2022年5月13日、株式会社ビズリーチは「経理部長、システム刷新PM経験者から見た 今後の人事の役割」と題したWebセミナーを開催しました。
日清食品ホールディングス株式会社執行役員CHRO人事部長の正木茂様にご登壇いただき、異職種経験をふまえた人事・人材戦略の考え方をお話しいただきました。モデレーターは、HRエグゼクティブコンソーシアム代表の楠田祐様に務めていただきました。

登壇者プロフィール正木 茂氏
日清食品ホールディングス株式会社
執行役員CHRO 人事部長
帰国後、基幹業務システム刷新プロジェクトリーダーとして、40年来のメインフレーム時代からSAPへの移行になんとか成功。2018年に財務経理部長に就任したが、翌年人事部長へ異動。2021年4月CHRO、2022年4月に執行役員就任。

モデレータープロフィール楠田 祐氏
HRエグゼクティブコンソーシアム
代表
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)客員教授を7年経験した後、2017年4月、HRエグゼクティブコンソーシアム代表に就任。2009年から6年連続で年間500社の人事部門を訪問し、人事部門の役割と人事担当者のキャリアについて研究。
社内と社外の強みを組み合わせて価値創造した、カップヌードル
日清食品の代表商品であるカップヌードルが発売された1971年は、今のようなイノベーション全盛の時代ではないものの、この商品はまさにイノベーションを体現していました。日清食品の強みである「瞬間油熱乾燥法」は麺を油で揚げると保存ができるという技術で、NHKの連続テレビ小説「まんぷく」で知られたように、家人がてんぷらを揚げていたことがヒントになっています。
このカップヌードルは、当時の社外にあった「フリーズドライ」や「発泡スチロール」などの新技術と組み合わさることで、包装器であり調理器であり食器でもある容器に入った、色鮮やかな具材と麺が一緒になって、3分で食べられるラーメンという新しい価値を世の中に送り出した。これが商品としてのイノベーションでした。
そしてイノベーションは流通にもありました。日清食品の営業はカップヌードルを販売しますが、代金回収機能を負っていません。工場で作られたカップヌードルは卸や小売りの倉庫に直接配送されますが、伝票上の商流としては商社を通るため、販売代金は商社から入金されます。代金回収費用は発生しますが、その分営業は営業活動や顧客フォローに注力できました。ブランディングにおいても、テレビCMを通じて独特の世界観を築きました。自動販売機やコンビニエンスストアの増加とともに、カップヌードルの利便性も相まって、より成長できたと思います。
このような自社の強みや発明と社外の強みが組み合わさり、すり合わさって、愛される商品として50周年を迎えることができています。
異職種である財務経理の経験を通じて理解した、人事の役割「これまで」と「これから」
皆さんは、1万円札が15枚なっている木が売られていたら、いくらで買うでしょうか。

今なっている分を収穫して、枯れてしまえば15万円です。しかし10年なり続ければ150万円、加えて、植木鉢も3万円で売れると仮定すると、最大収益は153万円です。
このように、お金のなる木というのは今なっている分と、今後どれほどなり続けるかで、価値算定ができます。そして、一般企業においてもこの考え方で価値を測ることができます。

これは、以前私がDCF(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー)法で企業価値を算定した「Excel」のシートです。
将来どれくらいお金を稼ぎ続けるか、それを現在のお金の価値にするといくらになるか。つまり、いくらで交換すれば割に合うかを計算する表で、企業買収の際によく使われます。
ここでは、5年間の経営計画に基づいて企業価値を算定し、6年目以降はその算定を踏まえて価値を予想し計算していきます。たとえば、1年目は5億4,000万円お金が出ていき、2年目は4億1,500万円入ってくる。5年間ではトータルで17億3,800万円、6年後以降は合計81億2,700万円が入ってくるので、現在の金利で現在の価値に割り引くと、65億2,200万円。合わせると82億6,000万円の価値がある企業だと計算します。
驚くことにDCF法においては、会社が「未来永劫」もうかり続ける前提のもとに計算されています。なので実際に買収した後、もし6年目に倒産した場合は大損となってしまいます。企業買収では、このような計算方法が標準的に使われているのです。びっくりしませんか?
もうかる力ともうかり続ける力の2つから考える、企業価値

縦軸に金額、横軸に年数を置いたときに面積が与えられ、これが企業価値となります。上方向には売り上げ向上やコスト削減による努力が、右方向には一層もうかり続ける力がプラスされます。

