2021年8月26日、株式会社ビズリーチは「ビズリーチ創業者 南が語る 事業と組織づくり」と題したWebセミナーを開催しました。
ビズリーチ創業からVisional上場までを追った書籍「突き抜けるまで問い続けろ 巨大スタートアップ『ビジョナル』挫折と奮闘、成長の軌跡」(蛯谷敏 著、ダイヤモンド社)の出版記念として、ビジョナル株式会社代表取締役社長の南壮一郎が登壇し、モデレーターを株式会社ビズリーチ創業メンバーでビジョナル株式会社執行役員の佐藤和男が務めました。

登壇者プロフィール南 壮一郎氏
ビジョナル株式会社 代表取締役社長

モデレータープロフィール佐藤 和男氏
ビジョナル株式会社 執行役員
先輩経営者たちから学んだ事業づくり
佐藤:ビズリーチ誕生からVisional上場の軌跡を記した書籍「突き抜けるまで問い続けろ 巨大スタートアップ『ビジョナル』挫折と奮闘、成長の軌跡」は、著者の蛯谷敏さんによる、延べ80名以上、ノートにして15冊以上のインタビューを経て完成したといいます。改めて本を読み、何を感じていますか。
南:Visional上場も書籍の発売も、新しいスタートラインだと思っています。
蛯谷さんからは、社内外の関係者に取材をしながら課題発見をテーマに深掘りしたことで「問い続ける」というタイトルが生まれたと聞いています。まさに、社会にインパクトを与えられる問いを持って徹底的にやり抜くというのはVisionalの原点であり、これからも、変わり続けるために学び続けなくてはいけないと改めて感じました。
またVisionalとしては、10年後、今からは想像もできないようなまったく違う姿になっていたいという願いをもっていますので、その願いを実現することで、本を書いていただいたことの恩返しになるのかなと思います。
佐藤:本セミナーでは、南がこれまで出会った先輩起業家たちからどう事業づくりを学び、生かしてきたのかを聞いていきたいと思います。
書籍にもありましたが、楽天イーグルスの創立メンバーとして周りからの学びは大きかったそうですね。どんなことを学んだのでしょう。
南:三木谷(浩史)さんから教わったのは「大義」と「王道」です。
何のために仕事をするのか、事業をやるのかを明確にしなさいと言われ続けました。事業は社会によりよいインパクトを与えるためのものであれといわれ、楽天イーグルスではなぜ球団をつくるのか、地域をどう元気にしていきたいのか、そこに「大義」はあるのか、本気で議論していましたね。
そして、成果を出したときに、胸を張って、正々堂々と力強く、辿ってきた道を語れるような「王道」のやり方で、価値があることを正しくやるようにとアドバイスされてました。
佐藤:楽天イーグルス創業メンバーは、株式会社USEN-NEXT HOLDINGS取締役副社長COOの島田亨さんや、Zホールディングス株式会社取締役の小澤隆生さんなど錚々(そうそう)たる顔ぶれです。
南:特に、島田さんからは、経営者としての基礎を学びました。
楽天イーグルスで初めて自身のチームを持ち、マネジメントを経験したとき、最初の1年半は苦戦して、チーム崩壊直前まで行きました。そのときに島田さんが、「自分が成果を出して喜ぶのではなく、チームが成果を出したときに自分が成果を出したとき以上に喜べないといけない。人は、そういうリーダーのもとで働きたいでしょう」と言ってくれたのを今でも覚えています。
島田さんの様々な教えを日々吸収しながら、初めてビジネスパーソンとして変わりたいと感じたのもそのころです。また、今の自分に満足せず、人として自分を磨き続けなくてはいけないと痛感したこの時期の経験が「変わり続けるために、学び続ける」というVisional Wayの原点にもなりました。
小澤さんからは仲間との事業づくりの楽しさを背中で教えてもらいました。事業づくりとは、社会の大きな課題を見つけ、自分の足で情報収集を行い、徹適的に検証し、仲間と一緒に世の中にインパクトを与えていくことだ」と。
社会をよりよくしていく事業づくりを心掛けることによって、仲間たちと何か新しい歴史をつくっている感覚を持てました。また実際に、球団創設により地域が元気になっていく様子を目の当たりにして、「事業づくりを通じて、世の中にインパクトを与えることがこんなに楽しいんだ!」と感じることができました。その原体験が、今の自分をつくっています。
佐藤:3人の先輩起業家に共通するものは何でしたか。
南:書籍のタイトルにある「問い」につながるのですが、3人とも、どんな環境や状況においても、本当にいつも「問い続けて」いました。
業界や社会の真の課題は何なのか、その課題が解決されるセンターピンとなるものは何か。徹底的に構造から物事を理解し、歴史から周辺業界までリサーチし、行動力で課題を見つけにいっていました。そこから、課題を前提にやるべきことをシャープに磨いて、事業としての目標設定をされていた。「問い続ける」というのはまさに、自分が彼らから影響を受け、ずっとやってきたことだったのだと思います。
