由(入社後満足度別)

    入社後満足度の明暗を分ける「組織風土・人間関係」

    Q13 転職先として、その企業への入社を決めた理由について、あてはまるものを全てお選びください。(複数選択)
    ※入社後満足度は、「Q14 転職先として、その企業にご入社したことについて満足されていますか。お気持ちにあてはまるものをお選びください。」の回答結果によって、「満足層(満足、どちらかといえば満足)」「不満層(不満、どちらかといえば不満)」の2つに分類。

    中途入社者だとしても、業務を円滑に進めるためには、組織内で必要な人脈を構築するとともに、その会社のルールや、何をすれば評価されるかなどの情報を収集する必要があります。

    「中途入社者ならできて当たり前」「経験者は自分で積極的に情報収集するべきだ」といったスタンスで受け入れてしまうと、前職などでの経験やルールをアンラーニング(学習棄却)できないまま、自分の能力を発揮できず、当初の転職目的も果たせず、モチベーションが下がってしまいます。

    特に、オンラインでのコミュニケーションが増えるなかで、ささいな疑問や不安に答える機会が減っている組織も少なくないでしょう。自己啓発をサポートする支援・評価制度を用意するだけでなく、人間関係の構築につながる場や制度も戦略的に用意しセットで行うことが、中途入社者の定着・活躍につながるでしょう。

    アンケート概要
    ■調査方法:インターネットによるアンケート(会員向けメールマガジンで回答を依頼)
    ■調査期間:2020年7月15日~2020年7月21日
    ■調査対象:「ビズリーチ」(https://www.bizreach.jp/)の会員
    ■有効回答数:7,654名
    ※小数点以下第2位を四捨五入して処理しています。そのため、各数値を足した際に、合計が100%にならない場合や、小計が合致しない場合があります。


    執筆:瀬戸 香菜子(HRreview編集部)、編集:HRreview編集部

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