【イベントレポート】積水ハウスに学ぶ 創意と挑戦のDNAを受け継ぐ人事改革

2022年9月29日、株式会社ビズリーチは「積水ハウスに学ぶ 創意と挑戦のDNAを受け継ぐ人事改革」と題したWebセミナーを開催しました。

積水ハウス株式会社執行役員人財開発部⻑の藤間美樹氏にご登壇いただき、人事制度改定の全貌と改革プロセスや、プロフェッショナル人財採用の強化と狙いなどについてお話しいただきました。モデレーターは、株式会社ビズリーチ代表取締役社長の酒井哲也が務めました。

藤間 美樹氏

登壇者プロフィール藤間 美樹氏

積水ハウス株式会社 執行役員 人財開発部長

1985年神戸大学卒業。同年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)に入社、営業、労働組合、人事、事業企画を経験。人事部では米国駐在を含め主に海外人事を担当。2005年にバイエルメディカルに人事総務部長として入社。2007年に武田薬品工業に入社し、本社部門の戦略的人事ビジネスパートナーをグローバルに統括するグローバルHRBPコーポレートヘッドなどを歴任。2018年7月に参天製薬に入社し執行役員人事本部長などを歴任。2020年12月に積水ハウスに入社し人事制度改革を推進、2022年2月より現職。M&Aは米国と欧州の海外案件を中心に10件以上経験し、米国駐在は3回、計6年となる。グローバル化の流れを日米欧の3大拠点で経験し、グローバルに通用する経営に資する戦略人事を探究。人と組織の活性化研究会「APO研」メンバー。
酒井 哲也氏

モデレータープロフィール酒井 哲也氏

株式会社ビズリーチ 代表取締役社長 ビズリーチ事業部 事業部長

2003年、慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社日本スポーツビジョンに入社。その後、株式会社リクルートキャリアで営業、事業開発を経て、中途採用領域の営業部門長などを務める。2015年11月、株式会社ビズリーチに入社し、ビズリーチ事業本部長、リクルーティングプラットフォーム統括本部長、取締役副社長などを歴任。2022年7月、現職に就任。

本日は積水ハウスの人事改革をテーマにさせていただいております。

人事が何か施策を実施するときは、ただ単に「人事がやりたいことをやる」のでは意味がないと思います。経営戦略と、人事・人財戦略との連動が必要であり、経営戦略を実践するために、人事制度改革を行うことが大切です。弊社では、「幸せ」と「キャリア自律」を軸に、今まで先人が築いてきた創意と挑戦のDNAを受け継ぎ改革を進めてきております。

まず、私の自己紹介をさせていただきます。私は、営業からキャリアを始め、その後に人事の仕事に就きました。人事の仕事では、以前からグローバルに関わる仕事を担当しており、海外と日本を比較しながら、どのような制度が日本に最適なのかということを日々考えてきました。

創業から積み上げてきた積水ハウスのコーポレートストーリー

2050年までに目指す姿として策定した積水ハウスのグローバルビジョンは、“「わが家」を世界一幸せな場所にする”です。

弊社は1960年に創立された会社です。その中で、30年を一区切りとして考え、それぞれを振り返ってきました。フェーズ1では「安心・安全」、フェーズ2が「快適性・環境配慮」というように積み上げてきた歴史があります。

そして、今後30年については、「健康・つながり・学び」、すなわち“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というテーマを掲げ、人生100年時代の幸せに向けて取り組んでいます。

イノベーションの視点ですと、フェーズ1は「住宅性能の向上」、フェーズ2は「先進的技術の開発」を追求し続けてきました。これからのフェーズ3では「高付加価値の提供」に取り組んでいきます。そして、イノベーションを実現していくために、人財の視点では「キャリア自律」が重要であると考えています。

グローバルビジョンを実現する人財戦略

弊社では、グローバルビジョン、“「わが家」を世界一幸せな場所にする”を実現するための取り組みとして、「従業員の幸せ」の追求を重視しています。それは、お客様・社会の幸せを実現するためには、まず従業員が幸せであることが大切だと考えているからです。まずは、積水ハウスを世界一幸せな会社にする」という想いで日々さまざまな施策に取り組んでいます。

世界一幸せな会社を支える人財戦略

「従業員の幸せ」については、これまでも「働き方改革」「ダイバーシティ&インクルージョン」という2本の柱がありました。そして新たな3本目の柱として、「自律的なキャリア形成のサポート」を加え、2021年から人事制度改革に取り組んでいます。3本の柱のいずれも、上司とメンバーの充実したコミュニケーションが非常に大事だと考えております。

