2020年9月に、ビズリーチを通じて取り組んだ「はじめてのスカウト」の体験を語った記事「社員数15人の会社が、たった3ヶ月で2人の優秀なプロジェクトマネージャーを採用できた話」を、本サイトで公開した株式会社ウェブライダー(以下、ウェブライダー)代表取締役の松尾茂起様。スカウト文をはじめ、取り組み内容・採用ノウハウを語り尽くした本記事は大きな反響がありました。
2020年10月にはオンラインセミナーも開催。スカウトが成功した4つのポイントを振り返り、「自社の魅力や思いを、どう候補者へ伝えるか」を言語化するコツについて、お話しいただきました。今回は、ウェブライダーの採用成功のカギとなった「言語化力」をメインテーマに、セミナーレポートをお届けします。

講師プロフィール松尾 茂起氏
株式会社ウェブライダー 代表取締役
スカウトを始めるにあたり、感じていた「3つの不安」
私たちが今回の採用活動で探していたのは、クラウド上で提供する文章作成アドバイスツール「文賢(ブンケン)」で、外部のエンジニアとの連携を行い、プロジェクト全体を円滑に進めてくれる「プロジェクトマネージャー(PM)」という職種でした。プロジェクトマネージャーはこれまで弊社で採用をしたことがない職種だったため、募集を開始した当初は「いつもの採用チャネルのどこかから、きっと応募が来るだろう」と思っていました。

しかし、待てど待てど、応募は来ない。不思議に思い周囲に聞いてみれば、「プロジェクトマネージャー」とは、今、各社で採り合いが激化している超人気職種だという。
「これまでの『待ちの採用』では採れるはずがない」ということに、ようやく気付けた私たちは「自分たちから声をかけるスカウトをしてみよう」と決断。とはいえ、一度もスカウトをしたことがなかったため、まずは知人に勧められたビズリーチを導入してみることにしました。
しかし、今までやったこともないスカウトを始めるにあたり、漠然とした不安はありました。

人事担当者不在の採用活動。日常業務に支障が出ないか
たとえば、1つ目。弊社はそもそも社内に人事担当者がいません。「待ちの採用」であれば、時間の融通もつけやすかったのですが、自分たちから主体的に動く「スカウト」となると、「採用業務にかける時間が急増して、日常業務に支障が出るのではないか」という不安がありました。
400人もの候補者を選ぶイメージが湧かない
次に、2つ目です。私が契約したビズリーチの「スタンダードプラン」は、「400人もの会員にスカウトを送れる」ことが特長であると説明を受けました。しかし、正直、スカウトを送れること以前に「そもそも400人もの人材を、データベースから選ぶことができるのだろうか」と、量をこなすイメージが湧きませんでした。
スカウトがうまくいかなかったら、心が折れそう
そして最後3つ目ですが、ものすごくスカウトを頑張ったとして、それでも採用成功につながらなかった場合、心が折れてしまうのではないか…。「スカウトにかけた時間で違うことをすればよかった」と後悔するのではないか。まだ始めてもいないのに、いくつもの不安が頭をよぎりました。
しかし、私があげたこの「始める前の不安」というのは、弊社の担当となってくださったビズリーチのダイレクトリクルーティングコンサルタント・工藤さんとお話をし、実際いざ取り組んでみると「気にするほどのことではなかった」と気付きました。
工藤さんとの打ち合わせでの会話やサポート内容は、「社員数15人の会社が、たった3ヶ月で2人の優秀なプロジェクトマネージャーを採用できた話」の記事で詳しく書いていますので、ぜひそちらをご覧ください。
スカウトで意識した4つのポイント
担当コンサルタントの工藤さんのアドバイスを聞き、不安は解消され、「よし、半年後には、求めている人材が1人採用できていますように!」と気合いを入れ、覚悟をしました。そして、その結果「たった3カ月」で、「2人の採用」。私たちも予想外でした。
「はじめてのスカウト」の成功要因について、弊社が意識した4つのポイントを解説していきます。

