【イベントレポート】組織立ち上げから社内改革の軌跡 資生堂の採用体制

【イベントレポート】組織立ち上げから社内改革の軌跡 資生堂の採用体制

2022年2月17日、株式会社ビズリーチは「組織立ち上げから社内改革の軌跡 資生堂の採用体制」と題したWebセミナーを開催しました。

株式会社資生堂人財本部ビジネスパートナー室室長の辻󠄀田英俊様にご登壇いただき、具体的な採用体制の確立にむけて、どのように取り組まれてきたのかをお話しいただきました。モデレーターは、株式会社ビズリーチ取締役副社長の酒井哲也が務めました。

辻󠄀田 英俊氏

登壇者プロフィール辻󠄀田 英俊氏

株式会社資生堂 
人財本部 ビジネスパートナー室 室長

新卒で通信会社のSI営業としてキャリアをスタート。システムコンサル活動の中で、組織や人事に関心を持ち、カルチュア・コンビニエンス・クラブへ育成担当としてHRにキャリアチェンジをし、J&J日本法人の人事企画業務を含めて4年経験したのち、GEヘルスケアジャパンにてHRBPを約8年、日本のCorporate機能である日本GEで採用のCountry Leadを2年歴任。
2016年に資生堂に入社後、キャリア採用プロセスの立ち上げを経て、現在は、HRBPと障がい者採用・サポート業務全般を統括。
酒井 哲也氏

モデレータープロフィール酒井 哲也氏

株式会社ビズリーチ 代表取締役社長 ビズリーチ事業部 事業部長

2003年、慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社日本スポーツビジョンに入社。その後、株式会社リクルートキャリアで営業、事業開発を経て、中途採用領域の営業部門長などを務める。2015年11月、株式会社ビズリーチに入社し、ビズリーチ事業本部長、リクルーティングプラットフォーム統括本部長などを歴任。2020年2月、現職に就任。

※所属・役職等は制作時点のものとなります

採用体制の確立への取り組み

資生堂は、コスメティクスを中心に事業を展開し創立150周年を迎えました。

人材採用は新卒を中心に進めてきましたが、この10年ほどで、キャリア採用ニーズが一気に高まりを見せました。本セミナーでは、とくに大きな変革があった2014年以降の取り組みをご紹介したいと思います。

2020年に向けた新たなビジョンを掲げた2014年、売り上げ構成比率の多くをグローバルが占めるようになり、海外に向けてジャパニーズブランドを広げていくための人材が必要になりました。

そこで人事部では、グローバルでタレントマネジメントの評価ができる制度設計、国内管理職等級の導入などを進めていきました。

Step and Progress of Human Resources

2016年に私が資生堂に入社してからは、「3本の矢」の取り組みをスタートさせました。

Step and Progress of Talent Acquisition

採用体制の確立に向けて、入社後にまず確認したのは、以下でした。

  • 十分に採用費用が使えるのか
  • キャリア採用ができるほど、現場担当者はビジネスを理解できているか
  • 今のHRチームの知見でキャリア採用は増せるか
  • 頼れる外部パートナーのネットワークを有しているか
  • 最低限のHR Techを採用チームが持てているか
  • 入社後のフォロー体制ができているか

しかし、これらに対する答えはほとんどがノーであり、環境が未整備なのが実情でした。資生堂は当時「中途採用はやっていない」と社内外に発信しており、リクルーティングマーケティングはほぼありませんでした。

そもそも、なぜキャリア採用が必要なのか。自分なりに、採用コンセプトとその目的、採用タイミング、現場における人材の位置づけ、定着支援するだけの体制があるかなどを整理していきました。

なぜキャリア採用かの確認

そこで明確にしたのが、資生堂におけるキャリア採用の3原則です。

キャリア採用を進める前提には、

  • 経営ビジョンの実現に向け、組織能力向上にインパクトのある人材を確保すること
  • 早期の組織能力向上に向け、グローバルレベルで人材採用を強化すること

があります。

そのために、

  1. 高い専門性を持ち、その専門性を他者に移転するための人材育成能力・組織ケイパビリティ構築能力を保有する
  2. 資生堂の成長に貢献したいという強い志を持ち、周囲にポジティブな刺激を与え、変化を推進できる
  3. 組織や人に影響力を持つ管理職層の採用を原則とする

