強い組織やチームを作るために求められるチームビルディング。新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワークが働き方の主流になりつつある現在だからこそ、新しい働き方に対応したチームビルディング研修が模索されています。
そこで今回の記事では、チームビルディング研修に有効な手段のひとつとしてゲームを取り入れた実践法を紹介します。
そもそもチームビルディングとは
チームビルディングとはメンバーのスキルを引き出し、成果をあげられるチームを作り上げる方法です。
1人では実現できない仕事も、個人のスキルや経験を持ち寄ることにより、会社やチーム全体として成し遂げることができます。そのためには、チームに属するメンバーのことをよく知る必要があり、コミュニケーションを活性化しなければなりません。
しかし、具体的にどのようなステップでチームビルディングが実現されるのかが分からないと、適切な対処はできません。そこで役立つのが、タックマンモデルとよばれる考え方です。

チームビルディングにおいて重要なタックマンモデル
チームビルディングを実践するうえで役立つタックマンモデルとは、組織の形成から成長までを5つの段階に定義したものです。ここでは、それぞれのステップごとに詳しく解説します。
形成期
形成期とは、チームが組織されて間もない状態です。初対面のメンバー同士でコミュニケーションもままならず、チームをまとめ上げるためのリーダーが必要になります。
混乱期
チーム内のメンバー同士での意見が衝突し、組織全体が混乱に陥りやすい時期です。リーダーにとっては混乱期のチームをまとめ上げるために大変な苦労を強いられることも多いですが、混乱期を乗り越えたチームは結束が強まり、強い組織に成長していきます。
統一期
統一期ではメンバーそれぞれの役割が明確化され、自分自身のスキルや経験を生かして力が発揮できるようになります。同時に、チーム全体の目標やゴールを共有することで、組織の一体感が生まれる段階といえます。
機能期
機能期になるとチームとしての成果が出始め、組織としても成熟した段階となります。メンバーそれぞれが自律的に判断して動けるようになり、リーダーが不在のときでもチームが機能するようになります。
散会期
プロジェクトを完遂し、目標が達成されるとチームは解散することとなります。メンバーはそれぞれの通常業務に戻ったり、次の新たなプロジェクトの開始に合わせてチームが招集されたりすることもあります。
テレワークが中心の今こそチームビルディング研修が重要
テレワークの機会が増えたことにより、チームビルディングに注目する企業が増えています。
テレワークで起こりがちな問題を紹介するとともに、なぜチームビルディング研修が有効なのかについても詳しく解説します。
テレワークで起こりがちなコミュニケーション課題
テレワークでは、メンバー同士が物理的に離れた場所で仕事を行うため、相手の状況が見えづらいものです。そのため、業務に必要な内容であっても質問しづらくなったり、仕事の進捗状況が共有しづらくなったりすることもあります。
結果としてコミュニケーションが取りづらくなることで対話が不足し、生産性が著しく低下したり、重大なミスにつながったりするおそれもあるのです。
生産性や業務効率の向上にはチームビルディングが必要
テレワークでも生産性を低下させることなく業務効率を向上させるためには、チームビルディング研修を実施してコミュニケーションを活性化させる必要があります。
実際にテレワークを実施するなかで、社員がコミュニケーションで悩んでいることを相談し合うと、「声を掛けてよいタイミングなのか分からなかった」など、同じ悩みを抱えている社員も多いことが分かります。
お互いにとって仕事がしやすいよう、たとえば「優先度の低い質問はチャットで、緊急の用件は電話で確認する」など、コミュニケーションのルールを検討することが重要です。そして、チームとしての方針を検討する場合、チームビルディングが不可欠となります。
チームビルディング研修の効果的な方法
チームビルディングは日常業務を行いながら進めることも可能ですが、効果を最大化するためにはチームビルディングに特化した研修を行うのがおすすめです。
チームビルディング研修においては、たとえばスポーツなどのアクティビティを取り入れたり、イベントに参加したりする方法も有効です。普段の業務では見せない一面を知る機会にもなり、その人の素の部分を知れます。
しかし、スポーツやアクティビティといったアウトドアでの活動が苦手な社員にとっては逆効果であり、そもそも研修に参加してくれない可能性も考えられます。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響によってテレワークが一般化している現在、スポーツなどは実施すること自体が難しい場合もあるでしょう。