多様なキャリアを実現する複線型キャリア制度

自律的なキャリア形成をサポートする人事制度改革の骨子

キャリアの方向性として、大きく2つに分けています。

マネジメントコース:役割等級制度スペシャリストコース:専門等級制度です。また、上記の資料の3つ目に「一般社員」と記載されていますが、従来の職能資格制度を意図的に残しております。

職能資格制度は、新しいことにチャレンジする、新しいキャリアの軸を探すという視点で見ると、「資格」が維持される点で有効であると考えました。総じて、キャリア自律を目指すために非常に効果的な制度と考えているので、継続しております。

ただ、職能資格制度の特徴が強い組織だと、年功序列的な制度が残ってしまうため、入社から最短8年で管理職になれる制度を用意しました。

複線型キャリア制度

また、複線型キャリア制度とは、管理職になる際に、スペシャリスト職とマネージャー職、どちらのキャリアを歩むのかを選べる制度です。ただ、一度選んだら選び直せないというわけではなく、キャリア目標が変わった際には、スペシャリスト職とマネージャー職間での変更も可能な制度になっています。

ジョブディスクリプション活用目的

弊社では、3つの活用目的を掲げ、ジョブディスクリプションを作成しています。

1つ目の目的は、役割・責任の明確化です。経営戦略や事業戦略を実行するうえで最適な組織をつくるためには、必要なポジションの役割・責任とポジションの要件を明確化することが欠かせません。

2つ目の目的は、任用(サクセッションプラン実効化)です。従業員の適材適所を実現するため、ポジション要件を満たし、役割・責任を担える人物を任用するプロセスを、ジョブディスクリプションによって効率化しています。

3つ目の目的は、キャリアマネジメントです。弊社のジョブディスクリプションには、人財要件も記載しています。「社内にはどのようなポジションがあるのか」「それぞれのポジションには何が求められるのか」といった部分を明確に示すことで、従業員が主体的にキャリア自律をマネジメントできます。

キャリア自律と従業員の幸せを実現するキャリア面談とは

キャリア自立と従業員の幸せ

次に、本日のメインとなる「キャリア自律と従業員の幸せとキャリア面談」についてお話しさせていただきます。

「キャリア自律」と「従業員の幸せ」をどう結びつけるかについては、いろいろと考えてきました。その中で、私が「これだ」と思ったのがジャック・ウェルチの自分の運命は自分でコントロールすべきだ。さもないと、誰かにコントロールされるという言葉です。この言葉を知ったとき、「キャリア自律」とは、まさにこのことだと思いました。

私の友人に、仕事では何をやってもうまくいかない、自信がない方がいました。その友人も、ジャック・ウェルチのこの言葉で目が覚めたそうです。

友人はこの言葉をきっかけに、素晴らしいキャリアを積み上げたのですが、あるセミナーに登壇した際に人生を振り返って話していたのは「自分で決めると自由になり、幸せになれる」という言葉でした。これがまさに、「キャリア自律」と「幸せ」を結ぶ言葉だと思います。

他にも「キャリア自律」と「従業員の幸せ」を結びつけるには、「成長」が必要です。「キャリア自律」とは、成し遂げたいキャリアの目標を掲げて、それに向かって頑張り、「成長した」「キャリアビジョンに近づいた」ということを実感し、幸せを感じることだと考えています

加えて、弊社では「キャリア自律」を支援することを目的として、キャリア面談を1on1形式で行っています

人は誰かに話すことで、思考の言語化ができると考え、通常の1on1と同様に、上司はメンバーの話を聞くことを大切にしております。上司にはメンバーからさまざまな話を聞いてもらい、「自ら行動すること、そしてその行動を振り返ること」を促すようにお願いしています。

キャリア面談を実行するにあたっては、マネージャー向けの研修に特に力を入れました。動画研修や50名程度のグループに分けた研修を約4,000名のマネージャーに実施しました。研修の冒頭挨拶では、マネージャーが実践しやすいよう、下記の4つの言葉だけは覚えてほしいと伝えています。

それは、明石家さんまさんがテレビ番組で司会をしているときによく言っている「どないしたん」「ほんで」「どういうこと」「どないすんの」という言葉です。「どないしたん」「ほんで」と言われると、相手は順を追って話し、説明します。内容が分かりにくくなったら「どういうこと」と聞くことで、相手は伝わっていないと感じ、言い方を変えます。「どないすんの」と言われると次のアクションを自ら考えます。大阪弁ではなくても、この4つの言葉を意識して使うことで、キャリア面談では「自発」と「内省」を促し、「キャリア自律」を支援できると考えています。