ことを原則として明文化しました。専門性があることに加え、周りに波及させられる管理職クラスの人材が必要でした。

資生堂におけるキャリア採用の原則
Preparetion

キャリア採用の体制立ち上げに向けて強化したのは、採用要件の「ポスティング」と、人材を発掘する「ソーシング+スクリーニング」、候補者への動機づけ「オファー+アトラクト」です。

そして、

  • プロセスとツールの整備
  • 組織の役割分担づくり
  • 対外的な発信チャネル選定とコンテンツ磨き
  • パートナー各社との連携

という、大きく4つの観点で体制づくりを進めていきました。

採用体制は2016年から徐々に人数を増やし、19年に向けて大きく拡大。順調に伸ばせた理由として、3年間の具体的なチャレンジがありました。

まず行ったのが、ドキュメントとルールの整備です。

ドキュメントとルールの整備

募集要項の具体化では、仕事内容(ジョブディスクリプション)をハイアリングマネージャー自身で作成してもらうまでに時間はかかりましたが、具体的に埋めやすい書式を整え、浸透させていきました。候補者目線のマーケット水準に照らした、給与レンジの設定も意識しました。

面接、書類選考では、「候補者に選ばれるのではなく、こちらが選ぶ」という意識を持っている面接担当者がまだまだいました。資生堂の企業イメージ悪化のリスクにつながるため、面接のガイドラインを策定。ハイアリングマネージャーには時間をかけて、「候補者側に寄り添う」面接姿勢について納得してもらうようにしてきました。

採用ポジションが決まった際は、ハイアリングマネージャーとのキックオフミーティングを必ず実施。情報収集を徹底できるようになりました。

採用ツールの導入とプロセス設計では、

  • 目的を持ったツールの導入(ATS、スカウト、RMK等)
  • オファー提示のための公平な設定プロセス
  • ツール利用イメージに沿った業務プロセスとシステムプロセスの統合
  • 採用情報が最低限エクセルでダッシュボード化できること
  • インタビューガイドラインの設定
  • ダイレクトリーチのための準備
  • 募集ポジション情報の訴求ポイント明確化

をそれぞれ進めていきました。

採用ツールの導入は、ツールだけ入れても使いきれないで終ってしまう一方、ツールがなくルールだけ固めてしまっては、稼働すべきことだけ膨らんでいきます。採用組織が疲弊しないためにも、並行して進めていくことが重要だと考えました。

採用活動を効果的に進めるために

採用ツール(HRMOS)を導入したうえで、ようやく、組織体制の変革を進めていきました。

「選考プロセスの責任者はハイアリングマネージャーである」としたうえで、プロセスに応じた役割分担として、採用部門(Recruiting)とそうではない部分(Enabling)で役割を完全に分けることにしました。

組織の役割分担:採用チームの組織変更

役割分担として、採用プロセスを具体化し、採用側の専門性が求められる部分とそれ以外のプロセス分担を徹底。結果として、母集団形成(タレントアクイジション)の時間をかなり確保できるようになりました。

リクルーティングマーケター(採用担当者)、リクルーティングコーディネーター、タレントパートナー(HRBP)、ハイアリングマネージャーとそれぞれの責任や優先順位を明確にすると、「この人がこの採用プロセスに関与していない」と具体的な指摘が生まれるようになり、各ポジションが責任を持って採用プロセスにかかわるようになりました。

「ドキュメント・ルール整備」「採用ツール導入」「タレントパートナー体制導入と、3本の矢を段階的に進めてきましたが、どれかだけやっていてもうまくはいきません。

仕組みづくりから時間をかけて動いていったことで、組織体制まで動かしていけたのだと思っています。

採用体制強化のためには、「プロセスとツールの整備」「組織の役割分担づくり」が整っていることが重要です。それにより、次のフェーズである対外的なコンテンツ磨きに時間を割けるようになり、ビズリーチさんを含めたパートナー各社との連携も深めていけるでしょう。

