【イベントレポート】NECが語る119年目の大改革とその裏側

【イベントレポート】NECが語る119年目の大改革とその裏側

2022年1月13日、株式会社ビズリーチは「NECが語る119年目の大改革とその裏側」と題したWebセミナーを開催しました。

日本電気株式会社カルチャー変革本部長の森田健様にご登壇いただき、具体的な改革内容や社内浸透のメソッドをお話しいただきました。モデレーターは、株式会社ビズリーチ取締役副社長の酒井哲也が務めました。

森田 健氏

登壇者プロフィール森田 健氏

日本電気株式会社
カルチャー変革本部長

1995年NEC入社後、地方拠点営業、業種ソリューション営業を経て、2012年より経営企画本部にて中期経営計画推進、企業変革を担当。2018年にカルチャー変革本部を立ち上げ、本部長代理として全社変革イニシアチブ「Project RISE」を推進。その後デジタルヘルスケアの新事業立ち上げに責任者として参画。

2021年4月、カルチャー変革本部長として全社変革に再登板。Project RISE 2.0で、現場改革と働き方改革(Smart Work 2.0)を担当し、機敏で強い現場づくりと、社員の働きがい醸成に向けて日々試行錯誤中。
酒井 哲也氏

モデレータープロフィール酒井 哲也氏

株式会社ビズリーチ 代表取締役社長 ビズリーチ事業部 事業部長

2003年、慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社日本スポーツビジョンに入社。その後、株式会社リクルートキャリアで営業、事業開発を経て、中途採用領域の営業部門長などを務める。2015年11月、株式会社ビズリーチに入社し、ビズリーチ事業本部長、リクルーティングプラットフォーム統括本部長などを歴任。2020年2月、現職に就任。

※所属・役職等は制作時点のものとなります

NECの大改革「Project RISE」の背景

NECは1899年に日本初の外資系企業として誕生し、「Better Products, Better Service」というグループ創業以来のDNAを受け継いできました。

NECは長く製造業の会社として、半導体やパソコン、携帯電話事業を手掛け、半導体では世界ナンバーワンになった時代もありました。

売り上げは最大5.4兆円まで拡大しましたが、グローバルレベルでの成長が難しく、2000年代初頭から失速していきました。そこから、プロダクト事業からの撤退を図り、コンサルティングやソフトウエアなどBtoB事業に転換。売り上げ自体は約3兆円とスリムになりましたが、利益率が上がり、健全な財務状況へと改善されています。

NECの大改革「Project RISE」の背景

ただ、そのプロセスのなかで、経営陣と社員の間に距離が生まれ、「大企業病」といわれるような組織が硬直していく課題がありました。自分たちで立てた中期経営計画を1年で見直すという、経営上の失態もあり、「NECは目標を達成できない会社」という社外評価により、社員のモチベーションも下がっていました。

そこで、2018年に策定した2020中期経営計画で打ち立てたのが、「実行力の改革」でした。

2020中期経営計画(2018年策定)

NECの事業戦略の見直しや収益構造の改革をどのように行おうとしているのか、トップ自らが「社員の声と徹底的に向き合おう」とグループ社員約1万人との「2020中期経営計画ダイアログセッション」を実施しました。

トップが社員と向き合って一生懸命語るようになると、社員側からも率直な意見が出てくるようになります。

しかし、社員から出てきた声は厳しいものでした。

「無駄な仕事が多い」「過剰プロセスでスピードが遅い」「人事評価がフェアじゃない」「内向き文化」「時代遅れ」「責任の所在が不明確」など。

社員から経営陣に意見を伝えるカルチャーはそれまでのNECになかったからこそ、これらの声に強い危機感を抱いた社長が、NECの大改革プロジェクトへと動き始めました。

そこで立ち上がったのが「Project RISE」です。

  • 現場の声を聞き、グループ全体11万人のベクトルを合わせる
  • 社員の成長を促す人事評価制度とスマートな働き方を実践

以上をゴールに変革活動が始まりました。

Project RISE

まず、2018年4月にカルチャー変革本部が設立され、改革のテーマを「人事制度改革」「コミュニケーション改革」「働き方改革~Smart Work~」の3つに設定。カルチャー変革本部のメンバー約10人に加え「RISE Change Agents」という社内横断の変革プロジェクトメンバーを集めていきました。

RISE Change Agents

一気に変革の波を起こすには、現場にわれわれと志を同じくしたメンバーがいないと広がりません。多くの社員が経営者目線を持ち、会社変革の中心で活動することを、NECの財産にしていきたいと考えました。

