少子高齢化、労働力人口の減少、経営環境の変化などにより、人材獲得競争はますます激化しています。人事担当者に求められる能力はより高度に、活動領域はより広範囲になっていく今、企業が人材獲得競争を勝ち抜くための採用プロフェッショナル、「プロ・リクルーター」の存在が注目されています。
本連載では、ダイレクトリクルーティングを積極的に取り入れ、「プロ・リクルーター」として活躍、実績を挙げている企業の経営者や人事担当者を表彰させていただき、人事業務に対するポリシーや取り組みを伺います。
第2回は、設立から13年で独立系CRO(※)として、高い成長力と品質を誇る組織になった株式会社インテリム。同社の取締役であり管理本部長も務める井上泰衡様です。
※Contract Research Organization:医薬品開発受託機関

取材対象者プロフィール井上 泰衡氏
株式会社インテリム 取締役兼管理本部長
製薬会社の創薬開発パートナーとして、2005年8月に設立された株式会社インテリム。派遣事業からスタートした同社は、「社員にとって安心して長く働ける職場環境」そして「アジアで最も卓越したCROになる」という大きな目標を達成するため、2008年に受託事業へ参入しました。
2016年から本格的に採用業務に関わり始めた井上様は、「最適な」人材に自ら会いにいくため、ダイレクトリクルーティングを導入。採用の目的を「人材獲得」にとどめず、応募者全員に「出会えてよかった会社」と思ってもらうための「ファンづくり活動」と定義しています。ファーストコンタクトのメール、面接での空気づくり、一人一人が納得するまでお話をする真摯な対応は、同社の企業ブランドのイメージ向上にもつながっています。
また、社員全員を採用活動に巻き込み、それぞれが「インテリムの良さ」とは何かを考え、言語化し、発信することで、社内のエンゲージメント強化にも貢献。
同社の採用活動に関わった人全てが「よかった」と思えるようなサイクルをつくられました。
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「ファンづくり」発想から生まれる良いサイクル
採用活動の目的は「候補者の選考」だけではなく、会社の魅力を伝える「ファンづくり活動」とも捉えています。会社を知る機会というのは、採用活動だけではなく、イベント、学会、営業先とさまざまな場面で存在しています。当社のように、専門性が高く狭い業界ですと、特にその機会が重要です。
その時、「いい会社ですよね」と言われるのか、「あの会社、採用面接を受けたことがあるけど、嫌な会社だったよ」と言われるのか、どちらが会社にとって良いかは明らかです。社外からの評価は、社員のモチベーションにも影響を与えるはずです。「同じ時間を使うなら、お互いにとって最大限良い成果を得よう」、そんな発想から、採用活動の目的が「人材獲得」から「ファンづくり」に広がりました。
そもそも「好き」になってもらわなければ、採用のスタートラインには立てない
まず応募者にインテリムという会社に好意を持ってもらわないと、私たちは選ぶことすらできません。応募していただいた方には、より興味を持っていただき、まず「好き」になってもらうことを目標としています。仮にご縁がない結果になったとしても、お互いが「面接をしてよかった」と納得感を得ることができるように心がけています。採用担当者は、会社の印象を最初に与える社員が自分であるということを十分意識する必要があると考えています。
また、現場責任者が行う面接では、時に候補者のサポート役として面接に同席することもあります。私との面談の際に聞いていた候補者の良いエピソードなどが、面接では引き出されていないこともあるので、その時には、「あの話をしてみたらどうですか」と、候補者に話を振ることで面接者のサポートを行います。せっかく時間を使っているのであれば、全てを出し切ったうえで、ご縁があるのかをお互いに判断してほしいからです。
一方で、弊社とは残念ながらご縁がなかった方からも、「私は不採用でしたが、友人を紹介したい」と、ご紹介いただくこともありますので、このような「ファンづくり」目線で採用活動を行うことの大切さを感じています。
採用イベントで一番うれしそうにしているのは、実は社員たち
当初は特定の社員に協力依頼をし、採用活動をしていました。しかし、採用に協力してくれている社員の表情が、いつもとても良い表情であることに、ある時気づいたのです。そこで、全社員でやれば採用活動とともに良い会社作りにもつながるのではないかと思うようになりました。
誰が説明しても、誰が面接をしても、同じように魅力を感じ、理解をしてもらえるような会社を作ることができれば、より多くの方にインテリムのファンになってもらえ、結果としてさまざまな人材の入社につながると考えています。
自社への自信が、リファラル採用(リファーラル採用)を加速させ、エンゲージメント強化に
採用活動に社員を巻き込むことによる効果はほかにもありました。社員一人一人が感じている会社の良さを、精いっぱい伝える機会が増えることで、会社の良いところに着目するようになりました。つまり、会社の良いところを言語化でき、さまざまな場面で話せるようになったのです。
また、自分たちは当たり前と思っていたことが、候補者との会話のなかで、「他社にはないインテリムらしさ」であることを知り、自社の良さに改めて気付かされることもありました。
このように採用活動に全社員が取り組むことによって、全員がインテリムの良さを見つけ、「インテリムに入社してよかった」という思いを候補者へ伝えることで、採用活動だけではなく、会社へのロイヤルティーや独自の風土を生み出すいい循環につながっています。