佐藤:現在、事業づくりで大切にしていることは何ですか。
南:せっかく新しい事業をつくる機会があるならば、社会の課題を解決でき、世の中にインパクトを与えられるような事業をつくりたいと思っています。
「言うは易く行うは難し」ではありますが、日々徹底した情報収集は欠かせません。各省庁のレポートや研究機関のレポート、海外のレポートも読み込み、国を動かす人たちがどんな課題意識を持っているのかをインプットするよう日々心掛けています。社会が構造的にどのように変化しているのか、また技術の進化によって次にどんな変革が生まれるか、具体的な未来予想図を頭の中で描こうとします。そこから、課題をいくつかピックアップし、事業として何が求められるのかを考えていきます。
佐藤:机上のインプットから、事業づくりまでどう昇華させるのでしょう。
南:レポートだけでは実態をつかめないので、必要な人にアプローチしインタビューします。
日本は世界と比べたら、DX後進国ともいえる状況ですから、先進国では何をしていてどんな課題があるのか、それをどう解決しているのかを調べ尽くします。実際、現地に行って、課題解決をしている企業、多くはアメリカのスタートアップ企業ですが、コンタクトを取り、働いている方々に一人でも多くの話を聞きます。
起業家本人はもちろん、創業時のメンバーや個人投資家、VC(ベンチャーキャピタル)にSNSなどを通じて連絡し、インタビューすることも多いです。
とにかく大事なのは、一次情報に触れること。実際に関わっている人の情報にこそ価値があると考えています。
佐藤:自らの行動力が新規事業を支えているのですね。
南:アイデアや発想も大切ですが、何よりも地道な努力と行動力の積み重ねを大切にしてきたのがVisionalの新規事業だと思っています。努力では誰にも負けたくないというのが率直な想いです。
数々のインタビュー等、多くの一次情報を日本に持って帰ってきたら、国内市場を調べつくして、何が本質的な課題なのかを問い続けます。このように、課題の着想から解決策まで、新規事業は情報収集がすべての始まりだと思っています。
グループ経営体制から見る事業フェーズごとの組織づくり
佐藤:組織づくりについても聞いていきたいのですが、グループ経営体制になったことで、権限移譲も進んでいます。株式会社ビズリーチの代表取締役社長を多田洋祐に引き継ぎましたが、この決断をしたのはなぜですか。
南:まずお伝えしておきたいことは、ビズリーチの権限移譲については、5年以上かけて少しずつ事業運営を引き継ぐことはできましたが、本当の意味でできているのだろうかと常に自問しているということです。完全に自分の力不足で、きっとできていることよりも、今はできていないことの方が多いと思いますし、多田を中心としたビズリーチの新しい経営チームには日々迷惑や負担をかけてしまっています。ただ経営は結果がすべて。今のあり方が果たして正しかったのか、10年後にその結果が見えてくるかなと思います。
ただ、少なからず権限移譲に踏み出せたのは、自分よりも、株式会社ビズリーチをもっと成長させ、社会にインパクトを与えられる存在に育てられる経営者がいると思ったからです。大規模な組織をより成長させていくフェーズにおいて、自分よりも多田や現在の新しい経営チームのほうが適性がある。そう信じられたから、委ねられましたし、そのような存在が会社に現れたことは、感謝の気持ちしかありません。
佐藤:権限移譲を進められる組織の土台には、何があると考えますか。
南:何よりも前提にあるのは、やはり人材採用へのコミットだと思います。経営にもっとも影響を与えられるのは有能な経営者であり、そう信じているからこそ、今でも採用にはものすごくパワーを割いています。極めてシンプルなロジックです。
弊社に入社していただきたいと思う経営者の方々には、とにかく包み隠さず、会社や事業の状況について真摯にお話しするようにしています。素晴らしい経営者に出会えても、タイミングが合わなかったり、わからないことがあれば、何度も、何年もかけて話す機会をつくり続けます。
また「事業領域の未来予想図」「困っている内容や課題」「機会の提供イメージ」などを話しながら、最後はお互いがお互いに対して、さまざまな「約束」をし合う形で入社していただいています。自分自身、経営者として、自分がコミットした約束を守れるかが常に試されますし、そこまで徹底的に話した相手だから、入社後は信頼して任せられる面があるのだと思います。
佐藤:採用に対する執念、情熱、行動力は、私の目から見ても、ビズリーチ創業時からすごいなと思うものでした。経営者自ら、採用に注力し続けるのはなぜですか。
