人材を企業成長の源泉とする アクセンチュアの採用戦略

【イベントレポート】人材を企業成長の源泉とする アクセンチュアの採用戦略

2022年5月26日、株式会社ビズリーチは「人材を企業成長の源泉とする アクセンチュアの採用戦略」と題したWebセミナーを開催しました。 アクセンチュア株式会社 人事本部リクルーティング統括アソシエイト・ディレクターの佐野修平様にご登壇いただき、採用活動の取り組み事例についてお話しいただきました。モデレーターは、株式会社ビズリーチの銭谷信が務めました。

佐野修平氏

登壇者プロフィール佐野修平氏

アクセンチュア株式会社
人事本部リクルーティング統括アソシエイト・ディレクター

大学卒業後、就職情報会社にて、大手企業顧客担当の営業部門責任者、新規事業の責任者を歴任。その後4大会計事務所系コンサルティングファームにて、新卒・中途採用および人事全体のオペレーション統括を経て、2018年10月にアクセンチュア株式会社に入社。現在は同社日本法人の採用部門の責任者として採用業務全般を統括。
銭谷信氏

モデレータープロフィール銭谷信氏

株式会社ビズリーチ
ビズリーチ事業部 ビジネスマーケティング部部長

ソフトバンクBB株式会社(現:ソフトバンク株式会社)入社後、代理店営業として、大手通信商社から独立系企業まで多岐にわたる企業を担当。セールス系ベンチャー企業を経て、2018年、株式会社ビズリーチに入社。
ビズリーチ事業部のヘッドハンター向けのコンサルティング部門のビジネス開発を経験した後、2019年、ビジネスマーケティング部へ異動。2020年より部長を務める。

アクセンチュアのパーパス

本日お話しするアクセンチュアの採用戦略とは、採用強化とともに社員のエンゲージメントを高める動きを両立することだととらえています。その具体的な取り組みをご紹介する前に、アクセンチュアのパーパスについてお話しします。

アクセンチュアは、「テクノロジーと人間の創意工夫で、まだ見ぬ未来を実現する」をパーパスに掲げ、5つのサービス別の専門組織と、業界別の専門組織が最適なチームを形成し、お客様のビジネス変革を支援しています。

  • Strategy & Consulting:経営戦略の立案や変革の実行を支援。
  • Song:クリエイティブやテクノロジーでお客様の成長を支援。
  • Technology:新たなITを駆使し改革を支援。
  • Operation:ヒトとデジタルの力で自動化・高度化して価値を生むオペレーションサービス。
  • Industry X:研究開発や製造などモノづくりのデジタル変革を支援。

上記の計5つのサービス別の専門組織から構成されています。

アクセンチュアの信念

アクセンチュアの信念をいくつかご紹介します。

  • グローバル共通で持つコアバリュー
  • インクルージョン&ダイバーシティ推進を掲げる平等の文化
  • お客様の経営課題に全方位で取り組む360°バリュー
  • 脱炭素社会の実現から途上国支援まで見据えた地域社会への貢献

また、アクセンチュアの特徴的なカルチャーに、Think straight, talk straight.(とことん考え抜き、ストレートに伝える)というオープンさがあります。

グローバル共通で、立場に関わらず自分の考えを率直に発信することが歓迎されています。

採用におけるチャレンジ

アクセンチュアは日本に約18,000人を擁する組織です。

国内での事業の急速な拡大に伴い、2015年以降は急速に社員数が増加。積極的な採用と働き方改革(社員のエンゲージメントを高める施策)を両輪で進めてきました。

アクセンチュアの働き方改革「Project PRIDE」

アクセンチュアでは、2015年より独自の働き方改革「Project PRIDE」の活動をスタートさせました。

これは、アクセンチュアで働くすべての人々が、プロフェッショナルとしてのあり方に、自信と誇りを持てる未来を創造する全社員イノベーション活動を指します。

プロジェクトを始めたタイミングで3つの課題を設定し、それらに向き合う活動を続けています。

「Project PRIDE」 3つの課題

  • リクルーティングチャレンジ=急成長のスピードに合わせて優秀な人材を獲得、維持しつづけていく
  • ダイバーシティチャレンジ=性別や国籍だけでなく、さらにはバックグラウンドや考え方、ライフステージの多様性を受け入れ、さまざまな人材が継続して活躍できる環境づくりを進める
  • ワークスタイルチャレンジ=生産性の向上を可能にする新たな働き方を追求していく

これらを実現させたProject PRIDEの理想的な形が、ビジネスマナー、コアバリュー、ワークスタイルをベースに、自信と誇りがある組織です。

多様な強みを持った人材が、アクセンチュアに在籍しプロフェッショナルとして活躍できることに自信と誇りを持てる状態を目指していきたいと考えています。

採用活動における課題

アクセンチュアの採用活動における現在の主な課題として、以下の3つが挙げられます。

  • 多様な採用の推進
  • 採用ボリュームの拡大
  • マーケットに向けた発信

ビジネス領域の拡大により、多様なバックグラウンド、スキルを持った人材の大規模な採用を続けていく必要があります。変化の激しいマーケットにおいては、タイムリーな情報発信を続け、未来の候補者とのコミュニケーション接点も求められると考え、さまざまな施策に取り組んでいます。

