2023年11月28日、株式会社ビズリーチは「関西に拠点を置く独自の人事戦略を実施している企業様」をお招きし、「人材採用」、「定着・活躍」 における成功事例や見えてきた課題をご紹介するイベント「Human Resource Development Forum」を開催いたしました。このセッションでは、オムロン株式会社様とダイキン工業株式会社様に登壇いただき、変化の激しい採用市場に対応するための独自の取り組みや、見えてきた新たな課題について、パネルディスカッションを行っていただきました。
オムロンが目指す、採用の「質」の向上

登壇者プロフィール新村 輔氏
オムロン株式会社 グローバル人財総務本部 人財開発部 リクルーティングセンタ センタ長
オムロンは、創業90年、京都市を拠点に162のグループ会社を持っています。体温計や血圧計、電動歯ブラシなど、ヘルスケア商品のイメージが強いですが、ファクトリーオートメーションなどの制御機器、電子部品事業が売上の半分以上を占めている会社です。
私が所属するリクルーティングセンタは、国内のグループ会社の新卒・中途採用、人財流動(副業受け入れや社内応募・公募制度)などを担当する横串の組織です。ミッションは、「各事業/本社部門の人財ポートフォリオを質量共に充足させ、事業戦略推進に貢献するべく、必要とされる人財を獲得し続ける」こと。大事なポイントは“し続ける”ということです。
変化の激しい時代で、3~5年先も人財を充足できる種蒔きが欠かせません。キャリア採用では、国内グループ会社で200名強の採用計画で動いていますが、エージェントへの依存度が高く8割を超えています。このままでは数年先を戦っていけないという危機感があり、採用ブランディングを高めることと、潜在層へのアプローチが中期的な重点テーマとなっています。
本日お話するのは、短期的重点テーマです。200名強の採用数の達成と同時に、質にもこだわり、データをもとにPDCAサイクルを回せる状態を目指していく。そのために進めている取り組みをご紹介したいと思います。

現状の課題としては、入社後の活躍状況を仕組みとして把握できていないことが挙げられます。採用チームの、採用“量”をクリアする力はすでに強く、2022年度の充足率も非常に高い数値で終えることができました。
一方で、採用することがゴールになっていないか、という懸念があります。具体的な課題として、
- 採用の見極めについて面接官個人の主観によるところが大きく、評価にバラつきがある
- 採用の評価軸と入社後の評価軸に一貫性がない
- 入社後の活躍状況などをリアルタイムに可視化できておらず、採用して終わり
- 採用の精度を高めるサイクルが回っていない
などがあり、人財の質は高まっているのか、採用が事業成長につながっているのかの検証が行えていません。
そこで目指したのが、採用時と入社後が一気通貫でつながっており、狙いを持って採用の質を向上させ続けている状態を作ることです。具体的には、
- 客観的に再現性のある活躍が見込まれる人財を評価できる
- 入社時の評価と入社後の評価を比較検証できる
- 入社した人財の活躍状況がタイムリーに把握できている
- ハイパフォーマーや離職者の傾向を明確化し、採用チームにフィードバックできている
状態を理想と掲げています。

まず取り組んだのは、「選考の質向上」です。属人化した評価を脱すべく、構造化面接を導入し、面接官のトレーニングも実施。再現性のある評価ができる選考を目指しています。
次に、「オンボーディングの強化」です。活躍状況をタイムリーに把握できるように、入社後に課題があればすぐに人事が踏み込める体制を作り、また、採用時に起因する課題などがあれば採用チームにフィードバックしていきます。
「ハイパフォーマー/離職者分析」では、入社後の指標を用いてハイパフォーマーや離職者の傾向分析に取り組んでいます。入社後の活躍には、配属環境や育成も影響していますが、入口である採用の責任も重大です。傾向分析を採用基準にフィードバックし、PDCAサイクルを回そうと取り組んでいます。

