さくらインターネット株式会社様が社員の働き方に関係する人事施策をパッケージ化した「さぶりこ(Sakura Business and Life Co-Creation)」が生まれた背景や考え方、また運用後の社員の変化などについて、さくらインターネット社長の田中様と人事矢部様、広報渋谷様へのインタビューを実施しました。
第4回は、人事・広報インタビュー(後編)です。
失敗しても人事が声を掛け、チャレンジを称賛する風土を醸成
――多様な働き方を認める制度のなかで、個々の働きを「正しく評価する」というのは非常に難しいと思うのですが、現在どのように取り組まれていますか。
矢部様:正しい評価を行うために、2週間に一度は上長とメンバーで1on1を設けることを推奨しており、個人ときちんと対話し向き合うことで、評価につなげています。弊社は実力主義の考え方がある会社で、新卒で入社して2年目には執行役員になった者もいます。
キャリアを発展させるのは「社員自身」という前提に立ち、「社内公募制度(※1)」や、「キャリア相談窓口(※2)」といった、社員自身が自分のキャリアと向き合うためのサポート制度を用意しています。社内でのジョブチェンジの機会を積極的に創出して、「学び続けるマインド」と、「学んだことによって発揮された能力」などから、社員を複合的に評価したいと思っています。
※1:社内公募制度 各部門が必要としているポストや職種など公募内容を社員に公開し応募者(社員)のなかから選考、人材を登用する制度。
※2:キャリア相談窓口 社員からの相談に対し、キャリアカウンセリング有資格者が対応する窓口。「社内公募の求人に興味はあるが、自分の得意なことを生かせるかわからないので、得意、不得意、これからやりたいことなどを客観的に整理したい」といったキャリアに関する相談を幅広く受け付けている。
この他にも、新規プロジェクトにおいては、「参加したい」と思った社員は所属部署を問わず自由に手を挙げることができます。これは前述の「社内公募制度」とは異なり、部署異動を伴いません。特に「制度」ではなく、あくまでも「風土」の1つです。
――以前のインタビューでも「失敗したとしてもチャレンジしていくことを推奨したい」という田中社長のメッセージがありました。
矢部様:チャレンジには失敗がつきものだというのが田中の信条です。失敗にも学びがあり、それが次のチャレンジを生むと思っています。人事としては、チャレンジが失敗しても、声を掛け、ケアするようにしていますし、それがチャレンジを称賛する風土作りにつながればよいと思っています。
また、これは「評価」ではありませんが、年1回、全社員が集まる全体会議があり、そこで社内表彰を行っています。前回の全体会議では、社員からの推薦を募ったところ、チーム・個人あわせて67件の推薦がありました。さらに社内投票を行い、最終的に4名の社員と10のチームが表彰されました。
――表彰されるチーム・個人を、上層部だけで選出するのではなく、全社員によって推薦・投票するのは面白いですね。
矢部様:副賞として、田中から賞金を渡すのですが、「運も大事だ」と壇上で大きなサイコロを振り、出た目によって金額が決まります。1が出たら1万円、6が出たら6万円なんですが、「6が出た、運があるね」とサイコロが振られるたびに笑いが起き、盛り上がりましたね。
全体会議の社内表彰で、サイコロを振る様子
全ての人が異なる境遇や価値観であることを前提に、働き方改革を考える
――矢部様・渋谷様が実際「さぶりこ」を利用して感じたことはありますか。
渋谷様:以下6つの制度は、全社員が使えるものです。つまり「育児や介護をしている人だけが『ショート30』を使える」わけではないですし、「在籍期間が長い人のみが『パラレルキャリア』を実現できる」ということでもありません。
さぶりこ(一部)
渋谷様:仮に子育てをしている人のみが利用できる制度が充実し、その人たちが働きやすくなっても、制度を利用できない人たちが働きにくくなっては、チーム・会社全体として「働きやすい会社」とは言えないと思います。
