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ビジネスやマネジメントでよく使われる「フィードバック」ですが、「ダメ出し」「上司からの小言」といったネガティブな印象を持たれてしまうケースも少なくないようです。
しかし、フィードバックは伝え方やタイミング次第で、相手とよりよい関係を築けるだけでなく、人や組織の成長を促すカギとなりえます。
株式会社ビズリーチでは、2021年3月5日・12日にビズリーチを導入する企業を対象に「フィードバック」をテーマとしたオンラインセミナーを開催。
第1回のセミナーでは「採用活動におけるフィードバック」にフォーカス。なぜ採用活動においても「フィードバック」が重要になるのか、動機付け(アトラクト)につながる候補者へのフィードバックの進め方や、オンライン採用で心がけたいポイントなどについて、株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役・伊達洋駆さんが解説しました。

講師プロフィール伊達 洋駆(だて・ようく)氏
株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
ビジネスリサーチラボでは、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、ピープルアナリティクスやエンゲージメントサーベイのサービスを提供している。近著に『オンライン採用 新時代と自社にフィットした人材の求め方』(日本能率協会マネジメントセンター)。
そもそも「フィードバック」とは
まずはフィードバックの定義から確認していきましょう。
フィードバックのシンプルな定義は、「他者からのパフォーマンスに関する情報の提供」です。

この定義に基づいて考えてみると、採用活動のなかでは、フィードバックがなされるシーンがたくさんあります。インターンシップ、リクルーター面談、OB・OG訪問、採用面接、キャリア相談などさまざまな場面で、候補者に対し「あなたのこのエピソードが分かりやすくてよかったです」「次はこうした話をより具体的にされるといいですよ」などと話しているのではないでしょうか。内定を出す際も、「あなたのこんな実績やスキルを評価して、内定を出しました」など、理由を伝えているでしょう。
みなさんが「フィードバックである」と意識して相手へ伝えているかはさておき、前述のコミュニケーションはすべて「フィードバック」であり、採用活動においてもさまざまな場面でフィードバックの機会があることを押さえていただけたらと思います。

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良薬にも毒薬にもなる「フィードバック」
学術研究では、フィードバックを行った場合、行わなかった場合と比較して、相手(された側)のパフォーマンスが総じて高まることが検証されています。
では、採用活動での効果はあるのでしょうか。
新卒採用支援を手掛ける株式会社パフとビジネスリサーチラボが共同で行った調査によると、候補者がフィードバックに満足しているとその企業への関心度が高まるという分析結果が出ています。フィードバックをくれた企業に対する好感度が高まり、「この会社についてもっと深く知りたい」という意欲が芽生えます。
フィードバックによって候補者の成長を促すことができれば、入社後の教育コストの削減につなげられる可能性もあるでしょう。
ただ、フィードバックの難しいところは、すべてがポジティブな結果につながらないという点です。研究では、統計的に全体を分析するとパフォーマンスが上がるとされていますが、個別の研究を見ていくと、4割弱の研究において「フィードバックを行ったことでネガティブな影響を与える」という結果が出ています。

ここからいえるのは、フィードバックは良薬にも毒薬にもなりうる、ということです。なじみ深い「フィードバック」ですが、実は「取り扱い注意」の情報提供の方法であり、フィードバックの進め方によっては、よかれと思って伝えたことが相手の意欲や志望度を下げることにもつながってしまうのです。このことからも「フィードバックの実施方法」が非常に重要となることがお分かりいただけるでしょうか。
方法を間違えれば逆効果に!? フィードバックの進め方
ここからは、フィードバックの実施方法を、次の5つのステップで説明していきます。

- (1)情報を収集する
- (2)目的を共有する
- (3)信頼感を醸成する
- (4)情報を通知する
- (5)行動計画を立てる
フィードバックの具体的なアクションといえば、「(4)相手に情報を通知する」ことを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、フィードバックを進めるにあたっては、「情報通知」に至るまでにいくつかの大切なステップがあるのです。
(1)情報を収集する――「印象」ではなく「事実」にフォーカスする
「ここから始まるの!?」と思った方もいるかもしれませんが、「相手のパフォーマンスに関する情報を提供する」ためには、そもそも相手のパフォーマンスに関する情報を集める必要があります。採用活動においては、例えば候補者がどう振る舞っているか、何を話しているかが「パフォーマンスに関する情報」に該当します。