そして、2014年に公表された「伊藤レポート」では、企業が投資家との対話を通じて持続的成長に向けた資金を獲得し、企業価値を高めていくために、8%というROE(Return on Equity)の目標水準が掲げられました。
これは会計学者である一橋大学の伊藤邦雄教授(当時)が座長を務めた経済産業省のプロジェクトの最終報告書で、その後の日本のコーポレート・ガバナンス改革をリードしました。
その後、「人事版伊藤レポート」も出され、日本企業の人事のあり方にも大きく影響を及ぼしたのはみなさまご存知の通りです。

ROEとは、回転という考えに基づいています。回転のスタートは貸借対照表の資産の部からで、最初に株主や金融機関から集められた現金から、工場や土地、原材料を買うなどして、カネからモノになります。今度は原材料から工場で商品に、モノからモノになります。商品を売ると、売掛金というモノになります。売掛金を回収すると現金に戻ります。つまり、「カネ→モノ→モノ→…モノ→カネ」という回転です。
このROEは分解するとABCの3項に分かれます。
お金を使うときに自分のお金か他人のお金を借りたか、というA。
一定期間内に何回回転して売り上げを上げられたか、というB。
カネ・モノが回転することによってできた売上高に占める、当期純利益を示すCです。
「A×B×C」はそれぞれ分母・分子が隣り合って消し合うので、最後に残るのが株主資本分の当期純利益で、株主が出資したお金に対してどれだけ利益が残ったかが分かります。これを8%以上に高めないとグローバル企業とは呼べない、といったのが、第一弾の「伊藤レポート」でした。
しかし、前年の決算でROEが満足のいく水準にあったとしても、これからもそうである保証は、実は「有価証券報告書」からは読み取れません。項目が多く200ページくらいありますが、終わった期の説明でしかないのです。

企業価値を示す四角形の面積は大きいほうが良いですが、有価証券報告書では一辺の高さは分かるものの、右側の長さは読み取れません。投資家はこの情報がなければ本来株式投資ができませんが、もうかり続ける力については実は勘なのです。
そこで登場するのが2020年の「人材版伊藤レポート」です。このもうかり続ける力を説明する必要が企業にあるとしています。持続的な企業価値の向上を実現するためには、ビジネスモデル、経営戦略と人材戦略が連動していることが不可欠である。目指すべきビジネスモデルや経営戦略と、足元の人材および人材戦略のギャップが大きくなってきている。持続的な企業価値の向上につなげていくことが求められている、ということで、会計学者の伊藤先生が「人材」にまで踏み込まれたのは、図式化するとこういうことではないでしょうか。

この右側の矢印は貸借対照表には載っていない力で、ESG(環境・社会/社員・ガバナンス)が近年注目されるのもこのためです。
良き地球市民でないと、お客様からも取引先からも資本家からも、ましてや従業員からも背を向けられてしまいます。ですから、ある程度お金をかけてでも取り組み、上向きの矢印が多少小さくなろうとも、その分右を伸ばすことで、企業価値を大きくしていこうということです。
人事が、従来期待されていた役割から大きく拡張している

そうした背景のもと、人事の役割を表に整理してみました。縦軸を今日の仕事と明日の仕事、横軸を人事機能と会社全体とし、それぞれ1階と2階、「州」と「連邦」に見立てています。
今日の仕事で人事機能を見ると、採用(新卒・キャリア)、教育・組織開発、給与・労務、評価・人事制度、異動、海外・駐在員という業務があります。昨今の人事の役割はそこから大きく広がり、人事機能の2階であれば、職種や地域限定社員、マネジメントスキル向上、グローバル活躍社員育成、HRDX、副業、障がい者雇用、キャリア自律、人材流動化などがあります。
さらに全社施策で今日の仕事としても、働き方改革、コロナ対応・在宅勤務、BP、ワークライフバランス、健康経営・メンタルヘルス、コーポレートガバナンス・コード対応、ハラスメントなどがあり、明日の仕事まで含めると、ジョブ型への移行、パーパス・エンゲージメント、シニア活躍・雇用延長、ダイバーシティ&インクルージョン、女性活躍推進、外国人採用などがあります。
このように人事のスコープが広がっています。
しかしながら、2020年の経済産業省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」によるアンケートで、人事部門を管理部門と見なしている者の割合が、日本では60%ですがグローバルでは46%でした。また、経営戦略における意思決定への人事部門の関与について、半数以上の企業が、人事部門は関与できていないと見ています。さらに人材マネジメントの課題として、「人材戦略が経営戦略に紐づいていない」というのが3割を超えています。
改めて人事の役割を見てみると、「州」の1階は当たり前に届けるべきインフラ部分とはいえ、エラーなく安定性を向上させ、業務生産性を向上させていかねばなりません。一方で、広がった部分においては、人事・人材戦略として今ある「As-Is」を見える化し、どうあるべきかの「To-Be」を描き、その差分を具体的施策に落とし込んでいくという、コンサルタント的な戦略策定・実行が求められます。
このように人事に期待される役割として、これまでの「ヒト」リソースのインフラ的役割を継続しつつ、「経営戦略」と連動して「人事/人材戦略」を策定・実行することがあります。この際に大事なのは、現実に引っ張られず、大胆な「ありたい姿」を描くことと、現実離れせず、現場の従業員の気持ちを分かることの両方といえます。
リザルトチェーンを用いた、経営戦略に資する人材戦略の整理