採用体制を整えるには、

  • 統一されたシンプルな手順
  • 柔軟なオファー提示の実現
  • 最大限に省力化された採用管理システム(ATS)
  • 面接官のマインドセット
  • 見たい情報へのアクセス
  • 役割分担による効率化

の6つが組み合わさることが大切です。

そのうえで、会社全体の方針として、

  • 受け入れ組織の体制・環境が経営陣のコミットメントで担保されていること
  • 自社基準ではなくマーケット基準で公正に設定して期待とのアンバランスをさけること
  • 専門性の高いポジション採用であっても、入社後の成長の選択肢が期待できること
  • プロセスやツール、ファシリティーも内向きではなく、可能な限り柔軟なものとなっていること

を追求することが必要だと考えています。

まとめ

Q&A

セミナー後半は視聴者からの質問にお答えしました。

Q
キャリア採用体制を作っていくうえで、旧来の会社の考え方や風土を変えていかなければならないこともあったのでは。具体的にどのような取り組みをされたのでしょうか。
A

それまでの考え方、風土で変えたいと思っているハイアリングマネージャーもいるので、そういった人たちに、「志を持って一緒に変えていこう」というメッセージを伝えるようにしました。

またエージェントや候補者にも「資生堂の変えてほしいところがあるから来てほしいのです」とお伝えし、その前提で面接の申し送りを行うことで、ハイアリングマネージャーも意識して面接に臨めていたと思います。

ビジネス環境が変わっていて組織変革を必要とされるフェーズでもあったので、それもあって少しずつ変わっていったと思います。

Q
150年の歴史がある資生堂の基準からすると、選考を社内の基準から外部基準(候補者目線)に変化させるなかで、苦労はありましたか。
A

抵抗感という点では、人事の中からの方が強かったですね。新卒採用でやっていないことをキャリア採用でやっていたりして、それらを一つ一つ変えていくことが大変でした。採用するまでのそれぞれ時間軸が異なるため、粘り強く説得していきました。

この点は、ハイアリングマネージャー側の方が協力者でした。人事制度は会社を運営するためのもので、人事のものではないのでそういった考えで説得していきました。

Q
現場に給与レンジや役職面で説得するのには相当な時間がかかったのでは。現場を説得するためにどのようなアクションを取られたのでしょうか。
A

給与設定をする人事側のルールで同意を取ることが大変でした。あまり汎用的な回答ではないですが、上司に「マーケットプライスに対して柔軟性を持ちましょう」「年齢で給料設定することはやめましょう」と、会社のジョブ型雇用への流れに沿って伝えていきました。

Q
「ドキュメントとルールの事前準備が重要」と感じました。何をどこまで準備すべきか、リストはどのように作っていったのでしょうか。
A

ベースにあったのは、自分自身の入社時の違和感で、候補者に安心して入社してもらうために何が必要かを自分の中で整理してリスト化していきました。基本的には、採用チームが楽になるために社内稟議のプロセスを最小化するなど、できるだけシンプルにしていくことが前提にありました。

ルールはたくさん示すと現場からも抵抗があるので、一つ一つ小出しにしながら「今年はここまでやりたいです」と小さなゴール設定で進めていきました。

Q
外部人材の採用と社内人材育成とのバランスをどのようにとっていますか。外部人材採用後も、オンボーディングや教育をどのように設計されていますか。
A

入社後に、「活躍できる環境を用意されていないから」などと言われることがないように、オンボーディングには非常に力を入れました。

オンボーディング後のオリエンテーションをきちんとして基礎知識をつけてから現場配属をしています。受け入れ側の部門までは関与できていないが、資生堂独自の仕組みの理解、カルチャーを理解してもらったうえで現場に入れるようにしています。

外部人材も社内人材も一緒に「経営を作っていく」ことに変わりはないので、入社後の育成には何も違いがありません。

Q
もともとあったジョブディスクリプションはどんなところが良くなかったのでしょうか。
A

例えば「ブランドマーケティング」という職種一つとっても、商品開発からコミュニケーションからEC施策立案から、とさまざまな業務があります。

それを大きく「ブランドマーケティング」と書かれていたので、そもそも業務内容はどういう領域を担当するのか。以前の書き方では自分もわかりませんでした。

どうしても作成してくれない場合は、参考のジョブディスクリプションを示して「このように書いてみてください」とだんだんとブラッシュアップしていきました。具体的に何をやってもらいたいのか、どんな責務を担い、入ってもらうことで何をグロースさせていけるのかを設計していきました。