採用活動の取り組み事例

では、3つの採用課題に対して、どのような取り組みを進めているのかをお話ししたいと思います。

多様な採用の促進や採用ボリュームの拡大に関してはAIやロボティクスなどにより、かかる時間を短縮し、その分をダイレクトリクルーティングの活動強化にあてています。個人の専門性に応じて、より良質な採用選考のプロセスを提供するために、すぐに応募を考えている方から、将来の転職先として情報収集したい方まで状況に応じた対応を進めています。

マーケットに向けた発信においては、弊社のマーケティングコミュニケーション本部に採用を目的とした専任のマーケティングチームを置き、人事本部の採用チームと連携して、一貫性のある情報発信の活動ができています。

※画像内「ダイレクリク」=「ダイレクトリクルーティング」

取り組み事例(1)採用組織の体制

採用組織体制においては、人事本部の採用チーム、オフショアチーム、マーケティングの三位一体の体制を作っています。

  • リクルーティング=採用活動の全体マネジメント
  • オフショア=スカウトやレポートなどのオペレーション業務
  • 採用マーケティング=採用認知獲得や理解促進コンテンツの制作・分析

と各領域で専門性を高めながら、採用部門が軸となり連携を図り、採用競争力の維持・向上につなげています。

取り組み事例(2)ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングにパワーを集中させ、多様な経験や専門性、キャリア観に応じた、個々の転職活動をサポートしています。採用部門外の社員からの紹介も増えており、採用担当と連携したフォローも行っています。

具体的には、候補者と人事が直接コミュケーションを取り、「タレントプールプラットフォーム」にご登録いただいたのち、応募時期になった段階で選考管理システムに入ります。このプラットフォームがあることで、潜在的な候補者とも関係を構築でき、中長期の未来の候補者として接点を作ることができます。

応募段階では専門性を細かく確認させてもらいます。事業拡大に伴い職種が多岐にわたるため、志向や将来のキャリア実現に合わせた部署・職種を提案できます。個人の専門性に応じた適切な提案をするのも採用担当の役割です。

選考期間中のサポートや、入社を意識するなかで出てくる質問・相談にも一貫して対応し、候補者と直接接点をとることを大事にしています。

取り組み事例(3)採用マーケティング

候補者のペルソナに応じた施策を展開しています。

テレビCMや交通広告、SNSでは転職者インタビューなども発信するほか、自社メディアではCM制作も内製で行っています。アクセンチュアでは多くのクリエイティブ企業に仲間として入ってもらっており、高いデザイン性を駆使して自社コンテンツを作れるのも私たちの強みだと考えています。

Q&A

セミナー後半には、視聴者からの質問に答えていただきました。

Q
他社でも同様の取り組みをしていますが、アクセンチュア様がここまで進化できた秘訣は何がありますか。
A

活動量という観点では、業界内でも目立っていると思います。採用活動を実現できている要因は3つあります。

1つ目は、ビジネスモデルの影響です。採用成功そのものが事業成功に直結するビジネスモデルなので、採用活動に投資する、という会社の強い意志があります。

2つ目は、チャレンジを重ねてきたことです。今は1,000名以上の採用が実現できていますが、投資回収できない失敗も多く積み重ねてきました。毎年、反省点や改善点、良かった施策を振り返り、チャレンジを継続してきたことが大きいです。小さな改善を積み重ねアクションを続けてきた背景には、現状を疑いチャレンジすることに重きを置いたカルチャーが浸透していることが挙げられます。

3つ目は、採用チーム・オフショア・マーケティングの役割分担をしっかりしていることです。国外にも日本の採用を担当するチームがいて、中国・大連も多くの採用に貢献しています。各セクションの役割を明確に分けて特化しているのも強みの一つだと考えています。

Q
2011年から2020年の間に、社員数が3倍に増えています。急拡大に伴い組織風土が希薄化していく課題があると思いますが、アクセンチュアでカルチャーが崩れずにここまでこられたのはなぜですか。
A

何十年も運用され、時代が変わっても継続していく「コアバリュー」があり、一方で、変化をいとわずチャレンジするという、2つのカルチャーがあるからではないでしょうか。絶対に変わらないものとどんどん変わっていくもの、この両方が明確に社員に伝わっているからではないかと考えています。

Q
今後アクセンチュアのリクルーティングとして取り組みたいことはありますか。
A

候補者との接点をより一層作っていきたいです。そのためには、人がかかわるところ、かかわらないところを明確にして、AIで置き換えられる部分に関しては積極的に取り組んでいきたいと思っております。そこでできた時間やリソースをダイレクトリクルーティングに向けていきたいと思います。