これはITシステム構築にも共通することです。今あるアプリケーションの寿命からインフラ型投資がある一方で、「As-Is」と「To-Be」の差分を埋めるための戦略型投資もあります。この2つが常に存在するのは、ITプロジェクトでも人事でも同様です。

この図は、風が吹けばおけ屋がもうかるということわざを項目ごとに並べたものです。これは状態の連鎖を示しており、最終的に風呂おけ屋がもうかる状態にしたいと思えば、その前にはどういう状態があるべきか。目的があるときに逆算して考えるのは、システムプロジェクトの考え方なのです。

システムプロジェクトでは、「企業の収益力向上」を実現する状態をリザルトチェーンのゴールに置き、この状態になるためには「経営資源を最適配置できる」こと、そのためには、「業務の活動状況を適正に評価できる」ことが必要だと決まり、それにより業務やシステム部分で必要なことを割り出します。
システム構築では、システムの「Do」、何をやるかだけでなく、その先にどのような「Be」を実現するか、この「Be」は次の「Be」にどう関わっていくかを明記して進めていくのです。
私は日清食品で約40年使ってきたシステムを一新するプロジェクトを率いた経験があります。基幹業務全てを一斉に動かしました。2015年4月1日のことで、移行は奇跡的に成功したものの、システムプロジェクトとしてはQCDS(クオリティー・コスト・デリバリー・スコープ)のいずれの点でも失敗でした。

失敗原因は、(2)の現状(現場)認識をふまえて(1)の経営方針・戦略の確認、それを埋める(3)とそのためのルールとして(4)があり、システムとして作るのが(5)という順番であるべきところを、まずSAPを入れようと、(4)を決めていたのです。やるべき順序、プロセスをおろそかにしてしまったのが敗因でした。

プロジェクトを進めるには、コンセプトとビジョンを想起して、そのためにマスタープランやアクションプランを起こすべきなのです。その際に重要なのは、現状理解です。現行システムがどのようになっているのか理解しないままプロジェクトに突入してしまっては、成功できるはずがありません。

これは人事施策にもいえることです。最初に1on1をやろうといっても、それができる関係性ができているかを確認し、1on1ができるような状態を作ることからやらねばなりません。
最終ゴールは、システムプロジェクトと同様で、会社の企業価値が増加し続けている状態です。逆算して考えていき、近づくにつれてようやく解像度が上がり、普段行っている人事施策になります。
つまり人事施策というのは、状態の連鎖が続いて、最後は会社の企業価値が増加し続けている状態に結びつくものであるべきです。

これは、マサチューセッツ工科大学組織学習センター創始者であるダニエル・キム氏の「成功の循環」モデルです。
組織が継続的に成長し、結果を出し続けるためには、結果の質を先に求めるのではなく、関係性の質から高めていくべきとされています。対話を通じて、相手との関係を正しく築き、深く考えることをまず行うべきなのです。

これをビジネスに取り込むと、2つのフロアから成り立つ絵が描けます。会社は、「カネ→モノ→カネ」という循環を起こして金融資産や物的資産を増やしますが、これは結果の質であり、直接的にカネやモノを増やすことはできません。
まず行動の質を変える必要があります。結果の質はモニタリングのフロアにあり、人事が活躍するのはアクションのフロアです。行動の質、思考の質のために関係性の質を良くするとこの循環が始まるので、この関係性の質から取り組もうというモデルになるのです。
このお金で計れない価値というのは、ワクワク・イキイキ・ニコニコという状態を作ることだと、人事の仕事を通じて実感します。
「適所に、適材を」 人材採用における「優秀」人材をどう考えるか