入社後もモチベーションを維持し続けるための「軸づくり」
採用を中心に話をしましたが、私は、「いい採用」とは、入社後に既にいる社員や会社に良い刺激を与えてくれることや、その人自身が活躍してくれていることができて初めていえることだと考えていますし、入社後の活躍こそ、会社の成長に貢献してくれます。さまざまな人から必要とされる、そして、成果に結びついているような、会社を成長させてくれる人材となることが重要だと考えています。
ただ、「いい採用」は必ずしもすぐに結果が出るとは限りません。だからこそ、今最大限できることとして、「いいスタートをきれる」環境を採用担当者として準備しています。
採用条件に納得感を与え、入社後のミスマッチをなくす
人それぞれ、給与条件や成長機会など転職先に求めるものは異なります。また、候補者が考える応募時の期待と採用条件が一致しないことも起こります。これらの差分に対し重要なことは、入社前にいかに「納得」できているかです。
内定通知の際は、採用面接における評価をフィードバックするとともに、今後、どのような役割をはたすことができれば昇給・昇格ができるのかといった「未来」も話すようにしています。入社時の給与が他社より低くても、インテリムに入社を決意した方が多数いるのは、納得のうえ、入社後の未来を描けているからだと思います。
入社後、立ち返れる場所「初心」をしっかり作る
それぞれ熱い思いをもって入社するわけですが、当然ながら仕事をしていくうえではつらいことも起きたり、思い通りにならないこともあると思います。
ただ、そのときに、「なぜインテリムに入社するのか」「インテリムに入社して何をするのか」を思い出すことができると、壁も乗り越えられるはずです。この「初心」があることが、モチベーションを維持することにおいて重要だと考えています。

今後、実現していきたいこと
私たちの会社で行っている事業は、医薬品開発の請負です。この事業において、会社が成長するためには、どれだけ高いモチベーションで現場社員が提案・活躍できるかが重要です。個人の能力や可能性・積極性を評価する職場環境をつくり、さらなる感動をお客様に提供していきたいと考えています。
また、採用は日々刻々と厳しくなっていると感じています。全社員が採用担当者になり、全員がインテリムの良さをさまざまな人に伝え、インテリムのファンにすることができるスキルや魅力を身につけてほしいと考えています。
さらに、私たちのビジョンは「アジアを代表するグローバル創薬開発パートナーになる」ことです。現在も少しずつですが、外国籍の社員を採用しています。将来的には、日本だけではなく、アジアで活躍できる人材をもっと増やしていく予定です。
採用活動は未来の会社をつくる活動であるとともに、今の会社をさらに元気にする活動でもあると思います。そのため、採用に対して真剣に向き合う社員を増やすことができればできるほど、会社は活気づくと思いますし、魅力が増すと思いますので、そういう世界をつくっていきたいと考えています。

なぜ、桃太郎はきびだんご1つでお供を増やせたのか?

人々が出会い、関わり合う社会のなかで「どのように仲間を集めるか」を、桃太郎が本資料で解説。
いつもと視点を変えて、昔話「桃太郎」から、採用力強化につながる「仲間集めの極意」を学んでみましょう。