人事制度改革

最初に取り組んだことは「Code of Values」(行動基準)の策定でした。

行動基準は、以前も策定したことがあったのですがまったく浸透しなかった、という苦い思い出があります。目的が不明確だったのだと思います。今回は新たに導入する評価制度に初めから組み込む前提で策定したこともあり、以前に比べると浸透が進んでいると思います。

人事制度改革

変革するためには、モノカルチャーでは変わらないので、外部人材採用もどんどん進めていきました。20人中18人が外部から採用した人材というキャリア採用専門の部署「タレントアクイジション」も設けています。

社内への改革浸透のために「挑戦する人の、NEC。」というポスター(下記)を社内の至るところに貼りました。視覚化することで変化を感じられるような、右脳に訴えかけるようなものができたと思っています。

挑戦する人の、NEC。

コミュニケーション改革

社内でのコミュニケーションもインタラクティブなものにどんどん変えていきました。

なぜ変革が必要なのかをきちんと伝えてディスカッションすることが、一見面倒なようでもっともスムーズな変化をもたらすと感じているからです。

NECには、社内で大切にしている「NEC Way」があります。Project RISEでは、これを整理し、行動指針も盛り込んだうえで、みんなの頭に自然と入っている状態を作ろうと考えました。

そこで行ったのが、「NEC Way」と「自分の価値観や志(My Way)」をマッチングさせて考えや行動に反映させていくというディスカッションです。トップから姿勢を示そうと、社長が役員へ、役員が部門トップへプレゼンテーションし、次は部門トップからマネージャー層へと、一階層ずつ順に実施していきました。

NEC Way

以前のNECは「上司の価値観や思いなんて聞いたことがなかった」という組織でした。しかし今では社長以下、全員が「My Way」をディスカッションできる組織になり、「NEC Way」の理解度を99%まで高められました。

NEC Wayの浸透

オンラインでもインタラクティブなコミュニケーションを進めています。

Town Hall Meetingには毎月1万人ほどが参加し、従業員と社長とが直接対話をすることで、経営を身近に感じてもらう取り組みを行っています。

創立記念日には、「NEC Way Day」というイベントを実施しますが、約3万人の参加があり、社員にとって、社長が身近な存在になっていることを感じています。

コミュニケーション改革│2021年度からの取り組み

経営陣と社員の対話を深めるうえで、サーベイも実施しています。

年に1回実施のエンゲージメントサーベイと、年に4回実施するパルスサーベイがあり、20問のライトなものを採用しています。

2018年10月に始めたときは、サーベイへの参加率は26%と絶望的な数字でした。しかし、継続した結果2021年6月には参加率81%まで上昇。「サーベイに答えても何も変わらないだろう」と思っていた社員が、「声を上げれば組織が変わっていく」と思い始めてくれた証拠なのかなと思っています。

なお、サーベイの結果はすべてWebで公開しています。あまりよくない結果が出た部署も全社に公開されるので、「もっといい職場になるように頑張ろう」と自助努力の姿勢が出てくるのではと、「見える化」を進めています。

コミュニケーション改革│サーベイによる経営と社員の対話

働き方改革

NECの働き方改革(Smart Work)は、「会社の成長」と「社員の成長と幸せ」をリンクさせようというコンセプトで進めてきました。

働き方改革(Smart Work)のコンセプト

新型コロナウイルス感染症の拡大前から、コアタイムなしのフレックスタイム制度「スーパーフレックス」や、コワーキングスペース・フリーアドレスなどのオフィス改革、テレワーク活用や承認の電子化、ドレスコードフリーを進めてきました。

オフィス改革Now

IT環境も、かつてはオンプレミスベースでしたが、フルクラウド環境をベースにした「デジタルワークプレイス」を稼働。コロナ禍の状況下でも業務継続に支障が出ませんでした。

デジタルワークプレイス本格稼働(2019年12月)

変革の現在位置と次のステップ

では、変革を進めてきた成果としてNECは何を成し遂げたのか。

業績に影響を与えられた点で、時価総額が約1兆円上昇したことは、一つの成果といえるかもしれません。ただ、競合他社との比較では、まだまだ道半ば。復活を遂げたNECにとって、これからが本当の勝負だと考えています。

Project RISEの成果

変革の現在位置として、私たちは3年間「Un-freeze」の期間を過ごしてきました。

サーベイの回答率が26%だった2018年時では、まず取り組むべきは経営層と社員との関係構築でした。信頼し合えていない状況で評価制度を導入しても受け入れられず機能しません。