まだまだ取り組みの途上ですが、少しでも質のいい採用につなげ事業貢献できるように、継続していきたいと考えています。
キャリア採用推進のための人事と部門の取り組み

登壇者プロフィール松浦 秀樹氏
ダイキン工業株式会社 人事本部 採用グループ 担当部長
ダイキン工業は、グローバルNo.1の空調メーカーとして、売上の9割を空調事業が占めています。海外展開の成功が影響し、業績は20年間右肩上がりを続けています。空調機普及率は世界全体で見るとまだまだ低く、2050年には売上がさらに3倍に増えると試算しています。そうした背景もあり、人材強化は大きな経営課題となっています。
2022年以前は、事業計画をもとにキャリア採用ニーズが人事に寄せられ、人事主導で人材紹介会社を利用していく“待ち”の採用でした。しかし、転職顕在層へのアプローチだけでは欲しい人材にリーチできないことから、2022年からビズリーチを導入してダイレクトリクルーティングを推進。部門責任者自らスカウトする“攻め”の採用を強化しています。
「 “攻め”の採用をやりたい」という積極的な部門から導入をスタートしていき、一過性で終わらせないように、継続のメリットを伝えるなど人事からのフォローも行っています。全部門への導入はまだできていませんが、「現場が動かなければ」と危機感を持つ部門が増えてきたと感じています。
ここから、私が機械系開発部門に所属していたときの取り組みをお話したいと思います。
開発部長として現場で感じていたのは、「見えない」「会えない」という課題でした。そもそも転職市場に欲しい人材がいるかが不明で、探したくても探す手段がありませんでした。どんな技術を持った人材が必要なのかが社外に伝わっておらず、人材紹介会社からの紹介数も低下。「紹介を待つだけではダメだ。自ら人材を探せる仕組みが必要だ」と感じていたときに、ビズリーチを使い始めました。
当初は同業他社に勤める人材のみにスカウトを送っていましたが、求める人物像を要素分解することで、同じような技術に取り組んでいる他の業界の人材にもアプローチできるようになり、ターゲットを広げることができました。
また、カジュアル面談だけでは説明しきれないことも多いため、実際の開発現場の見学を開発者自らが実施し、ありのままの職場を見てもらう運用も確立しました。
そうした現場経験を経て、人事側になって改めて見えた課題は、「いかにして最終的に選んでもらえるか」の施策がまだまだ弱いところです。ダイキン製品が誇る技術のすごさや事業の面白さが伝わりづらかったり、入社後のキャリアパスを具体的に描けなかったり。潜在層に声をかける以上は、自社について知ってもらうために手間と時間がかかります。すごさや面白さをより効率よく伝えるために、職場イベントの実施などもできないか検討しています。
全部門が現場主導で取り組むまでにはまだまだ至っておらず、巻き込みの難しさを実感しています。人事と部門の両方を経験しているからこそ分かる、お互いの視点を取り入れながら、コツコツと提案を進めていきたいと考えています。
オムロン×ダイキン×ビズリーチパネルディスカッション
▼モデレーター
株式会ビズリーチ ビズリーチ事業部 ビジネス開発統括部 関西DCS部 関西総合企画グループ マネージャー 小笠原 啓介
【トークテーマ(1):中途採用の拡大に伴い見えてきた新たな課題】
小笠原:お二人とも、現場のリアルな意見や課題をオープンにお話いただき、ありがとうございました。ここからはパネルディスカッションとして、3つのテーマを話していきたいと思います。
オムロン様、ダイキン工業様、それぞれのキャリア採用を拡大してきたタイミングや採用チームの体制についてお聞かせください。

新村:
もともと新卒入社の社員の割合が大きく、10年前のキャリア採用は年間50~60名でした。現在は200名強なので、この10年で4倍ほどにまで伸びているということです。リクルーティングセンタ全体では30名弱の体制で、キャリア採用の担当はその内10名強となっており、残りが新卒採用と人財流動領域(副業受け入れ、社内公募・公募制度)という配置になっています。以前は60名のキャリア採用を約1.5人で行っていたので、チーム規模は格段に大きくなりました。
松浦:
当社は、2022年から2023年にかけてキャリア採用数は2倍になりました。採用メンバーも強化しているところです。
小笠原:
松浦様は、機械系開発部門の部長として多忙だったかと思います。その中で積極的に採用に取り組んだのはなぜですか。
松浦:
採用を強化しないと開発が回らないという現実があったからです。人が足りなくて大変そうに業務を回しているメンバーを見て、「自分から採りにいかないとダメだ」と考えました。
【トークテーマ(2):採用拡大に伴う社内のプロセス管理やデータ活用などの取り組みについて】