そこで、誰もが手軽に参加でき、オンラインの環境下でも活用できる手法として、ゲームを取り入れたチームビルディング研修が注目されています。
チームビルディングにゲームが有効な理由
チームビルディング研修にゲームを取り入れることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。今回は5つのポイントを紹介します。
参加者が楽しめる
ゲームを取り入れる最大のメリットは、仕事から離れ、楽しみながらチームビルディングを学べることです。座学研修などで形式的な内容が多いと、参加者は集中力が維持できずチームビルディングの内容が頭に入ってこなくなります。しかし、ゲームを取り入れることで参加者は無意識のうちにチームビルディングの本質を学べ、充実感も得られます。
そのため、研修を企画する段階においても、参加者が本気で楽しめるような内容を検討する必要があります。
参加者の個性を把握しやすい
ゲームに没頭している間は、その人の個性や素の部分が出やすくなります。初対面の相手に対しては打ち解けるまで時間を要することも多いものですが、ゲームを通して交流することにより、その人の個性や性格を短時間で把握できます。
コミュニケーションがとりやすい
初対面の人とコミュニケーションをとって打ち解けるには、お互いの共通項から話題を広げていくことが多いものです。
チーム内で「ゲームをクリアする」という共通の目標ができると、初対面であっても共通項ができてコミュニケーションがとりやすくなります。
チームの結束力が強まる
チーム対抗でのゲームに取り組むと、その瞬間にチーム内に仲間意識が醸成され、結束力が強まります。チームで一体となって同じミッションに取り組むことで、個人の力だけでは成し得ない大きな結果が得られます。
低コストで実施できる
手軽に実施できるゲームは、スポーツやアクティビティのように大規模な会場を手配する必要がなく、会場まで足を運ぶ手間が不要であることも大きなポイントといえます。また、大きな会場を手配する必要がないということは、会場を借りる費用や現地までの交通費などのコスト面においてもメリットがあり、限られた予算内でも効果的なチームビルディング研修を行えます。
チームビルディングは一度開催して終わりではなく、その後も定期的に開催することで効果が高まるため、低コストで実施できるというのは重要なポイントになります。
オンラインでできる チームビルディング研修に取り入れたいゲーム5選
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、オンラインでの研修が注目されています。オンライン環境下でもチームビルディングに役立つゲームにはどのようなものがあるのでしょうか。今回は5つのゲームを紹介します。
マーダーミステリー
マーダーミステリーとは、推理小説に登場するキャラクターになりきり、議論を進めていくゲームです。ゲームに参加する人には、それぞれ設定書が渡されます。このなかにはキャラクターの性格や行動が記されており、お互いが議論しながら事件の真相に迫っていきます。
ただし、なかには事件とは直接関係のないミッションもあり、簡単に犯人を割り出すことはできません。犯人と誰がつながっているのか、関係性なども含めて事件の真相を暴けるかがカギとなります。
マーダーミステリーでは、相手から情報を引き出す力や、要点を絞って端的に伝える力が試され、チームビルディングに不可欠なコミュニケーションスキルを鍛えられます。
似顔絵当てゲーム
チーム内のメンバー数人が任意の人の似顔絵を描き、誰の似顔絵なのかを当てるゲームです。たとえば5人のチームであれば2人が似顔絵を描き、残りの3人が誰を描いているのかを当て、正解数が多いチームが勝利となります。
絵心がなくてもその人の特徴を正確に描くことで伝わることも多く、チーム内のメンバーは絵の特徴から推理する力も求められます。
NASAゲーム(合意形成ゲーム)
月に不時着したという想定のもと、15個のアイテムの優先順位を話し合いによって決め、NASAの模範解答に近いチームが勝利するというルールのゲームです。その他にもジャングルや無人島を舞台にしたものや、防災を学べる種類もあります。
さまざまな選択肢のなかからチームとしての方針を合意形成していくゲームのため、コミュニケーションスキルと協調性を身につけることができます。
ブレインストーミング
共通のお題についてチーム内でディスカッションを行い、チームとしての答えを導き出し発表するゲームです。ブレインストーミングはチームビルディング研修だけではなく、新規事業のアイデアなどを検討する際にも活用される方法のひとつです。
リモ謎
リモ謎とは、株式会社IKUSAが提供するオンラインで実施する謎解き脱出ゲームです。リモートワークであっても、ビデオチャット上であれば何人でも参加が可能です。また、参加者のレベルや、目的に合わせて難易度や内容をカスタマイズすることができます。
