帰属意識を高める方法とは? エンゲージメントとの違いも解説

近年、離職防止、採用後の早期戦力化、テレワークの推進等、さまざまな側面から、従業員の帰属意識やエンゲージメントに注目している企業も多いようです。帰属意識やエンゲージメントについて、言葉の定義から株式会社ビジネスリサーチラボの伊達洋駆さんに教えていただきました。

伊達 洋駆氏

講師プロフィール伊達 洋駆(だて・ようく)氏

株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役

神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。修士(経営学)。同研究科在籍中、2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。2013年に神戸大学大学院服部泰宏研究室と共同で採用学研究所を設立し、同研究所の所長を務める。2017年に一般社団法人日本採用力検定協会の理事に就任。

ビジネスリサーチラボでは、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『オンライン採用 新時代と自社にフィットした人材の求め方』(日本能率協会マネジメントセンター)や『人材マネジメント用語図鑑』(共著、ソシム)など。

帰属意識とは?エンゲージメントや従業員満足度との違いは?

会社と従業員のつながりを表す言葉には、「帰属意識」「エンゲージメント」「従業員満足度」などがあります。いずれも人事ではよく使われる用語ですが、意味があいまいなまま使われていることも多いようです。まずは、それぞれの定義や違いを整理しましょう。

帰属意識とは

「帰属意識が高い」というのは、所属している組織に対して「愛着を感じている、一体感を持っている」という状態です。学術的には「組織コミットメント」と呼びます。

エンゲージメントとは

エンゲージメント(engagement)は、婚約・雇用・従事・誓約といった意味の英語です。人事用語としてのエンゲージメントには、大きく分けて「従業員エンゲージメント」と「ワークエンゲージメント」の2つがあります。

従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントは近年多く見かける言葉ですが、学術的に合意のとれた定義はありません。帰属意識、職務満足、定着意思なども含まれ、かつ意味が膨張し続けている言葉です。「従業員と会社とのつながりに関わる、いろいろなよいこと」を表しています。

ワークエンゲージメント

ワークエンゲージメントは「仕事に対して熱意や活力がある、打ち込んでいる」という状態です。帰属意識(組織コミットメント)が「組織と個人との関係性」を表すのに対し、ワークエンゲージメントは「仕事と個人との関係性」を表す概念です。

従業員満足度とは

「職務満足」とも呼びます。給料、仕事、評価などいろいろな要素を含めて総合的に満足しているかを数値化して見るものです。

3つは異なるものだが連動する

帰属意識、ワークエンゲージメント、従業員満足度の3つは別のものですが、相互に関係しています。例えば、帰属意識が高まらないとワークエンゲージメントも高まらず、従業員満足度も低くなります。「この会社は嫌いだけど、仕事は好き」という状態は難しく、「今は仕事が好きな人も、会社を嫌いだと仕事もだんだんとイヤになっていく」という具合に、連動していると考えるとよいでしょう。

帰属意識とそれぞれの概念の関係性

帰属意識は古くから研究されていますが、「帰属意識という古い概念を捨て、新しいエンゲージメントを重視すべきだ」などと性急に解釈すると誤った方向に向かう可能性もあるので注意しましょう。

本記事では以下、帰属意識とワークエンゲージメントを中心に解説していきます。

帰属意識やワークエンゲージメントが高いとどうなる?

帰属意識やワークエンゲージメントを高めるメリットは、大きく3つあります。

離職率が下がる

帰属意識は離職に対して非常に有効な指標になることがわかっています。つまり「組織への愛着が増せば、離職する可能性が下がる」ということです。

役割外行動が促される

帰属意識が高いと「役割外行動」が促されることもわかっています。役割外行動とは職務として定義されていない仕事のことで、例えば、困っている同僚を助ける、落ちているゴミを拾うなど。こうした行動までジョブディスクリプション(職務記述書)で定義することは不可能ですが、誰かがやらなければ組織の機能は低下します。帰属意識が高い人は会社に愛着があるので、会社の問題を「自分の問題」としてとらえ、行動できるのです。

パフォーマンスが上がる

ワークエンゲージメントはパフォーマンスに影響することがわかっています。仕事にいきいきと打ち込み、熱心に取り組んでいればパフォーマンスが向上するのは必然。逆に、ワークエンゲージメントが下がればパフォーマンスも下がります。

帰属意識とパフォーマンスの関係は?