人材採用における「優秀さ」について考えてみましょう。この図に既存事業・新規事業を分ける補助線を入れると、(1)(2)(3)というエリアができます。
(1)は自社の製品やサービスを目の前のお客様に届ける既存事業部分で、お客様の高齢化や他社製品への移行があるため、右肩下がりになります。
既存事業を守り続けることは大事ですが、これだけでは立ち行きません。ですから、新製品・サービスを開発し、新たな顧客を獲得する必要があります。日清食品では減塩タイプや小さいサイズの商品開発や、海外市場の開拓などを行っています。これが(2)で、深化の部分になります。
(3)は新規事業で、日清食品では完全栄養食などをゼロイチで始めています。
このときに人事が考えるべきは、(1)(2)(3)それぞれにおける「優秀さ」です。これまでと違い、(1)で求められる優秀さと(2)(3)のそれとは異なります。処遇やトレーニング、異動についても異なりますので、同じ人事テーブルに乗せるべきではないでしょう。

日清食品はかつて新卒採用が100%でしたが、今ではキャリア採用の社員も増え、食品業界ではその比率が高く、約半分がキャリア採用となっています。たとえば教育コストが低く、人材育成の効率化になるのはキャリア採用で、新卒はこれから身につけさせなければなりません。
このように「優秀さ」がそれぞれに違いますので、配属先に求められる優秀さやコスト感をもとに採用を考えていかねばなりません。

さらに、既存と深化と探索それぞれのビジネスに適した能力を持つ人材についても、処遇や配属先などを細やかに対応していかねばなりません。
これらの話をふまえて、今後の人事はどうするべきでしょうか。