南:自分より何かにおいて優れている人がいると信じているからです。
Visionalという会社に、どうしたら多様なスキル、経験を持った方が加わってくれるのか、どうしたらそれぞれの力を生かせるのか。その問いは経営のど真ん中にあるものです。
この会社を彩り鮮やかにするには、個人がパフォーマンスを発揮できる環境を用意することが大切ですし、誰よりも自分がその模範となる行動を示したいと思っています。
佐藤:創業間もない時期から、ミッション、バリューを言語化していましたよね。当時、そこまでクリアにしていたスタートアップは少なかったと思いますが、こだわった理由は何でしたか。
南:働く目的が多様化していくなか、自分がもし働く場所を選ぶのだったら、感性や価値観が近い事業や人がいるところを選ぶだろうと思ったんです。
成長されていた先輩スタートアップにおいては、小さいときから会社の理念や価値観を磨きあげて、「採用こそが経営者のもっとも重要な仕事である」「バリューに合った人を徹底的に探そう」「採用のミスマッチは個人ではなく会社のせいだ」ということを体現していました。採用した方が入社後に活躍することをゴールに採用設計している企業も多く、ビズリーチ事業を営んでいたからこそ、そうしたお客様の事例を間近で見られたことは、事業を続けるなかでの最大の学びでした。
佐藤:事業フェーズによって求められる人材要件は違うと思いますが、フェーズごとの採用をどう考えていますか。
南:スタートアップにおいては、立ち上げフェーズ、成長フェーズ、マネジメントフェーズの3つがあると考えています。
「0→1」の立ち上げフェーズは、暗中模索しながら、トライアル・アンド・エラーを繰り返し、市場を突き刺す課題解決策を探し続けなくてはなりません。失敗やダメ出しもいただきながら「突き抜けるまでやり続けるんだ」という折れない心の強さが大事なのかもしれません。ですので、立ち上げフェーズにおける面接では「とにかく事業づくりや課題意識への思いが強いこと」を重視して見ていました。
成長フェーズに入ると、集まってきた解決につながるピースを仕組化していくスキル・経験も必要になってきます。ただこのフェーズで注意してきたのは、どの会社で働いてきたか以上に、自分で考えて、自分で行動してきた実績がしっかりと経験として備わっているかという点です。また立ち上げフェーズ以上に、成長やマネジメントフェーズにおいて大事なのは、相手のWILL(したいこと)が何なのかを見極めることです。相手を理解し、そのWILLに会社としてどう応えられるか、実現できる環境を用意できるかという視点が大切だと思います。
まだまだ自分も十分にできていませんし、周囲に迷惑をかけてばかりですが、自分が相手の立場であれば、どういう会社や環境で働きたいか、経営者としてどうあって欲しいのかを意識するよう努めています。権限移譲や採用など、課題だらけの自分が誰よりも、学び続け、そして変わり続けたいと考えています。
質疑応答
セミナーでは、視聴者から多くの質問をいただきました。いくつか抜粋して答えたものをご紹介します。
セミナー最後には、南より視聴者の皆様に向けたメッセージがありました。

自分自身、事業や組織づくりについて、周囲の先輩経営者から多くを教わってきました。
振り返りますと、創業した12年前は何もわかっていませんでしたが、楽天イーグルスで素晴らしい先輩起業家から学ぶ機会を得たことで、ビジネスパーソンとして覚醒できたように思います。社会の課題を解決し、世の中にインパクトを生み出す経営者が経営する会社で学べたことが、今の自分の基礎となっています。
周りを見渡せば、大きく成長している会社や事業はいくらでもあります。日本経済全体は右肩上がりの成長はしていませんけれど、確実に、局地的にはホットスポットが生まれています。そこが学びの場だと思っています。
「人生100年時代」の今、75歳や80歳以上まで働かないと社会システムが持たないとすら予想もされています。今まで設けていたゴールラインが変わり続けているなか、重要なことは、自分自身を何度もトランスフォーメーションしていかないといけないという意識です。それが、この時代を生きる難しさでしょう。
変わり続け、学び続けない限り、自分を変革することはできません。そして、今回視聴していただいている多くの経営者の皆さんも自ら問い続けない限り、会社も変革しないでしょう。
これは、我々だけの問題ではなく、日本全体の問題です。同世代を生きる同志として、ぜひ一緒に変わり続けていきましょう。学び続けて、明るい未来をつくっていきましょう。
今日はご視聴いただき、誠にありがとうございました。
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