会う前から具体的な人物像がイメージしやすい、情報の濃い人材データベース
まず1点目は「求める人物像を具体的にし、その人物像に近い人を重点的に選んだ」ことです。これは言い換えると、「この人を採用するんだ」という人物を具体的に描いて、その人物像に近い人だけを重点的に選ぶということ。その結果、そこまで多くのスカウトを送らずに、求める人材に出会うことができました。
この取り組みができたのはなぜか。それは、ビズリーチの「人材データベース」のおかげでした。登録されている会員の方々のレジュメ(職務経歴書)の情報がとにかく濃い。情報がしっかり入力されているビズリーチのデータベースであったからこそ、「求める人物像を具体的にし、その人物像に近い人を重点的に選ぶことができた」と思っています。

「運命の出会い」をつくるスカウトに、何よりも時間と熱量を
続いて、ウェブライダーが意識したことの2点目、3点目をお話しします。「勤務条件や待遇面の『機能的な価値』以上に、『情緒的な価値』を伝えるようにした」と「最初に送るスカウト文の内容に徹底的にこだわった」なのですが、ここで実際にお送りしたスカウトをご紹介したいと思います。
「読み上げる」ことでわかる、メッセージに宿した思い・感情
スライドだとちょっと細かすぎて読みづらいと思いますが、この通り、私は2,700字におよぶファーストメッセージを書きました。

(こちらの記事から、実際に送ったスカウト文をお読みいただけます)
このメッセージがどういったものであるか、本日は時間が限られてはいるのですが、読み上げたいと思います。
ちなみに、「読み上げる」という行為、これはとても重要です。読み上げたときに、「自分たちの感情を宿せない文章」というのは、いわゆる「人の心を動かす文章ではない」ということだと思っています。人に対して文章を書くときというのは、まず読み上げる。そして、そこに対して、自分の魂や熱量をどれだけのせることができたか、振り返ってみましょう。
ファーストメッセージとは候補者に与える企業の第一印象を左右する、非常に重要な存在です。私は、この「スカウトメッセージ」に、何よりも時間と熱量をかけるべきだと思っています。なおこのメッセージは、全ての方に、●●●部分(お名前/勤務先企業名)以外は同一のものをお送りしました。
「理由」や「過程」をしっかり伝えることで、相手の「疑問」を取り払う
このスカウトメッセージですが、もちろん熱量を込めて書きつづったのですが、決して思うがままに書いたのではなく、読む方にとって読みやすく、わかりやすく、テンポよく読めるような文体を意識しています。

(こちらの記事から、実際に送ったスカウト文をお読みいただけます)
さらに、候補者の心に響くような情報を入れているところがポイントです。黒文字のなかに、青文字があります。実際のスカウトは、このような装飾はできないのですが、この青文字は「なぜウェブライダーという会社を立ち上げたのか」「なぜこのサービスを展開しているのか」といった、理由や過程を伝える役割を果たしています。
理由や過程が伝わっていないなかで、どれだけ思いを伝えても「どうしてそんなことをしているのだろうか?」と疑問が先に湧いてしまい、熱量が伝わりません。相手の疑問をまず取り払ったうえで、思いや熱意を語る、この順番が重要です。
心に響く「言葉」の生み出し方
ファーストメッセージの重要性についてお話しさせていただきましたが、では、どういった情報を入れたらよいのか。ここで重要になるのが「自社の魅力について、どれだけ言葉で語れるか」です。
心を動かすのは、機能的な価値 < 情緒的な価値
いわゆる「言語化」という作業ですが、ここでありがちなのが「機能的な価値」については、いろいろと言葉にしやすいことです。たとえば、「オフィスがキレイ」「給与が高い」「休みが多い」…これらは全て「機能的な価値」です。しかし、こういった機能的な価値以上に「うちの会社は、世の中の人にこういった感謝をされている」「この仕事を続けることで、こういったうれしいことがある」といった「情緒的な価値」を感じてもらうことが、相手の心を動かすうえで重要です。
では、この「情緒的な価値」を感じてもらうにはどうしたらよいのか? そのためには、話している内容を、さらに「相手に想像してもらう」ことが必要です。
「相手に想像してもらう」ために、意識すべき3つのポイント