帰属意識とパフォーマンスの関係については、「帰属意識が高いとパフォーマンスが上がる」という研究報告もありますが、「低くなる」「関係がない」というものもあり、一貫していません。しかし、従業員の帰属意識を高めると離職意思が下がり、役割外行動も増えるために、働きやすい環境になって、間接的にパフォーマンスに好影響を与える可能性はあるでしょう。

帰属意識やワークエンゲージメントが注目される背景

これらが注目されている背景について、直近の話題から見ていきましょう。

テレワークの導入

コロナ禍でのテレワーク導入によって、従業員が会社から物理的に離れて働くようになり、帰属意識やワークエンゲージメントに注目する企業が増加。従業員にとっても「組織や仕事と自分の関係」を再考するきっかけになっています。

「組織と個人の関係性」の変化

近年、終身雇用で会社依存のキャリア形成から、個人の自律したキャリア形成への変化が求められ、組織と個人の関係性である帰属意識を見直すことが必要になりました。一方で「仕事が充実していれば、組織との関係はそこまで必要ないのでは?」という考え方もあり、仕事と個人の関係であるワークエンゲージメントも注目されるようになりっているのでしょう。

離職率の高まり

大企業で若手社員の離職率が高まってきたことが顕在化し、離職率を下げるための施策として帰属意識を高める方法に注目が集まっています。

帰属意識が下がる要因

帰属意識は「組織と個人の関係性」なので、組織側からのアプローチによっても大きく上下します。まずは経年変化や下げる要因を知っておきましょう。

最も帰属意識が高いのは入社したタイミング

帰属意識が最も高いのは、会社に入ったタイミングです。そこからずっと下がっていき、7年後あたり(昇進・昇格が多いタイミング)に上がり始めます。

採用のタイミングでは、求職者が会社への愛着を感じないと入社してもらえません。ですから、採用活動自体が帰属意識を高める工程になっていて、帰属意識が高まった人が入社するのです。

■帰属意識の変化イメージ

帰属意識の上下イメージ

『組織と個人』(鈴木竜太)より改変

では、入社後に帰属意識が下がっても、なぜ辞めないのでしょうか。その理由の一つは、「会社はすぐ辞めるべきではない」という「規範的コミットメント」が歯止めをかけること。もう一つは、「続けるほうが得をする。外に出るほうが損をする」という「存続的コミットメント」。つまり、規範と損得勘定が感情にふたをして、離職を抑え込むのだと考えられます。

しかし現在ではその規範が揺らいできたともいえます。年功序列が緩和され、我慢して残り続けても得をしにくいし、転職先があれば出ていっても損をしない。そうなると帰属意識の低下が離職に直結してしまうのです。

入社後の「リアリティショック」

入社後に帰属意識が大きく下がる最大の原因は「リアリティショック」、つまり「入社前に思っていたのと違う」という状態です。例えば、採用時に会社側が「新しいことにどんどん挑戦しています」と説明していても、実際に入社してみると、そう簡単にはいかないもの。そこで「思っていたのと違う」とギャップが生まれるのです。ただし、勤続が長くなるとリアルなビジネスがわかってきて「こういうものなんだな」という認識に変わっていきます。

希望する業務ができない

入社時に「こんな業務がしたい」と具体的な希望がある場合、それを実現できないとワークエンゲージメントはもちろん、帰属意識も低下します。中小企業では採用時にある程度業務を確約できますが、大企業では確約できないことも多く、難しいところです。

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社歴の浅い社員の帰属意識を高める方法

では、入社後の社員にはどのような関わりが有効なのでしょうか? オンボーディングでは特に帰属意識について紹介します。

帰属意識を保つ3つのポイント

入社直後の帰属意識の下落幅を緩やかにして、できるだけ高く保つための方法は3つあります。

【ポイント1】仕事の種類と裁量を検討する

帰属意識を高める仕事の条件は、「複雑でさまざまなスキルを使う」「自律性(裁量)がある」の2つです。単純作業で指示通りにやる仕事は帰属意識が下がりやすくなります。

例えば、新卒採用時に行うインターンシップやグループワークは「複雑でさまざまなスキルを使い、自律性のある仕事」に相当します。しかし、入社後は新入社員に複雑な仕事を自律的に行わせるのは難しいため、最初は簡単で指示通りに行う仕事が多くなります。この場合は社内の小さな課題解決でもいいので、何かしら任せる部分を作るとよいでしょう。

【ポイント2】役割やレポートラインを明確にする

自分の役割がよくわからない「役割曖昧性」も帰属意識を下げるので、担うべき役割を明確にすることも重要です。また、仕事のやり方が違う複数の上司や先輩がいて板挟みになるような環境でも「役割葛藤」が起こり、帰属意識が下がるので注意を。レポートライン(業務報告や意思疎通の系統)も明確にしておきましょう。

【ポイント3】上司から働きかける

上司のリーダーシップ行動には、タスク面(仕事の計画ややり方を教える)と、人間関係面(周囲との関係性をメンテナンスする)の2つがあります。新入社員に対しては、入社後しばらくは人間関係面の調整を進めることが重要です。

3つのうち、最も重要なのは上司

ビジネスリサーチラボが提供する組織サーベイの結果を分析すると、上記で紹介した「仕事・役割・上司」の3つのうち、帰属意識に最も影響が大きいのは「上司」でした。帰属意識とは「組織と個人の関係性」ですが、組織というのは抽象的なもので、新入社員にとってみれば「組織を代表しているのが上司」と認識する傾向が強いためでしょう。

特にオンボーディングで行うと良いこと

学術的にいうと、オンボーディングとは新入社員の「組織社会化」(組織に適応していくプロセス)を促すことです。組織社会化がうまく進むと帰属意識が高まります。そのためのポイントは2つあります。