経営の想いと従業員の想いの重なりとは

私は企業において、経営・事業・従業員、それぞれが「世の中への貢献」という想いを持っていると考えます経営は理念であり、「何を持って世の中に貢献するか」。そして、事業は仕組みであり、「いかに世の中に貢献するか」が重視されます。そう考えると、従業員はキャリア自律により「どのような想いで世の中に貢献するか」を考えていくべきだと考えています。このようにして、経営・事業・従業員はつながっています。

経営・事業・従業員のつながり

また、図に示したように、「経営の想い」と「従業員の想い」の重なりが大きくなると「事業」も大きくなると思います。一方で、「従業員の想い」と「経営の想い」の重なりが小さいと、従業員のモチベーションは高くならず、熱意をもって、主体的にいきいきとした状態にはなりません。

そういった状態が続くと、従業員が「キャリア自律」をこの会社では実現できないと感じてしまい、転職を考えるようになるかもしれません。だからこそ、経営と従業員の想いの重なりをどのように大きくしていくかが大切です。

想いの重なりを大きくするには、従業員自らが発信していかなくてはいけないと考えています。上司と部下、あるいはメンバー同士で「こんなのはどうかな」「こういうふうにしたい」というコミュニケーションが大切で、キャリア面談のような場でも、メンバーが自由に発言でき、やりたいことを発信できる環境を整えることが重要です。すぐに結果には結びつかないかもしれませんが、日々続けていくことでだんだんと重なりが大きくなっていきます。経営と従業員、お互いの「世の中への貢献」という想いが重なり合うように協働しています。

また、積水ハウスでは「イノベーション&コミュニケーション」を重視していて、コミュニケーションを盛んにして、イノベーションを起こしていくことこそが、積水ハウスのDNAの一つと考えています。

従業員と会社は対等であり、従業員にはより積極的に「キャリア自律」をしてもらい、プロフェッショナルになってほしいと考えています。そして、従業員自らが「積水ハウスって素晴らしいな」「ここでなら成長できる」と思えるような環境にしていきたいと思っています。そのために、会社自身も「自律」していかなくてはいけないと考え、日夜頑張っております。

Q&Aセッション

セミナー終盤では視聴者からの質問に答えていただきました。

Q
「幸せ」の在り方も多様化しているように思います。「従業員」「お客様」「社会」の幸せをイコールにするために、工夫されていることはございますか。特に、企業活動の根本にある「理念」「ビジョン」の実行を、「従業員の幸せ」に繋げるような取り組みがあれば、教えてください。
A

グループで2万8,000人の従業員がおり、それぞれの想い・幸せのあり方で、それぞれが成し遂げたいことを持っています。それをお客様のために、社会のためにということは、極端な話2万8,000通りの「幸せ」があります。

各自が思い描く「幸せ」から新しいイノベーションが生まれるかもしれません。イコールというよりも、理念や戦略の理解、ベクトルを合わせるということに力を入れています。経営方針・戦略をちゃんと理解したうえでのそれぞれの想いや行動には、個性・多様性があってもよいのではないかと思っております。

Q
複線型キャリア制度や、キャリア自律支援面談などの他に、注力している人事制度改革の取り組みを教えてください。
A

セミナーで紹介した制度以外では、評価や報酬の面でも、新たな人事制度を採用しています。また、制度改革においては、「従業員の幸せ」と「キャリア自律」、この2つの軸に沿って改革を進めてきました。

Q
同じく人事の立場ですが、従業員の「キャリア自律」には、理想と現実のへだたりがまだまだ大きいと感じています。御社の規模で、「キャリア自律」が大事であることを従業員が理解するために、どのようなことを最も大事にされていますか。
A

「キャリア自律」は、このたびの人事制度改革から始めたのではなく、2003年からスタートしております。20年ほど続けていくなかで、「キャリア自律」という概念は、社内へ深く浸透しています。また、社長がいろいろなところで発信してくれており、社長のサポートも非常に心強いです。

ただ、「キャリア自律」はなかなか難しいことだと思っておりますので、上司側には「焦らなくてよい」と伝えています。「キャリア自律」とは、まさに「自律」です。「キャリアビジョンを作りなさい」と上司に言われて作っても意味なく、内的動機づけにつながる出来事があったときに、すぐに変わったりします。