小笠原:
採用数の拡大で、プロセス管理やデータ活用にも取り組んでいると思います。選考から活躍に至るまでに、具体的に取り組まれていることはありますか。
新村:
この部分は、まだまだ道半ばです。リクルーティングセンタはグループ各社の採用をカバーしているのですが、これまで各社が個々に採用を行ってきたので使っているシステムも違うんです。いきなりシステムを変えると現場も混乱するので、今はシステムの一元化も一旦見送っています。プロセスの標準化は今後改善していくべき課題だと思っています。
これからは、潜在層の人財にいかにオムロンファンになってもらって、プールしていくかが重要なテーマになると思います。データベースを活用すべく整理していくにあたって、インプットのところを一元化していかないと効率が悪い。どう進めていくか、早急に検討して取り組んでいきたいです。
小笠原:
採用人数が増えると、いかに効率を上げるかが重要になってきますよね。松浦様は、質の部分で「カジュアル面談+職場見学」など、手間をかけて部門採用をされていたかと思います。手をかける部分と手をかけずに効率化する部分をどう区分していこうと考えていますか。
松浦:
社内で手を動かすところを簡素にしないと時間がかかるので、面談調整などのオペレーション業務はアウトソースしていきたいです。面談のアウトソースは考えていないので、面接官トレーニングやマインドチェンジに向けた意識のすり合わせには時間をかけていかなくてはいけません。
今は、部門から「こんな人が欲しい」と熱心に情報が来るのですが、「その人に対して、うちは何を提供できるのか。入社後にどんなスキルを得られるのか」という候補者視点での情報整理がまだまだできていません。それではアトラクトできないということを部門に伝え、PRへの意識改善をしていくことが大切だなと感じています。

【トークテーマ(3):社内人材の定着や抜擢、離職防止に向けた取り組み】
小笠原:
入社後の定着、活躍というテーマでもお伺いしていきたいと思います。離職防止に向けていかにミスマッチをなくすか、選考プロセスの改善以外にどんな取り組みをされていますか。
松浦:
取り組み以前の課題については「キャリア入社で経験もあるから大丈夫だろう」と考えてしまい、現場のフォローができていないところが多分にあったことです。経験やスキルはあったとしても、仕事を回していくために必要な人脈を作ることは欠かせないでしょう。誰に何を聞くとうまく仕事が進むのかといったフォローは現場主導で進めるよう、仕組みづくりが必要だと感じています。
新村:
オムロンでは、定着・活躍に向けて公募などの社内人財流動や副業人財の受け入れにも力を入れています。2030年を見据えれば、もっと人の流れがシームレスになり、テーマごとに人が集まり、プロジェクトが終われば解散するという働き方が進んでいくでしょう。そうした動きを、社内外の人とも自由にできる状態にしていきたいと思っています。結果、一人ひとりの専門性が引き出され、活躍のフィールドが広がると思っています。
小笠原:
社内副業人財の受け入れを積極的にされているとのことですが、それによる社内の変化をどう感じていますか。
新村:
絶大なる影響があります。社内にいながら「越境体験」ができることで社員の刺激にもなりますし、周りがずっと頭を悩ませていたテーマを、ほかの領域から来た副業人財が一瞬で解決した、ということもありました。現場からは「こんな人財、今までどこにいたんだ!」という声をもらっています。
新卒入社の社員が多いので、オムロンでずっと同じ部署という人財も多い。副業人財と協業したことで「もっと視野を広げたい。自分も成長したい」という声が寄せられるなど、育成やキャリア開発の観点でも効果があると感じています。

小笠原:
最後に、人事という立場から、お二人がこれから何に取り組んでいきたいか展望をお聞かせください。
松浦:
部門と人事の架け橋になれる立ち位置にいるので、何かあったら相談してもらえる存在になりたいですね。今まで話ができていなかった部署の人とつながるということを、私自身もやっていきたいと思っています。
新村:
当社の人事は、長期経営計画の中で「人的創造性(=付加価値/人財投資)」にコミットしています。人事の立場で事業成長にコミットするのは勇気がいりますが、ぜひそこにコミットしていきたい。事業貢献ができる人事になっていきたいです。