教育制度を整備する

組織社会化するための「社会化戦術」は大きく分けると下記の2つになります。

  • 制度的戦術=整備されていて体系的に行うもの。新人研修やメンター制度など
  • 個別的戦術=意図的な働きかけでなく、その場で対応していくもの

上記2つのうち、組織社会化をうながすためには制度的戦術の方が効果的です。個別的戦術ではうまくいかないことが多いので、しっかりと計画してオンボーディングしていくことが大切です。

新入社員がプロアクティブ行動を取りやすくする

組織社会化のためには、新入社員側の「プロアクティブ行動」も重要です。プロアクティブ(proactive)とは「先回りして、積極的に」といった意味。例えば、自分から周囲に仲良くなっていけるように話しかける、仕事のフィードバックをもらいにいく、自分の役割と能力が仕事とマッチしないときに相談をするといった行動などが挙げられます。

しかしプロアクティブ行動は、「やっていいよ」と言われないと、遠慮や気後れをしてできない新入社員も多くいます。会社側はプロアクティブ行動が取りやすくなるように、環境を整えて支援しましょう。

テレワークで帰属意識やワークエンゲージメントはどうなる? 

テレワークを導入している企業では、帰属意識やワークエンゲージメントがどう変化するのか、気になるところでしょう。それぞれについて見ていきます。

テレワークと帰属意識の関係

テレワークなど「場所の自由」と帰属意識の関係性については研究が進んでおり、意外にも「あまり関係がない」ということがわかっています。テレワークで帰属意識が下がっていくようなイメージもありますが、テレワークで帰属意識がどうなるかは「人による」ということです。

ただし、フレックスタイム制度や年次有給休暇の取りやすさといった「時間の自由」は帰属意識を高めることがわかっています。帰属意識の観点では、場所の自由度よりも時間の自由度を高める方が効果的なのです。

テレワークとワークエンゲージメントの関係

テレワークでは自分の裁量が増えて「仕事の自律性」が高まるので、ワークエンゲージメントは上がります。しかし同時に「役割曖昧性」も高まりやすく、ワークエンゲージメントが下がります。この相反する2つがぶつかり合って相殺されるので、理論的にはプラスマイナスゼロに近づきます。

しかし、ビジネスリサーチラボが提供する組織サーベイの結果によると、テレワークではワークエンゲージメントが下がっている傾向があります。従来のテレワークは「選択肢」でしたが、コロナ禍で「強制」になり、望まないテレワークを強制されたことでマイナス面が大きく出ているのだと推測されます。

大事なのはコミュニケーション面のサポート

現状では、テレワークで役割曖昧性が高まったこともあり、「ジョブ型雇用」が注目されています。ただし、ジョブディスクリプションを整えて役割を明確にすれば、役割曖昧性が低くなってワークエンゲージメントが上がるのかといえば、そう単純な話ではありません。

ジョブディスクリプションは役割を決める要素の一つ。現実としては、上司やチームのメンバーとコミュニケーションを取らないと、細かい部分の役割は明確にならないのです。テレワークでは会社側がコミュニケーション面をしっかりサポートしていくことが、帰属意識やワークエンゲージメントを保つために重要と言えます。

エンゲージメントを高めていく5つのプロセス

帰属意識やワークエンゲージメント、職務満足度などを高めていくには、まず自社の課題を把握した上で、施策・改善のPDCAを回していくことが必要です。そのステップを紹介します。

【ステップ1】自社に重要なエンゲージメントを定義する

まず、明確な言葉の定義が必要です。自社にとって重要なのは、帰属意識なのか、ワークエンゲージメントなのか、職務満足度なのか。しっかり言語化して定義しましょう。

【ステップ2】指標や調査項目を検討する

ステップ1で定めたエンゲージメントについて調査して数値化するだけでは、どんな手を打てばいいかわかりません。エンゲージメントに影響を与える要因は何かを考え、指標や調査項目を作りましょう。調査結果から課題の優先順位を決めれば、対策を立てやすくなります。

【ステップ3】調査する

ステップ2で定めた調査項目について従業員へアンケート調査を行い、状況を可視化します。

【ステップ4】施策を立案・実行する

改善施策を立案し、実行します。何か一つを実行すれば問題が解決するというケースはまれなので、複数の施策を検討するとよいでしょう。

【ステップ5】モニタリングする

定期的にアンケート調査を行い、改善が進んでいるかモニタリングします。問題があれば、原因を突き止め、新たな施策を立案、実行していきます。

エンゲージメントサーベイの注意点

エンゲージメントを高めていく工程で特に重要なのは、上記のステップの【1】と【2】です。エンゲージメントサーベイのツール選択から始めないように注意してください。自社で無理であれば専門家の助けを借りましょう。合致したツールがあれば使う、なければ専門家とともに自社で作る、と考えましょう。

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執筆:代 亮子、編集:立野 公彦(HRreview編集部)

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著者プロフィールBizReach withHR編集部

先進企業の人事担当者へのインタビューや登壇イベントなどを中心に執筆。企業成長に役立つ「先進企業の人事・採用関連の事例」や、 事業を加速させる「採用などの現場ですぐに活用できる具体策」など、価値ある多様なコンテンツをお届けしていきます。