今ようやく「Un-freeze」が終わり、組織の硬直状態から脱したこれからが「Change」、そして「Re-freeze」の時期に入っていくのだと思っています。

変革の現在位置

会社の抜本的な改革を進めている今、一度作った仕組みも頻繁に変えていかなければいけなくなるでしょう。アジリティー(しなやかさ)とレジリエンス(強さ)を新たなコンセプトに、社員を会社の資産ととらえて進んでいきたいと考えています。

RISE2.0
基本コンセプト:Resilience×Agility

これからのNECはどうなっていくのか

「Withコロナ」時代において、社員のメンタルウェルネスやコミュニケーション面でさまざまな課題が出てきています。NEC全体では約42%がリモートワークを続けていますが、若年層の仕事の充実度がどんどん下がっているという課題もあり、どう解決していくかがこれからのテーマです。

このコロナ禍による大きな変化を経て、2030年ごろには、企業と個人は対等な関係になっていくでしょう。そこで、職場環境などの働きやすさだけではなく「働きがい」をあげていくことが、会社の成長、個人の成長のためには欠かせないと考えています。

Smart Work 2.0で目指すこと

NECが掲げるこれからの働き方「Smart Work 2.0」では、働きがいは、信頼、挑戦、成長、誇りという階段を上がっていくことで目指せるものだと考えています。

NECが考える働きがい

サーベイ結果をもとに、働きがいを因果関係分析するとどうなるのかを調べており、「仕事の充実感」と相関があるのは「評価の納得性」だというデータ分析結果が出ています。評価に納得性がなければ、他にどんな制度があっても意味がないということです。

これからNECは、社員と会社の関係性をどんどん対等にしていきます。

会社が決めたことを社員が守るのではなく、社員一人一人が、自分たちで働き方やキャリアを築いていけるような組織を作っていくのです。

働きがいのベースとなる、社員と会社の新たな関係

そのためには、働き方においても、ハイブリッドワークで生産性を上げるためのデザインが欠かせません。そこで、NECの行動指針を体現する3つのワークスタイルを提案、実践に向けて動いています。

一つが「ロケーションフリー」で、どこで働けばもっとも生産性が高まるかを自分で選び、デザインしていくというものです。そのために、遠隔地オフィスやワーケーションのあり方も考えていく必要があります。

オフィスのあり方もガラッと変わっていきます。オフィスはただ働く場ではなく、「コミュニケーション・ハブ」空間として社内外の人と交わる場であってほしい。オフィス自体がディスカッションルームとなるように、今後5年でどんどん変えていく予定です。

また、本社11階をカフェにし、仕事をしたり対話をしたりと、食をともなう「共創空間」にしようとしています。

Post COVIT-19の3つのワークスタイル
ロケーションフリー
新たなオフィスのあり方

NECも最初はベンチャー企業であり、全社員がイノベーターでした。

しかし、事業成長に伴い、イノベーターの指示を受けて動く社員が増えていきました。組織においてそれは一般的な成長軌道ではありますが、だんだんと「イノベーターのいうことを聞く人」ばかりの会社になってしまったのです。

もう一度イノベーションを起こすためには、初心に帰り全社員がイノベーターとなって行動を起こす必要があります。NECはまさに、そのための改革に全社員一丸となって取り組んでいるのです。

Q&Aセッション

セミナー後半には、視聴者から寄せられた質問にお答えしました。

Q
全盛期にBtoC事業へ広がりを見せたNECが、今改めてBtoB事業に立ち戻る狙いとは?
A

コモディティー化(市場参入時に、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になること)が進み、自分たちだけでは事業を続けられなくなってしまいました。

BtoB事業は昔から堅調であり、そちらに戻って一度事業を安定化させる必要がありました。企業としての体力をつけるために、強みに立ち返ったということです。

Q
大改革に着手した最初の一人は経営層でしたか? 初期段階での動き出しについて教えてください。
A

最初の一人は社長でした。

組織変革の必要性に対して、社長以外の社員が悩んでいるという企業は多いと思います。ただ、会社を変えるのは社長の仕事であり、社長が動かないと意味がないと思っています。

「経営層」ではないですね。まず社長が動き始めたことが大きかったですね。

Q
組織改革・コミュニケーション改革には、経営トップの改革から始めることが重要だと考えますが、どのような改革がありましたか?
A

最初は反省からスタートしました。

自分の責任でNECはこういう組織になってしまった…と、トップが自分の言葉で語りました。振り返りには当然反省も入ってきます。そこをきちんと伝えずに「制度を導入します」などとやろうとしても、変化の土台となる「Un-freeze」が終わっていないのでうまく進まないと思います。