ストーリーに沿って時間内に謎を解き、脱出を目指すゲームとなっており、チームの各メンバーが協力し合わないと謎が解けないため、自然とコミュニケーションが発生します。
参考:リモ謎 | 企業向け謎解きチームビルディングの決定版 | IKUSA.jp
https://ikusa.jp/service/remote-work-mystery/
初対面同士の研修におすすめ! チームビルディングに有効なゲーム
次に、初対面のメンバー同士が多い場合のチームビルディングに役立つゲームを2つ紹介します。
ドミノ
ゲームやレクリエーションの定番ともいえるドミノは、チームビルディングにも大いに役立ちます。
チーム対抗で行う場合には、作戦会議をしながらドミノを並べる形状や間隔などを決め、ドミノが倒れ続ける時間を競います。
ペーパータワー
チーム対抗で所定の時間内に紙を使って高く積み上げるゲームです。ルール自体は単純なため、誰もが気軽に参加できるメリットがあります。
一方で、紙の強度を確保したり、積み上げる形状などの作戦をチームで練ったりする必要があり、意外と奥の深いゲームといえます。
チームビルディング研修に成功した企業の取り組み
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社では、2020年4月の組織再編に合わせてチームビルディング研修が行われました。新型コロナウイルスが猛威をふるっていた時期ということもあり、オンラインで実施できる「リモ謎」を採用。ゲーム感覚で気軽に実践できることが採用の決め手となったようです。
今回のチームビルディング研修の目的は「これまで関わりの薄かった部署やメンバーと互いにサポートしあえる関係を築くこと」「リモート環境におけるコミュニケーション力を向上すること」の2点。自然とコミュニケーションが生まれるよう、部門や担当をシャッフルした状態でチームを編成しました。
参加者の約9割がアンケートで「有意義だった」と回答しており、「初対面のメンバーともコミュニケーションをとることができた」など前向きなコメントが多数集まっていました。
参考:【インタビュー】NTTコミュニケーションズ様の部署内研修でリモ謎を実施!満足度90%の秘密を公開! | 謎解きコンシェルジュ
https://nazotoki-concierge.com/case-interview/interview/202009082601/
チームビルディング研修を実施する際の注意点
チームビルディング研修を実施し、効果を最大化するためには、いくつか注意すべき点があります。特に重要なポイントを3つ紹介します。
参加者に研修の意図を理解してもらう
チームビルディング研修におけるゲームはあくまでも手段のひとつであり、本来の目的はチーム内でのコミュニケーション活性化であることを理解してもらうことが重要です。
ゲームに夢中になるあまり、自分だけの世界に入ってしまいコミュニケーションがおろそかになってしまうと本末転倒です。重要なのはゲームそのものの勝敗ではなく、チームビルディングのプロセスであることをきちんと説明しておきましょう。
また、ゲームの勝敗にこだわるあまり、独善的な態度をとったり、他のメンバーを否定したりすることのないように周知しておきましょう。
参加者が本気で楽しめるゲームを考える
あまりにも簡単なゲームや、短時間で終わってしまうようなゲームの場合、コミュニケーションが醸成されず、チームビルディングの目的が達成されないことも考えられます。
参加者が本気で楽しいと感じるゲームを取り入れることが重要であり、そのためには研修前の段階でアンケートをとってみることもおすすめです。
ゲームそのものは人事評価に影響しないことを伝える
ゲームの勝敗はもちろんですが、ゲーム中の言動も含めて人事評価に影響を与えることはないと説明しておきましょう。たとえば、誤った作戦を立ててしまい、それが原因で勝負に負けてしまったとしても、人事評価に影響を与えるべきではありません。また、そのような作戦を立案したリーダーやメンバーに対し、過度に責め立てるような言動も慎みましょう。
テレワーク時代に対応したチームビルディング研修
新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワークに移行したことによって、コミュニケーションに課題を感じている企業も少なくありません。
コミュニケーションがおろそかになってしまうと、生産性が低下しパフォーマンスにも影響を与えることがあります。
これまでのオフィスワークであればコミュニケーションに問題がなかった企業も、テレワークに移行したことによって会社やチーム内の一体感が減ってきたと感じている場合には、チームビルディング研修の導入を検討してみましょう。
(記事監修:株式会社IKUSA)
HRreview編集部おすすめの採用ノウハウ資料をプレゼント

オンライン面接の方法・採用計画の立て方・ 面接官の人選方法など、採用業務に役立つ資料6つをまとめてダウンロードできます。