相手に想像してもらうためには、3つのことを意識しましょう。
まず、先ほどのスカウト作成のコツでもお話ししましたが、「プロセス」や「理由」を伝えることがポイントです。ある事実に対して、プロセスや理由などの背景情報が加わることで、相手は想像しやすくなります。
そして、そのうえで大切なのが「自分の言葉で書く」ということです。「難しい言葉」を並べるのではなく、何か「語りかける」ような、1対1のコミュニケーションであることを意識した言葉にするといいでしょう。
「情緒的な価値」を想像させるメッセージを作るには、自分たちに対して「なぜ?」「どうして?」を繰り返し、自分たちとひたすら向き合うことが重要です。自問自答を徹底的に行うことで、きっと「自分たちの言葉」が見つかるでしょう。
小さな「物」に目を向け、丁寧に「語れる」企業というのは「物語性」がある
このような言語化をする際に、弊社ではよく「『物語』を意識しよう」と言います。「物語」というのは、「物」を「語る」と書きますが、この「物」というのは、より「小さな物」をイメージするといいでしょう。たとえば「夢」のような「大きな物」を語ることも、「物語」と思われやすいかもしれません。しかし、語る「物」が小さければ小さいほど、その「物」に対する情報密度は高くなるのです。
- なぜ、この社名なんだろう
- なぜ、このロゴなんだろう
- なぜ、このオフィスデザインなんだろう
このような小さなことに目を向けることによって、言葉を丁寧に、具体的に、紡ぐことができます。
語っている話のスケールが大き過ぎて、聞いている相手が想像できる範囲を超えてしまい、実はメッセージが伝わっていない、というケースは往々にしてあるものです。相手が想像できる範囲、想像できる描写によって、小さなことを丁寧に「物語性」を意識してスカウトを書くことが、重要になります。
「言葉の定義を共有できる」人こそが、「価値観が合う」人
「スカウトで意識した4つのポイント」の最後ですが、「面談や面接のなかで、ウェブライダーでの仕事の雰囲気をしっかり伝え、うちで働くイメージをもってもらった」について、お話しします。
自社に合う人材を採用する際に重要となるのが、スキルフィット以上にカルチャーフィットであると、私は考えています。スキルというのは入社後からでも磨くことができますが、価値観を後から変えることは難しいものです。いくらスキルが条件を満たしていても、価値観が合わなければ、今いる社員にとっても、その方にとっても、やりづらい職場環境になってしまうと思うのです。
そこで、私たちは「価値観が合う」ことを重視し、私たちが大切にしている「言葉」、その言葉の定義を共有できるメンバーを求めました。

(スライドをPDFでご覧になりたい方は、こちらから無料でダウンロードができます)
ウェブライダーには、「言葉の定義表」や「行動規範表」というものがあります。面接では、これらの表をもとに、たとえば「『興味』と『関心』の違いについて、あなたはどうお考えですか?」と質問し、その回答内容から、言葉や行動に対する「価値観」が自分たちと合うかを判断して採用活動を進めていきました。
▼ウェブライダーが候補者とのカルチャーフィットを判断し、仕事の雰囲気を伝えるために行った取り組みなどについて、詳しく知りたい方は、こちらの記事をお読みください▼
「言語化」により、採用活動以外でのメリットも
こうして、ビズリーチを使った採用活動の成果がこちらのスライドの通りです。

ウェブライダーのスカウト返信率は「9.5%」でしたが、これは担当コンサルタントの方いわく、プロジェクトマネージャーの平均(5%)に比べると高い数字だったようです。これは、私たちがスカウトを進めるにあたって、自社の魅力や強みをあらためて客観視し、「言語化」した成果なのではないかと考えています。
また、想定外のメリットもありました。自問自答を繰り返し、自社の魅力や事業などを徹底的に「言語化」したことで
- 他社との差別化
- 成長シナリオ
- 文化価値観
などが明確になり、自社のブランディングが強化され、事業の成長にもつながったのです。
弊社が伝えたいことはただ1つです。言葉にしないと伝わりません。自分たちに問いを投げかけ続けながら「言語化」をしていきましょう。

まとめ
セミナーの最後は、「言葉はビジュアル以上に『相手の想像を膨らませる力』をもつもの。言葉単体から広がる世界、質量を感じていただければと思います。言葉がもつ可能性をぜひ信じてみましょう」という、松尾様の熱いメッセージで締めくくられました。
下記の松尾様が執筆・編集した記事からも、詳細な取り組みがご覧いただけます。採用活動の参考にしていただけると幸いです。
執筆・編集:瀬戸 香菜子(HRreview編集部)
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