同じ目標に向かって走っているはずなのに、働く環境・制度に差が出てしまうと、「お互いさま」の関係ではいられなくなってしまいますよね。私自身は子育てをしながら勤めていますが、家庭の状況に合わせて自由に選択できるこの制度はありがたいです。
矢部様:田中も「『多様性』と言って、マイノリティーばかりにフォーカスしてマジョリティーが働きにくくなってはいけない」と話していましたが、「さぶりこ」ができた背景には「多様性とは、マイノリティーを特別扱いすることではなく、個々が“違う”ことを“当たり前”と捉えること。そして、全ての人が異なる境遇や価値観であることを前提に、働き方改革を考えていこう」という思いが根底にあります。
弊社には聴覚障がいをもつ社員がいるのですが、入社の際に、音声認識で会話をリアルタイムに文字表示させるアプリを導入しました。もともとのきっかけは、その社員とコミュニケーションをとるための対応だったのですが、このアプリのおかげで会議の文字起こしの手間が省け、社内の各種会議でも重宝されるようになりました。
今では、田中が役職者向けのミーティングで話したことも全て文字に残るようになったため、誰もがいつどこにいても、そのミーティングで話した内容が読めるようになったんです。
田中が「情報をオープンにし、壁を作らないように心掛けている」と話していましたが、このようにマイノリティーにフォーカスした施策を打ったことで、結果的にマジョリティーの働く環境にも良い影響を出せました。さまざまな社員がいるからこそ、得られた結果だと思いますし、今後も、社員全員のパフォーマンスにつながる施策を考えていきたいです。
さくらインターネット株式会社 社長室 広報 リーダー 渋谷幸代様
「働きやすいだけ」では、「働きがい」や「責任」にはつながらない
――田中社長から、「安心感を担保しながら、責任を果たせる組織にする」というメッセージを社内に強く伝えているとうかがいました。
この「責任」というキーワードについて、人によってはプレッシャーに感じたり、ネガティブに捉えることはないでしょうか。
渋谷様:弊社は2016年に20周年を迎えたのですが、その際に「やりたいこと」を「できる」に変える、というブランドメッセージを掲げました。この「やりたいこと」は、「社員のやりたいこと」だけではなく、「お客様のやりたいことを実現させる/サポートする」ことも含まれます。
田中は「責任」というキーワードを説明する際、このスローガンを用いながら、「やりたいこと」を実現するためには、「やらなくてはならないこと」をきちんとやろうと伝えています。時にそこには「やりたくないこと」があるかもしれないが、「やりたいこと」を実現するためにはやっていかなくてはならない、ということを繰り返し言っています。
矢部様:田中は「“働きやすさ”と“働きがい”」「“自由”と“責任”」というメッセージもよく用いますね。「働きやすいだけ」では、「働きがい」や「責任」にはつながりませんし、会社としては、利益を出していかなくてはなりません。社員一人一人の自立性があってこそ、成り立つものだと考えています。
――田中社長も「会社にとって怖いのは“ぬるい職場”で“会社は気にくわないが、居心地がいいからい続けよう”という社員が増えること」とおっしゃっていましたね。
矢部様:人事としては、「働きがいを感じられる職場作り」のために、今後も尽力していきたいと思います。これまでにお話ししたジョブチェンジなどの「機会創出」や、支配ではなく支援のための「対話(1on1)」、そして成功・失敗にかかわらず「チャレンジそのものを称賛する風土作り」です。「働き方改革をしなくてはいけない」という世の中の風潮がありますが、弊社は常に「どうしたら、全社員が幸せになるか」を主軸に、制度と風土を作っていきたいと考えています。
(関連記事)
優秀な人材が登録する国内最大級のデータベースを試してみる

「ビズリーチ」の国内最大級の人材データベースの中から、業種や職種など6つの条件を組み合わせ、簡単かつその場で貴社の採用要件に合った人材の人数を簡単に確認できます。