入社後に活躍してもらう場はどういう場なのかが具体的に書かれていることが、候補者への魅力づけになると考えています。

Q
採用の流れを整えて、役割分担することで、メンバーの人数が増えていくかと思います。どのようにチーム全体のメンバー構成や役割などを決めていきましたか。
A

1人増やすことで、何ができるようになるかを上司が理解してくれていました。

どこがボトルネックになっているかを見直したとき、最初は私自身がボトルネックだったので、私の業務を分けていきました。

1人でさばけるポジションは40ポジションくらいだと思うので、1人当たりの受け持ち人数を決めて、あとは「えいや」と分担していきました。

1人目増やすときは、人事内からリソースを割いてもらえず、部門からのリソースをもらいました。最初の1人がかなりしっかり結果を出してくれたため、人を増やしていくことに人事内の納得感が高まりましたね。

Q
採用ボリュームに対して適切な採用チームの人数&体制についてお考えを教えていただけますか。
A

人材紹介会社などと一緒に歩んでいく前提に立つと、シニアなリクルーターは40~50ポジション、ジュニアなリクルーターは20~30ポジションが最大では。そこはある程度、設定したうえで、一人一人のリクルーターの面接での候補者の通過率などを見るために、採用管理システム(ATS)があると便利かなと思っています。

リクルーターマーケターが1人、コーディネーターが3人、リクルーターが4人、新卒採用担当が2人、合計10人でやっています。

Q
役割分担は資生堂に合わせたものなのか、もしくは辻󠄀田さんの中で何か最適解があるのでしょうか。資生堂ならではの特徴はあると思いますか。
A

私の意見がかなり反映されていると思います。データの活用も資生堂ならではの特徴が出せるのも、これからだと思います。

Q
「採用ツールの導入とプロセス設計」の部分で、「ダイレクトリーチのための準備」とありましたが、どのような準備をして、どのようなツールやサービスを使用していますか。
A

リクルーティングを行っている側のマインドセットとして、「資生堂を営業してハントしにいくのですよ」と納得して取り組んでもらうことをしつつ、ビズリーチやほかのダイレクトリクルーティングサービスを使って、ソフト面とハード面を整えて「言い訳できない」状態を作るのが大事かなと思います。

ポジションによっては、ジョブボード(求職サイト)を使うこともあります。

Q
タレントパートナーからHRBPに引き継ぐところはどれくらいの期間でどのようにされていますか。
A

「90日間伴走します」としていますが、90日丸々使う方もいれば、30日くらいからHRBPが引き取ってしまうような方もいます。

Q
これまで新卒採用文化が主流だったところにキャリア採用を促進してこられて、社内全体の文化、雰囲気などにはどのような変化がありましたか。
A

試行錯誤しながら全社へ発信してきたのですが、各部門において専門性を持った方が入り、動きやすい環境はだんだんできあがってきたかなと思っています。キャリア採用人材が増えてきたという背景もあり、グローバルで勝っていこうという目的を共通で持っているのも大きいと思います。

グローバルコミュニケーションで頼らざるを得ない状況など、その方の専門性が必要とされる現場もあり、それぞれが力を発揮するカルチャーができていますね。

最後に視聴者の皆様へメッセージをいただきました。

辻󠄀田 英俊 氏
辻󠄀田 英俊 氏

「これまでの取り組みをご紹介しながら、地味なことをやってきたなと改めて思っています。DXなどさまざまな新しいことが言われていますが、動きたい人が、動きたいと思ってもらえる環境を作ることが大事だなと思っています。引き続き、地道なことに取り組んでいきたいと思います」

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著者プロフィール田中瑠子(たなか・るみ)

神奈川県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。株式会社リクルートで広告営業、幻冬舎ルネッサンスでの書籍編集者を経てフリーランスに。職人からアスリート、ビジネスパーソンまで多くの人物インタビューを手がける。取材・執筆業の傍ら、週末はチアダンスインストラクターとして活動している。