「キャリア自律」を考えるうえで、私個人が感じているのは、「ポジションは分かりやすいけど、ポジションは寂しいものである」ということです。どういうことかというと、ポジションに就くことがキャリア目標になり、実際にそのポジションに就いた際に「何を成し遂げたいのかという想い」がないと寂しいなと思います。ポジションがキャリア目標になるのは、「成し遂げたいこと」を達成するためには「意思決定するポジションでないとだめだ」という場合だと思います。

Q
経営計画によって求められる役割や責任は変わってくると思いますが、ジョブディスクリプションはどのくらいの期間で見直していますか。
A

弊社では3年ごとに中期経営計画を策定しており、それに合わせてジョブディスクリプションも見直すようにしています。

Q
弊社でも複線型キャリアを設計していますが、これまでとは大きく異なる制度となるため、従業員が自ら設計することに難しさを感じています。運用に乗せるために管理職教育など、セットで実施された施策があれば教えてください。
A

まだ取り組みを始めたばかりなので、成功したかどうか判断するのはまだ早いかなと考えています。各職場や現場で求められていることが違うので、どのような資格、経験値が必要なのかなどは現場のマネージャーと議論し、時間をかけて考えています。

ただ大きな目安として、組織、会社、業界など、どの分野で一目置かれる存在なのかをある程度の幅を持たせながら組織で判断できる目安を作っております。弊社のスペシャリスト職コースでも、ジョブディスクリプションのように、「仕事に求められる難易度」「このような貢献ができる」などを文章化しています。

今回の人事制度改革のなかにも「組織風土」の観点があります。組織風土は従業員一人ひとりの行動が築き上げるものなので、積水ハウスの従業員に求められる人財像を示すため、新しく10項目の「能⼒・⾏動評定」というコンピテンシーを設けております。マネージャー職、スペシャリスト職、プレイヤー職(管理職になる前)のそれぞれに10項目を設けて、求められている能力・行動ができているかを評価しています。

Q
キャリア面談を実施するうえで、従業員が自身のキャリアについて懐疑的である、あるいは忙しくてキャリア面談の時間が確保できないといった難しさはありましたか。また、あった場合はどのように課題解決に取り組みましたか。
A

正直なところ、今はまだ課題解決に取り組んでいる最中です。やはり、新たな制度を浸透していくうえで課題は多くあります。その中で、まずはマネージャー層が自分のキャリアを考えられるよう、研修を丁寧に行うことに努めています。一方で、キャリア面談の成功事例も多く聞いています。

Q
マネージャー層へのキャリア面談の研修に力を入れているということですが、面談をうまく実践することが難しいマネージャーもいるのではないかと思います。彼らに対してどのようにフォローされていましたか。
A

1人で多くの部下を担当しているマネージャーですと、時間的な面で、どうしても一人ひとりのキャリア面談を丁寧に行うことが難しいという意見があります。このような場合は個別に話を聞き、一緒に対応策を考えています。具体的なアドバイスとしては、キャリア面談の内容自体はあまり進まなくても、従業員がまたキャリア面談を行ってもいいと思えるキャリア面談の「終わり方」をするよう話しています。

Q
今回セミナーでお話しいただいた藤間さん自身が考える人事の役割とは何でしょうか。
A

個人の意見としては、人事の一番の役割は「組織風土の醸成」だと考えます。“「わが家」を世界一幸せな場所にする”という積水ハウスのグローバルビジョンを実現するためには、まず従業員が幸せであることが大切です。したがって、キャリア自律支援のような人事制度を通じて、積水ハウスは世界一幸せな会社だと従業員が思えるような組織風土をつくりだすことが重要です。

最後に、視聴者の皆様へメッセージをいただきました。

藤間 美樹氏

「キャリア自律」ということは、本当に大切だと考えています。自身を振り返っても「何を目指して仕事をするのか」と悩んだことがあります。営業職だった際に、売り上げNo.1を自慢するような自分が悲しくなって、そこが転機でした。医薬の営業だったのですが、その後、「患者さんのために役に立っている」と感じたときから仕事が楽しくなりました。「キャリア自律」という言葉は難しいですけれど、「自分が役に立っているという充実感」が私としての「キャリア自律」でした。「キャリア自律」という言葉を皆さんそれぞれが腑に落ちるような言葉で目指していただければと思います。

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著者プロフィールBizReach withHR編集部

先進企業の人事担当者へのインタビューや登壇イベントなどを中心に執筆。企業成長に役立つ「先進企業の人事・採用関連の事例」や、 事業を加速させる「採用などの現場ですぐに活用できる具体策」など、価値ある多様なコンテンツをお届けしていきます。