すぐに反省というプロセスに進めたのは、前社長の柔軟な性格もあったでしょう。社長として1年で中期経営計画を撤回するという状況だったので、退路を断ち、従業員の立場になって動けたのかもしれません。 経営陣と従業員の信頼関係の再構築には、経営トップから動くのが大事です。NECは役員の契約形態を1年契約に変えることをまず行ってから、従業員の制度改革を進めていきました。

Q
改革に反発する社員にはどのように対応されましたか?
A

反発する社員はいますが、NECには素直な社員も多いのです。反発する理由は、「なぜこれをやるのか」という情報がオープンになっていなかったことにありました。

突然指示だけを伝えるのではなく、なぜ大事なのかを議論し、何時間もかけて丁寧にコミュニケーションをとると、最後は納得して、やるしかないというマインドになっていきます。

Q
サーベイ結果をオープンにするには社内で抵抗もあったのでは?
A

反発などが出るより先に出してしまった、というのが実際のところです。トップが改革にコミットしていたからこそできたことかもしれません。

2~3回目くらいまで、何も言わずにオープンにしていくと、「出るのであれば、あんまり変な結果は出せないよね」と部署内で改善のための議論が生まれたり、いいサーベイ結果の部門に意見を聞いてみようといった行動につながったりしました。

Q
パルスサーベイの取り組み結果から、実際に施策や制度に落とし込んだ事例があれば教えてください。
A

サーベイ結果のテキストマイニングで、どういうキーワードが一番出てきているかは、コロナ禍の状況下で特に力を入れました。

若手社員ほど評価を気にかけていると分かれば、そのためのケアを行うなど、階層ごとの施策に落とし込んでいきました。

Q
改革のための外部人材採用はどのような方法を活用されましたか?
A

20人のタレントアクイジションチームを持ったのは大きかったです。中途採用を進めていく、という覚悟が重要だったと思います。

Q
中途入社者の入社後の反応はいかがですか?
A

オンボーディングセッションに参加したメンバーからは、その後のアンケートで「変革していると聞いて入りましたが、本当なんですね」と書かれることもあります。本当に、ここまでちゃんとやっているんだ、という反応が多いです。

離職率においては、コロナ禍の影響で、人間関係ができていない社員が離職するケースもあるので、きちんとフォローしなければいけないと考えています。ただ、相対的に中途入社者の満足度は高まっているのではと思っています。

Q
外部採用とともに、新卒採用のスキームは変えましたか?
A

変えていません。今後は、外部採用のほうが新卒採用より増えるという変化が起こるでしょう。新卒中心の採用から移行していきたいと考えています。

Q
「NEC Way」と「My Way」をマッチングさせるために具体的にどのようなアプローチをされたのですか?
A

役員の合宿で、みんなが自分の「My Way」を絵に描くなど、暗黙知を形式知にしていきました。それを執行役員や事業部長に向けてプレゼンテーションを行い、さらに社員にも広げていきました。

「自分の上司のパーソナルな志を聞いたことがなかった」という人が結構多く、いいコミュニケーションにつながりました。また、「NEC Way」と「My Way」がリンクすることによって「NEC Way」が浸透していったのだと思います。

Q
「Un-freeze」フェーズにおいて、トップの思いの次に大切なものを挙げるとすると何ですか?
A

制度などのハードではなく、ソフト面であり、従業員のマインドセットが重要だと思います。

Q
変革はトップダウンで行われたとお話を伺いましたが、途中(中間管理職)で活動がストップすることはなかったのでしょうか? 変革の実行率を高めるための工夫があれば教えてください。
A

バリューや「NEC Way」を浸透させていくときは、カスケードダウンが大事ですが、変革を一気に進める時は、トップと従業員が直接対話することが重要だと思います。あえて中間管理職を飛ばすのです。

カスケード式で行う部分とトップと直接対話する部分を組み合わせることが重要だと思います。

講演の最後に森田様からメッセージをいただきました。

森田 健 氏
森田 健 氏

私たちの現在地点はまだまだ3合目くらいです。ただ、3合目まで登れた自信が生まれてきているので、世の中に対してもう一度、テクノロジーでイノベーションを起こせるような会社になっていきたいです。

全社員一丸となって進んでいきますので、これからのNECに期待していてください。

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著者プロフィール田中瑠子(たなか・るみ)

神奈川県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。株式会社リクルートで広告営業、幻冬舎ルネッサンスでの書籍編集者を経てフリーランスに。職人からアスリート、ビジネスパーソンまで多くの人物インタビューを手がける。取材・執筆業の傍ら、週末はチアダンスインストラクターとして活動している。