また、ダイレクトリクルーティングの延長として、1~3年後に転職するかもしれない方とのコミュニケーションも続けていきたいです。現在、新卒採用ではいかに就職活動年次の前の学生と接点を持つかに取り組んでおり、中途採用では中長期的に候補者になりうる方をデータベース「タレントプールプラットフォーム」にご登録いただく施策をとっています。 今は、膨大な数の面接日程調整に多くの時間がかかっているので、これらを自動化して時間を捻出し、ダイレクトリクルーティングでアクセンチュアの魅力を伝える接点強化、イベント企画などに投資していきたいです。

Q
潜在的な候補者との関係構築のために、具体的にどのような取り組みをされていますか。タレントプールなどの活用についても教えてください。
A

選考に参加された方でご本人の承諾を得た方には、タレントプールプラットフォームに登録いただいております。一定期間を経たのち、候補者に対して、個別に「最近の状況」のヒアリングすることもあります。

新規ポジションオープンのタイミングでご案内、属性との親和性を考慮しての勉強会やイベント、ビジネス情報の発信も定期的に行っています。

Q
アクセンチュアにどんなことを期待され入社される方が多いですか。近年それらはどのように変化していると感じていますか。
A

高い専門性や報酬面に魅力を感じる方もいると思いますが、フラットな社風に共感して入社される方が多いですね。

私が入社した2018年以降は、女性の応募が増加傾向です。将来は従業員構成が男女半々になる組織を目指しています。子育てをしながらプロフェッショナルとしてのキャリアを積む社員の積極的支援も行っており、採用マーケティングの効果もあり、多様なバックグラウンドを持つ候補者の応募につながっているのだと思います。

Q
大規模な採用を実施していくうえで、オンボーディングについてもきめ細やかな対応が必要になると思いますが、採用タイミングから入社後を見据えたコミュニケーションの工夫はありますか。
A

入社までの内定段階ということでしたら、入社後の評価制度・研修制度について改めて話をする場を設けたり、入社予定部署のメンバーと話をする機会を設けたりしています。

リモートワークが広がる今、入社初日のオリエンテーションもその後の業務もリモート対応というケースは少なくありません。対面で話をする機会のないまま仕事をすることになるので、社内の話を入社前からしていくのはより重要だと思っています。

Q
リモートワークでのオンボーディングで工夫されていることはありますか。
A

どの企業も抱える悩ましい問題だと思います。アクセンチュアでもこの2年強、小さな取り組みをさまざま行ってきました。

例えば、採用チーム独自の取り組みでいうと、目的のある会議のほかに、ちょっとした質問や相談をする機会を作るべく、入社後半年は先輩(バディ)をアサインして、コミュニケーションを取るようにしています。

プロジェクトによっては完全リモートワークのところもあるので、部門単位で「定期的にこのタイミングで集まろう」「情報のアップデートのために集まろう」と対面でのコミュニケーションの場を作ることもあり、ハイブリッドな取り組みを各部門で試行錯誤しながら進めています。

Q
採用チームの体制について教えてください。
A

中途採用では、事業部門ごとに小さな採用チームがあり、そこで部門の採用施策を検討します。アクセンチュア全体の横断的な指針は人事本部でセットしながら、個別事業に合わせた施策とのバランスを取っていきます。

部門の採用リーダーは、担当事業の採用成功を実現するのはもちろん、日本地域全体の採用成功にも責任を負います。全社横断の施策とうまく連携できるよう、採用リーダーの階層に応じて、全社横断の業務への責務もゆだねています。

Q
今回お話しいただいた内容は、グローバルと一貫したものですか。
A

グローバルの共通施策とローカル施策が混ざっています。

候補者管理の仕組みやタレントプールプラットフォームはグローバル共通のものを活用することもあります。ただ、日本の市場の独自性を考え、「こう管理したほうがいいのでは」という点があれば、他のツールを合わせて使うこともあります。

Q
グローバルとの連携をどう進めているのか教えてください。
A

グローバルとは先進事例の情報交換をしています。積極的な広報活動やダイレクトリクルーティングはグローバルの方針です。

社員一人一人が情報発信をしていくべきだという考えに基づき、情報発信するメンバーが多く、広報力の強化につながっています。

Q
採用について、現場の関係者との協業をどのようにしていますか。
A

事業部側との関係の良さは、アクセンチュアの採用の特徴の一つかなと思っています。

現場が「協力的」であることは前提で、現状は「非常に積極的」です。現場にも採用ノウハウが蓄積されており、よりよい採用のためにどうすればいいのか、人事と現場がパートナーとして一緒に考えています。

人がいることが事業成長のすべてなので、人材採用・育成・能力開発にはものすごく意識が高い。それがアクセンチュアという会社なのだと思っています。

最後に、視聴者の皆様へメッセージをいただきました。

佐野修平氏 アクセンチュア株式会社 人事本部リクルーティング統括アソシエイト・ディレクター
佐野修平氏

「本日は貴重な機会をありがとうございました。皆様からたくさんの質問をいただけたことがとても新鮮で、『まだまだできていないな』『もっとこんな取り組みができるのではないか』という部分を再認識しました。改めて、明日からも頑張ろうと思いますので、ともにいろいろなチャレンジをしていきましょう」