その際、情報収集のポイントとなるのは、「印象」ではなく「事実」にフォーカスすることです。そして、「記憶」に頼るのではなく「記録」することが、フィードバックを進めるうえで重要です。
具体的には、面接時にメモを取ったり、オンライン面接であれば候補者に確認したうえで録音・録画したりすることで、記録に基づいてフィードバックができるようにします。
人の記憶は脆弱で、それぞれの解釈や思い込みにより、いつの間にか事実がねじ曲げられていくものです。客観的な事実を記録に残し、それに沿ってフィードバックを行うことで、効果的なフィードバックにつなげられます。
(2)目的を共有する――候補者の理解を妨害する「評価懸念」とは?
次に、フィードバックの目的をすり合わせることも、大事なポイントです。
特に採用活動においては、候補者は「自分をよく見せよう」とする立場にいるため、面接官からの評価に対して敏感になりがちです。心理学では「評価懸念」と言いますが、相手からの評価を気にするあまり、本心とは異なる行動(反応)をしてしまう可能性があります。しかし、これではフィードバックの内容そのものや意図を正しく理解してもらえません。

そこで、フィードバックをする前に「これは『評価』ではなく、あなたの成長につなげる(成長を促す)ために行うもの」と、その目的を候補者と共有していきましょう。
進め方の一つの案ですが、「評価をする人(面接担当者など)」と「評価しない人(人事担当者、リクルーターなど)」を明確に分け、フィードバックは「評価しない人」が行うなど役割分担をするのもいいでしょう。
(3)信頼感を醸成する――候補者に「味方」と思ってもらうには、まず面接官の自己開示から
これは「就活対策本」などの影響もあるかと思うのですが、採用活動においては、候補者が企業を「攻略すべき相手」と認識しているケースが少なくありません。フィードバックを「自分に対する試験」ととらえ、「うまく対応しないと合格にならない」と評価懸念を高めてしまうと、せっかく企業側が「成長を促そう」と思って行ったフィードバックも効果を発揮しません。学術研究でも、フィードバックする人とされる人の関係性の質が低いと、学びにつながりにくいことが分かっています。

そこで、信頼関係を作ることが大切になりますが、どうすれば関係構築がうまくいくのでしょう。
一つの方法は、企業側が積極的に自己開示することです。
フィードバックを伝える際は、例えば「私は入社当初〇〇が苦手だったのですが…」と自分の体験談を伝えたうえで「〇〇という部分に気を付けると、もっとよくなると思いますよ」などと話してみるのはどうでしょう。
また、弊社がある企業をクライアントに行った「内定者調査」では、面接後に同じ担当者が面接のフィードバックを行うと、候補者の志望度が高まることが分かりました。さらには、こうしたフィードバックは高い頻度で行うことが有効だという分析結果も出ています。フィードバックに限った話ではありませんが、同じ人がこまめに連絡をして、コミュニケーションを重ねるほうが、関係構築において有効です。
(4)情報を通知する
どう情報を通知するか、つまり「どうフィードバックを伝えるか」を考えるうえで、ポイントは2つあるのですが、ここは、次回のレポートで詳しく解説します。
(5)行動計画を立てる――フィードバック後の「質問」が成長を促すカギに

フィードバックを伝えた後は「これからどうしていったらよいか」を一緒に考える時間を設けましょう。
言いっぱなしで終わりにするのではなく、「今後どう行動していくと、その魅力を伸ばせそうか」「どんな行動を変えると、より目標に近づけるか」などと質問を重ねながら、候補者が考えを深められる支援を行っていくのです。その際、「こうすれば、きっと実現できますよ」と可能性や期待を伝えることも、成長を促すうえで重要です。

あなたのフィードバックは、メンバー・候補者から「評価結果の伝達」と思われていませんか?
今回のレポートでは、あらためてフィードバックの定義・目的について振り返るとともに、フィードバックの事前・事後にやるべきことを整理しました。情報を通知する前後での「準備」と「フォロー」が重要であることに、お気付きいただけたでしょうか。
また、フィードバックを「する側」の知識・意識だけでなく、「される側」の認識(目的の共有)も、フィードバックの効果を高めるうえで大切なポイントです。
次回のレポートではどう情報を通知するか、つまり「どうフィードバックを伝えるか」について、詳しくお伝えします。またこの1年で加速した「オンラインコミュニケーションにおけるフィードバックのポイント」、さらには、セミナーのQ&Aセッションの内容を一部ご紹介します。
※掲載情報は記事制作時点のものとなります。
執筆:田中 瑠子、編集:瀬戸 香菜子(HRreview編集部)

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