やはり今、新たに人事に求められている能力は、この2階部分や「連邦」の能力だと思っています。これまで長く人事に必要とされていた、これからも必要な能力は「州」の1階でまだまだ続きます。
しかし、これとは異なる優秀さがお客様のニーズとしてある。そういうような人事運用をこの1階とは隔離して、二手に分かれて、2階や「連邦」の部分に当たっていかねばならないでしょう。一人二役をやらせないというのが、人事を3年やった結論です。
トークセッション
セミナー後半にはまず、正木氏、楠田氏によるトークセッションを行いました。
楠田:分かりやすいお話をありがとうございました。質問ですが、2階の部分に経験者をキャリア採用した際に、プロパー社員や若手の育成までやってもらいたいのと、その人自身が成長するような仕掛けがないと、職人的に、任務が終われば退出していくのではと思いました。そのあたりはいかがですか。
正木:互いにリスペクトし合う、ダイバーシティ&インクルージョンが大事でしょう。1階は長い時間をかけて築く領域なので、携わる人には自負があります。ですから、2階をやるキャリア採用者に対して、当社のことをよく分かっていないのに、などと不協和音が起きやすいもの。そこでまず互いに敬い合い、関係性を作るべきだと思います。
楠田:最近、あえて違う人材を入れる企業が多く、やはり人的「資源」ではなく「資本」という考え方になっていると感じます。副業の活用も増えていますね。
もう1つ、ダニエル・キムの循環について、ウェルビーイングを目指すのであれば必ず要るものだと思います。違う意味で正木さんは絵を描いてくれましたが、これをやるには人事ではなく、現場の社員の対話の数と質が重要な気がします。何かそうした仕掛けはしていますか。
正木:当社にはダイバーシティ委員会があり、ダイバーシティ&インクルージョンと女性活躍推進は、人事部とダイバーシティ委員会の両輪で進めています。なりたい姿を草の根活動で考えていくチームと一緒に進めると、いろんなことが実現しやすいでしょう。
たとえばダイバーシティ委員会の取り組みに、「ガチャトーク」があります。手を挙げて参加しても誰と1on1をやるか分からないので、自分の仕事のラインとは違う人といきなり話し、知り合いになれるというものです。
楠田:それはいいですね。新卒同士でも長年いても、話したことのない相手はいるものですが、互いの仕事が何かが分かり、人脈がつながり、アイデアも出し合える。
正木:キャリア採用者も多くの関係者と知り合うことで、成果を発揮しやすくなっています。
楠田:キャリア採用者を孤立させない意味でも良いし、リテンション観点でも良いし、人脈作りにも良い。その対話からダイバーシティ&インクルージョンにつながる発想が出てきそうですね。
正木:当社のCEOが自分も参加したいと言っているくらいです。
楠田:あとは、正木さんは結果的に経理・財務もシステムも人事もというT型キャリアになっていますが、こうした経験・思想を持った正木さんの部下をどのように育てるかも重要な点ですね。
正木:おっしゃるとおりですね。部下に対し会社全体で積極的に必要なサポートを行い、かわいい子には旅をさせよということが実現できるかどうかでしょう。
楠田:オンボーディングという言葉があります。私はこの言葉を日本語に意訳すると、「よってたかって」だと思うのですが、日清食品では「よってたかって」部下を育てる。それが実現できているのですね。
正木:そうありたいと考えています。
Q&Aセッション
セミナー後半には、視聴者から寄せられた質問にお答えしました。
グループに先立って、日清食品株式会社で機動力を生かし、先行施策を行っています。1on1もそこで最初にやり始めました。そのように先行事例を作って、広げていくようにしています。
いま注力しているのは、「成長実感会議」です。これまでは小集団のグループ目標を立てて年間の目標管理・制度を運用してきましたが、それを止めて個々人に会社の目標と部署の目標をタスク立てし、個人の目標を上司と相談。それを半期ごとに成長実感会議で、部署の管理職が全員集まって、「よってたかって」の状態で育てるという取り組みです。
いま日清食品の戦略部門と一緒に、グローバル人材プール作りとジョブ型に向けて考えていくことを取り組んでいます。
まさに戦略部門と人事部門が一緒に考えていくべきだとして、一緒の会議体に出て議論を重ねています。すると戦略部門はプランを立てるのが上手で、きれいな絵を描いてきます。いわゆる「To-Be」ですね。でも人事部門では「As-Is」の現実が分かっているので、その絵を実現する苦労が見えてしまいます。そこが難しさです。
楠田:この「人材戦略と経営戦略をひもづける」を人事としてどうしていくかですが、やはりHRBP的に現場の事業長と対話をし、事業部ごとの戦略において自分の意見を言うことが大事でしょう。
そうすれば、事業部の戦略を達成するために今の陣容でよいのか、何が足りないのか、新たに採用するのかも含めて、対話をすることで人材戦略を組み立てるための意見も言えるようになり、経営戦略と連携するきっかけになるのではないでしょうか。現場との対話がカギだと思います。
正木:非常に高度だと思います。とどのつまりは人的資本の奪い合いになるので、どう優先順位をつけられるか。自分も困っているけれど、全社視座で見たときに納得ができるか。双方に視座が広げられるよう目指さねばと思います。
楠田:つまり、人事要員も資本なのだというふうにしないといけません。コストセンターになってしまうという言い方をする人は多いですが、それだと資本というほうに変われないので、人事だけが資源だったではよくない。意外と、天然資源を扱っている会社のほうが、人的「資本」の考え方になってきています。
正木:なるほど、それは面白いですね。
それはいまも試行錯誤ですね。
なんでもあうんの呼吸で伝わる既存社員を(1)(2)から(3)にもっていくのがやりやすいですが、あえて(2)と(3)を線で区切ったのは、ゼロイチをやれる優秀さと、既存のものを改善する優秀さは違うからです。ですからキャリア採用した後に、ここは短期に処遇を考えていければと思います。
楠田:そのとおりですね。安藤百福氏のような発明家も、そのアイデアを形にするような人も必要です。それも社内だけでなく、外部の人材と有機的なプロジェクトでやっていくのもあるでしょう。
あらゆることをトライ&エラーでアジャイルに実行していくこと自体がオープンイノベーションの基本になると思うので、社内にいる安藤百福氏のような人をそうした環境においてあげることも大事です。そこにはジョブディスクリプションは不要なのでしょう。
正木:確かに、ジョブディスクリプションに縛られていては劇的なイノベーションは起こせないですね。
最後に、視聴者の皆様へメッセージをいただきました。

人事が今すごく面白く、難しい時代になっています。
そうしたときには、できない理由を言うのではなく、いかにやろうと考え続けることが必要。
人事は立場上、できない理由を言いやすいものですが、いかにやるのかを学び続け、行動してもらいたいと思います。

一人一人が持つ経験やできることというのは、自分にとっては当たり前であっても、他者から見るとすごいことかもしれません。
ですから社外に出ていろいろ意見交換をしていただき、話を聞いてもらうのは大事、大切だと思います。今日はありがとうございました。
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